AIでコンサル業界の仕事が終了?リストラ?将来なくなる職業リストに高収入職の終わりが近い理由

AIでコンサルの仕事が終了?リストラ?将来なくなる職業リストに現実味・高収入職の終わりが近い理由

第1章:AIはコンサル業務にどこまで浸透しているか

  • コンサルタントの基本業務とは
  • AIによる代替の現状
  • AIの特徴(精度・速度・論理性)と人間の役割の違い
  • 各業務への影響の見通し

第2章:情報収集業務(リサーチ)の現在と未来

  • 業界調査・競合分析のAI代替状況
  • 検索・分類・要約能力の進化
  • 営業職への影響:提案精度とスピードが激変
  • IT系技術職への関与:データ構造とクローラー設計

第3章:競合分析とポジショニング支援

  • 定量・定性データの統合解析
  • AIによるSWOTや3C分析の自動化
  • 事務職への影響:データ整理業務の消滅と再構築

第4章:提案書・企画書作成業務の自動化

  • スライド骨子の生成
  • 差別化要素の抽出と文体調整
  • 開発職への影響:テンプレート開発の需要増加

第5章:ロジックチェックと構成支援

  • 前提検証・飛躍指摘・構造整理の自動化
  • 「社長に通る」文体とは何か
  • 営業職への影響:説得力の定量化とナラティブ戦略

第6章:現場ヒアリングと議事録自動化

  • 音声処理・話者識別の進化
  • 文脈付き議事録と課題抽出の自動化
  • 事務職への影響:録音と文字起こしの再定義
  • 人事職への影響:面接評価や会話解析への波及

第7章:インタビュー設計と仮説マトリクス構築

  • 問題構造の可視化と類型分類
  • 次回質問表の自動作成
  • 開発職への影響:ヒアリング支援ツールの需要と活躍

第8章:分析業務(財務・顧客・市場)のAI進化

  • PL/BS/CFモデル構築の自動化
  • セグメント分類・KPI設計の支援
  • IT系技術職への影響:データ前処理・API連携開発の主役化

第9章:戦略立案支援(仮説生成・選択肢評価)

  • AIによるフレームワーク活用
  • 実現性スコアと費用対効果評価
  • コンサル営業職への影響:提案の高速化と深度強化

第10章:KPI設計・実行モデルの自動化

  • 戦略→KPI→業務設計の自動マッピング
  • 組織文化への適応プロンプト
  • 人事職への影響:評価制度・運用設計の再定義

第11章:プロンプト設計の重要性と専門性

  • なぜ「いいプロンプト」がすべてを決めるのか
  • プロンプト職の誕生とキャリア構造の変化
  • 開発・IT職への影響:プロンプト支援AIの設計と保守

第12章:残る「人間の役割」とAIの共存戦略

  • 感情、政治、関係調整という最後の2割
  • 「人間性」が必要なコンサル領域とは
  • 営業職・人事職に残る「共感力」職能
  • コンサル業界の未来像:AI活用型企業の組織図と構造

第1章:AIはコンサル業務にどこまで浸透しているか

コンサルタントの仕事とは何か

戦略コンサルタントは、企業や組織が抱える経営課題を発見し、その解決策を提案し、実行支援までを行う専門職です。仕事内容は多岐にわたり、大まかに以下のような工程に分かれます:

● 現状分析(定量・定性調査、ヒアリング、文献調査)

● 課題抽出と仮説構築

● 解決案の設計と戦略オプションの提示

● 提案書・報告資料の作成

● クライアントとの対話・調整・実行支援

これらを支える日々のタスクには、リサーチ、表作成、資料ドラフト、議事録、戦略構造の整理など、「思考の土台」となる反復作業が多く含まれています。この「反復かつ論理型の業務」こそが、AIにとって最も得意とする領域です。

AIが得意とする分野は「速く・正確・構造的」

AIはルールに基づいた処理と、大量の情報を高速で処理する能力に長けています。特に以下の特性は、戦略コンサルの多くの工程と合致しています:

● 調査と整理:情報の網羅的検索と要約が数分で完了

● 論理構造の生成:思考フレームに即した分解と構成が自動化可能

● 定量計算:財務計算や比較分析は完全に自動化

● 文書化:レポート・プレゼン資料のドラフト作成まで可能

つまり、頭脳労働のうち「形式知で説明可能な作業」は、プロンプト設計次第でAIがすべて肩代わりできるフェーズに入っています。

人間に残される役割は「文脈・関係性・共感」

一方で、AIが不得意とするのは「人間関係の調整」や「感情を含む非言語的判断」です。たとえば以下のような領域は、今後も人間に残り続けると考えられます:

● 社長や取締役との感情を含む対話

● 社内政治の流れを踏まえた配慮

● 現場感・肌感覚に基づく判断

● クライアントとの信頼関係構築

これらは、表面的な言語ではなく「空気」や「文脈」によって成り立つ要素が多いため、AIには把握が難しい領域です。また、相手の感情や抵抗感を読みながら落としどころを探るといった「折衝力」も、依然として人間に優位があります。

コンサル業務のAIによる代替状況:全体図

以下は、コンサル業務の代表的な業務群をAI代替可能性で分類したものです。

業務領域 現在のAI対応度 将来的なAI代替度 完全代替されるか
リサーチ(業界・競合) 極めて高 ほぼ完全
財務モデリング 極めて高 完全
提案書・資料ドラフト 70~80%
ロジックチェック 80~90%
インタビュー設計 70%前後
戦略立案 低~中 中~高 最大60%前後
経営層との調整・対話 難しい
政治的調整・信頼形成 極めて低 極めて低 不可

このように、業務全体の6~8割はAIによって効率化・自動化される可能性が高いとされており、「完全代替」というよりも「共同作業の最適化」がコンサル業界の未来像となります。

AIと人間の役割分担による新しい働き方

AIの導入によって、戦略コンサルタントの仕事は「作業」から「判断」へと重心が移っていきます。かつては、提案書一枚に至るまで何十時間も要していた「下調べと構成作り」が、今ではAIにより数時間で素案化可能です。つまり、時間を「対人調整・意思決定・洞察」に振り分けることが可能となります。

AIに任せる領域:

● 検索・整理・構造化・下書き

人間が担う領域:

● 解釈・修正・共感・伝達

このバランスを踏まえて、AI時代のコンサルタントは「伝える力」「読む力」「決める力」が重要となります。

今後の職種別影響(第1章時点)

本章の総論に基づき、テーマに関わる各職種の影響概要を簡単に記載します。詳細は各章で展開いたします。

● 営業職:提案の裏付け資料やシミュレーションがAIで即座に出力可能になるため、「対話力」「共感力」の重要性が増す

● 開発職:社内ツールとしてのAI導入が加速し、プロンプト支援やテンプレート生成に関わる実装力が評価される

● IT技術職:データ処理・音声認識・自然言語解析などの技術分野が業務の基盤になるため、専門性の高いスキル需要は拡大

● 事務職:定型文書の整形・議事録作成・スケジュール管理などが自動化されるため、AIツールのオペレーター化が進行

● 人事職:スキル評価や適性判断にAIを導入する流れが進む一方、「感情や相性を見る力」が重要な差別化要素になる


第2章:情報収集業務(リサーチ)の現在と未来

コンサルの根幹「情報収集」はAIが最も得意とする分野

戦略コンサルティングの中核業務のひとつが「リサーチ」です。市場環境、競合状況、顧客動向、技術トレンド、法規制など、あらゆるファクト(事実)を整理・把握しなければ、課題設定も仮説構築も成立しません。リサーチとは、「情報を集める」だけでなく、「必要な情報だけを整理する」知的作業でもあります。

この領域は、AIの最も得意とする土壌です。なぜなら、検索、要約、分類、比較、傾向分析といった作業は、機械にとって極めてルールベースであり、反復処理も正確だからです。

業界調査:AIが人間の1/100の時間でこなす

現在の状況

AIは既に、業界レポートや統計データ、ニュース、研究論文、SNSトレンドなどをクロール・収集し、要点だけを抽出する能力を持っています。以下のような作業が可能です:

● 「建設業界の2024年トレンドを教えて」と指示すれば、国土交通省の発表、主要ゼネコンのIR情報、建設DXに関する研究論文の要点を自動で統合

● 「●●業界の市場規模と年平均成長率、直近5年の動向をグラフで」と指示すれば、経産省や日経産業新聞、Statistaなどの公開データを自動参照し、整形された資料を出力

人間が1日かけて集める一次情報も、AIなら数分で抽出・整形可能です。

今後の進化

今後は、検索の精度と文脈理解がさらに進み、以下のようなプロンプトも通用するようになります:

● 「●●業界における今後有望な3社、それぞれの強み・リスク・最近の技術動向もセットで出して」

このプロンプトに対して、AIは次のような出力が可能になります:

● 各社の売上推移・利益率

● 技術開発の方向性と特許動向

● 経営者の発言傾向やビジョン

● SNSでの評判とユーザー層の感情傾向

これは単なる「情報収集」ではなく、「分析+編集+可視化」まで一括処理する高度な知的生産です。

競合分析:数値比較から“温度感”の把握へ

現在の状況

現時点でも、AIは以下のような競合分析を行えます:

● 指定された競合企業の売上・利益・市場シェアなどを表形式で出力

● SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)のフレームに即して自動分類

● 競合ポジショニングマップの自動描画

これらは、定量情報を基にした構造化作業です。ExcelやPowerPoint連携の拡張機能を用いることで、ほぼノンコーディングで実現可能です。

今後の進化

定量に加えて、定性情報(SNS、口コミ、IR資料のトーン、報道傾向)を重ねることができるようになり、次のような分析も実現します:

● 「競合A社はなぜ若者に人気があるのか、その理由を分析せよ」

● 「競合B社は財務は堅調だが、SNSで批判されている理由は?」

AIは膨大な文章データを読み込み、トピックの出現頻度や、ポジネガ分類、言葉の強度を数値化して可視化できます。これにより「市場での評価の温度感」も把握可能になります。

営業職への影響:提案の“裏付け”が瞬時に

このようなAIによるリサーチの高度化は、営業職における「事前準備」を根本から変えます。

従来、法人営業では以下のような作業が必要でした:

● クライアントの企業概要・業績推移の下調べ

● 競合製品・サービスとの違いの把握

● 提案背景となる業界動向の収集

これらは、通常数時間かけて人手で集めていた情報ですが、AIを活用すれば次のように短縮されます:

● 営業先の企業名+目的を入力すれば、「何を、どのように提案すべきか」を自動構築

● 提案先の過去の案件、似た業界の成功事例、競合の動きなどをふまえた差別化提案が、数分で出力可能

これにより、営業職に求められる能力は「情報を集める力」から「情報を伝える力(共感力・質問力)」へとシフトします。特に、ヒアリング力や本音を引き出す力が、AIと営業の明確な境界線になります。

IT系技術職への影響:情報構造と自動収集技術の開発主役に

AIがリサーチを担うには、膨大な情報源への接続と、適切な構造化が欠かせません。つまり、IT技術職の役割は「AIが活躍できる舞台設計」に移行します。

● ウェブクローリングやAPI連携を自動化する仕組みの構築

● テキスト分類・トピックモデリング・要約モデルの改善

● 検索クエリ(プロンプト)に応じて適切な情報源へ接続する設計

これにより、IT技術職は「ツールの保守担当」から「戦略的情報基盤の構築者」へと格上げされることになります。特に、企業内データとオープンデータの統合基盤設計を担える人材は、コンサル業界で極めて高く評価されていくと予測されます。

リサーチ業務の未来:完全自動化と人間の“疑問力”

情報収集業務は、将来的には次のステージに入ります:

● 情報の選別だけでなく、「問いの再設計」までAIが補助

● 矛盾や空白を自動で発見し、「どの情報が足りないか」を提起

● 人間が考えるべき「未知の問い」を逆に提示してくるAIの登場

そのとき、人間に残るのは「疑問を持つ力」「問いの意図を読み解く力」「不安を言語化する力」です。つまり、AIがどれだけ進化しても、「問いを投げるのは人間」「答えるのはAI」という構造は残る可能性が高いです。


第3章:競合分析とポジショニング支援

コンサル業務における競合分析とは何か

競合分析は、戦略立案の出発点の一つです。クライアント企業の立ち位置を理解し、他社と比較してどこに優位性・弱点があるかを明確にすることで、「どう動くべきか」の道筋が見えてきます。具体的には、以下の要素を網羅する必要があります:

● 対象企業の財務情報(売上・利益・投資など)

● 主力商品・サービスの特徴と評価

● 顧客層や販売チャネルの違い

● 直近の施策(M&A、価格改定、新技術導入など)

● 世間での評判・SNSでの言及・IRメッセージ

これらを単に並べるだけでは意味がなく、「全体を構造的に整理し、比較・評価する」作業が求められます。従来この部分は、膨大なExcel資料と手動の要約作業に依存していました。

AIの導入により、この「情報の構造化と整理」は自動化の段階に入っています。


現在のAIができること:定量情報の比較と構造整理

AIはすでに、以下のような競合分析作業を自動で処理できます:

● 決算データの読み取りとグラフ化

● 売上構成比や営業利益率などのKPI比較

● SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)の機械的分類

● ポジショニングマップ(価格×品質などの2軸分析)の自動作成

たとえば、「国内旅行業界の上位5社の収益構造を比較して」と指示すれば、各社のIR資料や公開財務データをクロールし、以下のような出力が可能です:

企業名 売上高 営業利益率 主力事業 特徴・強み
A社 3000億 5.2% 国内パッケージツアー 地方発着の路線網強み
B社 2000億 6.8% 個人向けネット予約 デジタルUI・UXが優秀

これらの作業は、通常であればアナリストが数日かけて行う内容ですが、AIは数分で処理できます。


今後のAIができるようになること:定性情報と“空気感”の解析

将来的には、AIは定量情報だけでなく、次のような「定性・感覚的要素」まで把握できるようになります:

● SNS上でのユーザーの声(ポジティブ・ネガティブの分類と原因分析)

● メディア報道や社長インタビューに見られる企業の思想や方針

● 採用ページ・社員のSNSから読み取れる社風・組織文化

● プロモーション動画・広告文言から抽出される“印象”

これにより、以下のような高度なプロンプトも可能となります:

● 「競合B社が若年層に支持される理由を、広告・SNS・IRから分析せよ」

● 「競合C社はなぜ高価格帯に強いのか。組織文化も含めて言語化して」

このように、定量と定性の両輪での分析が可能になることで、AIは単なる「表の比較」から、「戦略的立ち位置の把握」へと役割を拡大していきます。


AIによる競合分析の一例(今後の出力イメージ)

プロンプト例:

「国内食品メーカーA・B・C社の競合比較をして。財務・商品展開・最近のM&A・社長の発言・SNSの評判を含めて」

出力イメージ(AIによる構造化)

  1. 【企業A】
    – 売上:5000億円、営業利益率:4.8%
    – 主力商品:加工食品(冷凍食品・レトルト)
    – M&A:中小冷凍食品企業を2024年に買収
    – 社長コメント:「家庭内需要の安定供給を軸にする」
    – SNS評判:価格に対する満足度高、若年層の支持はやや弱い
  2. 【企業B】
    – 売上:4300億円、営業利益率:6.3%
    – 主力商品:スナック菓子・健康食品
    – M&A:D2Cブランドを買収しEC強化中
    – 社長コメント:「健康・オンライン直販の2軸戦略」
    – SNS評判:X(旧Twitter)での好意的レビュー多数、特に30代女性層に人気
  3. 【企業C】
    – 売上:6000億円、営業利益率:3.9%
    – 主力商品:調味料・発酵食品
    – M&A:海外発酵食品ブランドを買収し欧州展開
    – 社長コメント:「食文化の輸出が使命」
    – SNS評判:海外展開を称賛するコメントが多く、企業イメージは知的・伝統的

このような比較結果が瞬時に手に入れば、戦略会議の出発点は劇的に加速します。


事務職への影響:資料づくりと整理業務の激変

競合分析に関して、従来の事務職(アシスタント職)が担っていた業務には、以下のようなものがあります:

● 競合のIR資料や決算情報の収集

● PowerPointやExcelでの比較表作成

● 過去の競合分析資料の整備と再利用

これらの作業は、ほぼAIで自動化されつつあり、以下のような転換が求められます:

● 情報の出力を確認し、誤認識や抜けを発見できる「読む力」

● AIが生成した分析資料の構成・トーン・表現を整える「整形力」

● プロンプトテンプレートの作成・更新を担当する「設計力」

つまり、単なる「作業の担当者」ではなく、「AIを活かす設計者・検品者」としての役割が期待される時代です。


人間に残される役割:「意味づけ」と「仮説づけ」

AIは「事実の収集と構造化」は得意でも、それが「どういう意味を持つか」を解釈する能力は限定的です。たとえば:

● 「競合A社のSNS支持が増加している」→なぜ?それは脅威なのか?

● 「競合B社が利益率を伸ばしている」→今後も続くか?何を示唆するか?

このような「文脈に沿った読み取り」「仮説づけ」「戦略上の含意の抽出」は、依然として人間の領域です。AIが生成した構造的事実に対して、「だから何なのか?」を言語化できる力が、今後のコンサルタントに求められます。


第4章:提案書・企画書作成業務の自動化

コンサルの「価値の見える化」としての資料作成

コンサルティングの現場において、「最も目に見える成果」と言えば、やはり提案書や企画書です。クライアントへの納品物は、PowerPointなどのスライド形式で作成されることが多く、戦略構造・分析結果・施策案が視覚的に整理されて示されます。

この「資料作成業務」は、かつてコンサルタントの労働時間の3〜4割を占めていたとも言われており、非常に負荷の高い作業でした。しかし、AIの進化によって、この領域も急速に自動化されています。


現在のAIができること:スライド骨子の構築と文面作成

AIは、以下のような条件設定によって、提案書の「素案」を自動的に構築できます:

● テーマ例:「物流DXの導入により業務効率化を図る提案」

● 指定条件:「クライアントは中堅メーカー、現場は保守的、投資対効果を強調」

● 出力内容:
– 全体構成(課題 → 解決策 → 投資効果)
– 各ページのスライドタイトル案
– チャートの種類と中身の説明
– ナレーション想定の補足文

このように、AIは単に「文章を書く」だけではなく、「構成・ロジック・図解方針」までを整えた上で、数分で文書草案を提示します。

さらに、特定のトーン・業界背景・過去資料などを参照すれば、文体や図表の表現までクライアントに合った形に自動調整可能です。


今後できるようになること:過去の知見・差別化・トーンまで踏まえた完成資料生成

近い将来、以下のような高度な資料作成がAIで可能になります:

● 「競合A社との差別化ポイントを明示し、社長の好むプレゼン構成で出力せよ」

● 「過去に同じような提案をした業界の資料を参照しつつ、新しい市場動向を反映した構成にして」

この指示に対して、AIは以下のような出力を行います:

● スライド構成全体(表紙→導入→課題→仮説→対策→定量効果→まとめ)

● 各ページのタイトルと図表の指示(例:「費用対効果:縦棒グラフで3案比較」)

● 競合との差別化項目を強調するレイアウト指示

● 提案対象者の属性に合った文体(役員向けは論理重視、現場向けはビジュアル重視など)

これにより、資料作成における「作業負担」そのものが激減し、人間は「チェック・調整・表現の微修正」に専念することになります。


資料作成のプロセスにおけるAIの導入イメージ

  1. プロンプト入力
    「食品業界向けに物流自動化を提案したい。現状の課題、ソリューション、導入効果を3パターンで提示し、ROIに焦点を当てた構成で」
  2. AI出力:構成案
    – P1:表紙
    – P2:物流現場の現状課題(ヒートマップ+写真)
    – P3:自動化ソリューション案(3案の比較表)
    – P4:導入効果(コスト削減額と人員配置の変化)
    – P5:投資回収シミュレーション(折れ線グラフ)
    – P6:次ステップ(導入スケジュール)
  3. AI出力:チャート指示・文面
    – 「このチャートは横棒グラフ、単位は万円、色分けはA案:青、B案:緑、C案:赤」
    – 「B案が初期費用は最も低いが、3年後にはROIでA案を上回ることを示す説明文付き」

開発職への影響:テンプレート自動生成システムの需要拡大

このようなAIを活用した資料作成の中核には、「スライドテンプレートの自動生成」「構成設計エンジンの開発」が存在します。

開発職、特に社内業務改善に関わるエンジニアやUI/UX設計者は以下のような役割を担うようになります:

● スライド生成AIと社内テンプレートの統合設計

● 過去資料の構成要素抽出・ラベリング・タグ付け

● PowerPoint・GoogleスライドとのAPI連携設計

● 利用者のプロンプトに応じて「自動で図解候補・表形式・推奨構造」を返す仕組みの開発

これにより、開発職は「コンサル業務の舞台裏」であるインフラ設計の要となり、単なる技術支援ではなく「業務変革のエンジン」としての位置付けを得ていくでしょう。


人間に残される領域:トーン・強調・空気の操作

AIがスライド案や文面を生成することで、確かに「手を動かす作業」は大きく減ります。しかし、次のような判断は、依然として人間の領域です:

● 「この説明では部長には通るが、社長には刺さらない」
→ 経営層ごとの好みや懸念点を読む力

● 「この比較表、A案に引っ張りたいなら順番変えるべき」
→ 意図的な見せ方と印象操作の調整

● 「このスライドは数字より感情を動かす写真を前に出したほうがいい」
→ 論理ではなく“伝わりやすさ”を優先する判断

つまり、AIは「構成・論理・図解」の支援に特化し、人間は「意味づけ・空気・演出」を担う。これが、提案書作成の未来型役割分担です。


提案書作成が高速化することで起こる変化

  1. 提案の数と速度が増える
    1人のコンサルタントが1日で提案書を複数案用意できるようになり、商談数・試行数が飛躍的に増えます。
  2. 内容の深度が上がる
    AIに下調べや構成整理を任せられることで、人間は「本質的な戦略論」「落としどころの模索」に注力できるようになります。
  3. 社内教育の在り方が変わる
    従来は資料作成を通じて論理性や構成力を磨いていましたが、今後は「AIが出した資料をどう読むか」「どう修正するか」が学習の中心になります。

第5章:ロジックチェックと構成支援

コンサルの核心「論理の一貫性」とは

コンサルティングの現場で、最も厳しく問われる能力の一つが「ロジックの一貫性」です。どれだけ情報を集め、見栄えの良い資料を整えても、そこに飛躍や前提抜け、矛盾があれば、クライアントの信頼は一瞬で失われます。

このため、資料作成や提案の最終段階では、必ず以下の観点からチェックが行われます:

● 前提条件が明確に記述されているか
● 問題提起から仮説、施策案までに飛躍がないか
● 目的と提案が一致しているか(Why/What/Howの整合性)
● 反論や異論への備えがあるか

従来、これらは上司やレビュー担当者による「目視と感覚」に依存していましたが、AIの登場により、構造的・定量的なロジックチェックが可能になりつつあります。


現在のAIができること:構成の検証・飛躍の指摘

AIは、構造的な文章やスライド構成を解析し、以下のような作業を自動化できます:

● 「前提→課題→仮説→解決策」の流れが成立しているか確認
● 段落やスライドごとの要旨を抽出し、論点の重複や欠落を可視化
● 説明の飛躍(たとえば「顧客満足が上がれば利益が増える」といった飛びすぎた因果)の指摘

たとえば、次のような報告書に対し:

  • 「A社は売上が落ちている。よってリブランディングが必要だ。」

AIは以下のように判断します:

  • 「売上減少 → リブランディング」という結論に至るまでの論理が欠如
  • 価格競争・販路縮小・顧客離反など、売上減少の要因が特定されていない
  • 施策としてのリブランディングが、他の選択肢と比較されていない

これを人間の代わりに、数秒で機械的に洗い出してくれるのが、現在のAIのロジックチェック機能です。


今後のAIができるようになること:「誰に通じるか」の観点まで含めた論理評価

AIは、今後さらに進化し、以下のような文脈情報まで踏まえて論理性を評価するようになります:

● 「この資料構成は、技術部長には通じるが、経営層には論点が抽象すぎる」
● 「この仮説はマーケ部視点では合理的だが、財務部からのツッコミが想定される」
● 「図3の解釈が難しい。補足ナレーションがないと誤読される可能性がある」

つまり、単に「論理が正しいか」ではなく、「誰にとって納得可能か」までを評価するようになり、ストーリーの修正案を提示する機能も現実味を帯びています。


営業職への影響:「説得力の科学化」が進行する

ロジックの構成とチェックがAIによって自動化されることで、営業職にも明確な変化が訪れます。具体的には次の2点です。

① 説得の“正解構造”が可視化される

従来、営業における「説得力」は属人的・経験的なものとされてきましたが、AIの導入によって、次のような出力が可能になります:

  • 「この提案は経営層の意思決定スタイル(損失回避型)に合っていない」
  • 「同業他社で通った構成は、メリット先出し型・3案提示型が多い」
  • 「最初の3分間でROIの話をするほうが反応率が高い」

こうした知見は、今後営業支援ツールやコンサル営業支援AIに組み込まれていき、「説得の型」が学習可能なスキルとなるでしょう。

② 営業資料の精度が底上げされる

提案資料における「構成の粗さ」や「論理の抜け」も、AIが補完してくれるため、営業担当者は「見せ方」と「関係構築」に集中できるようになります。これは、営業活動の“思考労力”の多くを代替してくれることを意味し、非属人化・若手の戦力化にもつながります。


ロジックチェックに必要なプロンプト設計例

AIにロジック評価を行わせるには、適切なプロンプト設計が必要です。以下は実際の使用例です:

基本プロンプト例:

  • 「この提案書の構成に論理飛躍がないか確認して。前提 → 課題 → 解決策の整合性を重視」

応用プロンプト例:

  • 「この構成は財務部長に通じると思う?ROIの記載が薄い気がするが、指摘して」
  • 「このスライド、反論されそうなポイントを挙げて、補足スライドが必要なら提案して」

プロンプト設計が精緻になるほど、AIの出力精度は大きく向上し、より深度のあるレビューが可能になります。


人間に残される役割:意味の変換・非論理的含意の扱い

AIがどれだけ論理構造を正確に処理しても、次のような非論理的・人間的な要素には限界があります:

● 「相手は論理より“安心感”を求めている」

● 「あえて弱点を先に示して誠実さを演出する」

● 「最終提案は“これなら責任を取らずに済む”という逃げ道を含んでいなければ通らない」

これらは、論理とは別軸の「心理」「空気」「政治」の文脈です。AIはそれを模倣することはできても、“意味を超えて共感を引き出す提案”は、人間が担うべき領域に残ります。


ロジック支援により教育コストも激減

コンサル業界では、若手アナリストやコンサルタントが「論理的思考力」を身につけるために、先輩や上司のレビューを何度も受けながら改善を重ねていました。

しかし、AIによるロジックチェックが実装されれば、以下のような教育支援が可能になります:

● 若手が書いた構成案に対して、即時に指摘・修正案が提示される

● スライド構成テンプレートとロジックパターンのセット学習が可能

● よくある飛躍や構成ミスを「データとして蓄積・再利用」できる

これにより、論理構築の“属人的レビュー”は、半自動化・標準化され、教育の質と速度が大幅に向上します。


第6章:現場ヒアリングと議事録自動化

コンサル現場におけるヒアリングの役割

戦略コンサルティングでは、現場の実態を把握するために、キーマンや現場担当者へのヒアリングが欠かせません。クライアント側からは見えにくい課題の本質や、社内の力学、制度の形骸化、習慣としての非効率などを、言葉の中からすくい上げる作業です。

このプロセスにおいては、単に「話を聞く」だけでは不十分であり、以下のような高度な認識が求められます:

● 発言の裏にある「真意」「本音」の抽出
● 話者ごとの関心領域・立場の整理
● 仮説をぶつけて確認・修正する対話設計
● 記録・議事録を通じたナレッジ共有

これらの業務は、従来は非常に属人的であり、情報漏れや誤認識も発生しやすいものでした。しかしAIは、音声認識・自然言語処理・文脈理解といった技術の進化により、この領域にも深く入り込みつつあります。


現在のAIができること①:議事録の自動化と要約整理

AIは、以下のような機能を実現しています:

● 音声認識による文字起こし(話者の区別は簡易レベル)
● 会話ログからトピックごとの分類(例:「課題」「仮説」「対策」)
● 重要な発言や意思決定の要約(例:「A課長:現場が人手不足で回らない」→『人員不足がボトルネック』と自動抽出)

たとえば、1時間のヒアリングを録音しておけば:

  • 文字起こし(整形済)
  • 会話の分類(話者・内容・重要度)
  • 検索しやすいトピックタグ付きの議事録PDF

これらが自動で生成され、すぐにクライアントや社内に共有可能となります。


現在のAIができること②:インタビュー要点の構造化

特にコンサルに有効なのは、以下のような「論点ごとの自動整理」です:

● 発言を「課題」「原因」「仮説」「期待」「懸念」「提案」に分類
● 業界特有の論点(例:物流業なら「リードタイム」「配車」「人手」など)を自動で抽出
● 相手が曖昧に話したことを、明確な構造文で再構成

この機能により、分析者は膨大な音声ログやメモを再読する必要がなく、初期の課題設定や仮説構築が非常にスピーディになります。


今後のAIができるようになること:文脈付き発言の深読みと“問い返し”

将来的には、AIは以下のようなレベルの高度処理が可能になると考えられます:

● 複数人の話者の口調・語気・感情を識別し、「発言の重さ・影響力」を推定
● 対話の流れから、質問意図や仮説背景を推定し、逆に「抜けている論点」を指摘
● 次回インタビューのための質問リストを自動生成(例:「この件は結論が曖昧なので、A部長に再確認せよ」)

これは、AIが単なる記録係ではなく、「対話の設計者」として機能し始めることを意味します。会話からの学習を通じて、コンサルタント自身の思考や仮説形成を補助する存在になるでしょう。


事務職への影響:記録係から“記録ナビゲーター”へ

従来、議事録やヒアリング記録は事務職(アシスタント職)が担うことが多く、以下のような作業が典型的でした:

● メモ取り(リアルタイムまたは録音後)
● 誤字・脱字の修正
● 話者の特定・要点整理
● トピックの見出し付けとフォーマット整形

これらはAIがかなりの部分を代替しつつあるため、事務職の役割は以下のように変わっていきます:

● AIが生成した議事録の精査と確認(ニュアンスや誤解の修正)
● プロンプトによる最適な出力形式の指定(クライアントの好みに応じて要点型・全文型・箇条書き型など)
● ヒアリング前後の段取り調整(参加者リスト、目的確認、補足資料の提示など)

このように、単なる記録作業から、「記録を設計し活用する」方向への進化が求められています。


人事職への波及:面接記録・組織観察にも活用可能

AIによるヒアリング記録技術は、人事領域にも応用が進んでいます。たとえば:

● 面接記録の自動生成
● 応答内容からの適性推定(言語傾向・構文・感情強度)
● 新入社員ヒアリングの定量分析(組織適応度・不安要因の傾向)

人事職においても、「会話から読み取る力」だけでなく、「AIが読み取った結果をどう解釈し活かすか」の設計力が、今後の中核スキルとなっていきます。


ヒアリングの本質は「意図の明確化」であり、それはAIには難しい

AIが議事録や会話記録を生成し、分類・要約も行えるようになっても、依然として以下の領域は人間に残されます:

● なぜこの質問をしたのか?(背景・仮説・意図の読み取り)
● 相手の言葉の裏にある「本心」「感情」への直感的気づき
● 本質的に聞きづらい話題(例:社内の不満・無言の抵抗)の扱い方

また、同じ言葉でも、発言者の性格や立場により意味が変わることがあります。

例:「それは難しいですね」
→ A部長なら「やる気がない」意味、B課長なら「別案を考えている」意味、など

このような“文脈の揺らぎ”を読み解く力は、しばらくは人間の強みとして残り続けるでしょう。


ヒアリング業務の将来:AIが“仮説と質問”を提示する時代へ

最終的に、AIは「ヒアリング相手の立場・過去発言・組織図・発言傾向」などをもとに、次回の面談で聞くべき質問セットを提示するようになります。

例:

  • 「A課長は物流の実行面に詳しいため、次は具体的な日次業務プロセスを聞くべき」
  • 「前回の回答が曖昧だった“外注費の算定根拠”について再確認を推奨」
  • 「経理部からの視点が抜けているため、関係者追加を検討すべき」

これは、コンサルタントにとって非常に価値の高い支援となり、ヒアリングの精度・速度・深度が劇的に向上することを意味します。


第7章:インタビュー設計と仮説マトリクス構築

インタビューは「問いの質」がすべてを決める

コンサルティングにおけるヒアリングは、単なる情報収集の場ではありません。それは、「どんな問いを投げるか」「その問いで相手が何を答えるか」によって、戦略の方向性そのものが決まってしまうほど重要な工程です。

インタビュー設計とは、以下のような高度な思考の積み重ねで成り立っています:

● 問題の構造を把握し、どの要素が不明なのかを明示する
● インタビュー相手の立場・視点に応じて、最適な質問を設計する
● 仮説の検証と修正のために、答えやすくかつ核心を突いた問いを選ぶ
● 質問の順番や組み合わせで、相手の思考を整理・誘導する

つまり、「質問力」とは、構造理解力・思考整理力・人間観察力の複合スキルであり、それがコンサルタントの力量を可視化する場でもあるのです。


現在のAIができること:インタビュー内容の整理と論点分類

AIは、現時点でも以下のような支援が可能です:

● インタビュー内容の構造化(課題/原因/仮説/懸念などの分類)
● 話者ごと・トピックごとの発言整理(視点の偏りが可視化される)
● よくある論点マップとの照合による不足領域の指摘
● 次に聞くべき事項の提案(例:「業務フローの詳細が不足しています」)

これにより、現場での発言をベースに、仮説マトリクスや論点フレームが自動で生成され、情報整理の負荷が大幅に軽減されます。


仮説マトリクスとは何か

仮説マトリクスとは、以下のような形式で「問題構造と検証ポイント」を一覧化したものです:

大論点 仮説 根拠情報(必要) 現状の確認度 優先度
配送遅延問題 原因は再配車ルールの曖昧さ 配車手順書、現場ヒアリング 未確認
在庫ロス問題 顧客需要予測の精度が低い 過去予測データ、営業ヒアリング 一部確認済
離職率上昇 管理職による指導力不足 評価シート、面談記録 未確認

このように、課題構造を仮説の形で分解し、それぞれの検証情報と優先順位を整理することで、「何を聞くべきか」が明確になります。

AIは、このマトリクスを自動で生成・更新できるようになりつつあります。


今後のAIができるようになること:業界別フレームの動的適用と仮説の自動組成

将来的には、AIが以下のような動きを担うようになります:

● 業界ごとの典型課題フレーム(製造業ならQCD、飲食なら回転率など)を自動適用
● 過去事例から類似ケースを抽出し、仮説セットを提示
● 対象部門・相手役職に応じて、質問リストをチューニング
● インタビューが始まる前に、「この会話の目的」「想定される結論」「使うべき論点」を提示

これは「仮説の量産+精査」が完全自動で可能になることを意味し、コンサル業務のうち“構造思考”の大半が機械化される可能性を示しています。


開発職への影響:仮説支援エンジンの構築とナレッジ設計の中核に

このような仮説構築支援AIを実現するには、開発職、とりわけ以下のようなスキルを持つエンジニアが重要になります:

● 専門業種ごとの典型課題・論点構造をデータベース化する設計力
● AIが仮説を“論理的に自然な形”で出力するための構造訓練設計
● ユーザーからのプロンプトに応じた可変ロジックの構築(例:「在庫に関する仮説を3つ提示して」)

特に、「人間の論理パターンを機械学習で再現可能な単位に落とし込む」力は、今後の開発職の差別化スキルとなります。


人間に残る役割:「問いの意味」を設計する力

AIが仮説と質問を自動生成できる時代でも、次のような観点は人間でなければ担えません:

● 相手の性格・疲労度・関係性を踏まえた“優先順位の再構成”
● あえて遠回しな聞き方をして、無意識の反応を引き出す配慮
● 質問によって「自分たちで気づいてもらう」設計(納得感重視)

例:「今の仕組みは変えづらいですよね」と共感的に振ることで、「実は皆そう思ってます」と核心が自然に引き出される、という高度な設計は、AIには実装できません。


質問設計におけるAIと人間の役割分担

項目 AIが得意なこと 人間が担うべきこと
問題の構造整理 フレームワーク適用、論点の分解 “本質的には何が問題か”の再定義
仮説の初期提示 類似ケース抽出、データからの反復構築 クライアントの文脈に応じた仮説の絞り込み
質問文の構成 役職別テンプレートから自然な表現を出力 相手の性格・組織政治に応じた微調整
インタビュー中の対応 話題の分類・記録・発言傾向の把握 表情・沈黙・間の解釈、リアルタイムでの空気の調整

このように、「思考の土台=AI」「人間関係の演出=人間」という分担が確立されていきます。


結論:インタビュー設計も“準備”はAIで、“仕掛け”は人間で

将来的には、以下のようなインタビュー支援フローが現実のものになります:

  1. コンサルタントがプロンプト入力:「営業部の在庫回転について課題を聞きたい」
  2. AIが仮説マトリクスと質問セットを提示:「仮説A〜C。質問はこの順が有効です」
  3. インタビュー後、自動で議事録・論点抽出・次回確認事項リストが生成される
  4. 人間は、AIが出した問いをどう“伝えるか”に集中する

このような分業構造が、インタビューという高度な情報収集行為を“再現可能な知的作業”に変えていきます。


第8章:分析業務(財務・顧客・市場)のAI進化

コンサル業務の中核にある「分析」とは

戦略コンサルティングにおける「分析業務」とは、集めたデータや仮説をもとに、課題の構造や打ち手のインパクトを定量・定性の両面で明らかにする行為です。以下のような作業が含まれます:

● 財務分析:PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー)の読み解き、構造分析
● 顧客分析:属性、行動履歴、購入傾向、LTV(顧客生涯価値)などの可視化
● 市場分析:シェア・成長性・競合動向の時系列比較
● セグメンテーション:ペルソナの定義と市場細分化
● 感度分析・シナリオ分析:変数を変えたときの結果の変化を定量試算

これらの作業は、かつては「数字が読める人材」に限られた専門的業務でしたが、AIの台頭により、誰でも高速・高精度に処理可能な時代へと突入しています。


財務モデリング:現在のAIができること

● PL/BS/CFの連動モデルを自動生成
→ 決算書PDFやXBRL形式データを読み込ませるだけで、Excel上に連動する数式入りの財務モデルを構築可能

● 感度分析・シナリオ試算
→ 「売上成長率3%・粗利率40%の場合と、成長率1%・粗利率35%の場合を比較して」などのプロンプトにより、損益・キャッシュへの影響が自動表示

● KPIごとのドリルダウン
→ 売上変動の要因を、「単価」「数量」「チャネル別」「製品カテゴリ別」などに分解して自動的に出力

従来、経験豊富なアナリストしか構築できなかった複雑なExcelモデルが、AIによって数分で作成される時代になっています。


顧客分析・セグメンテーション:AIの得意領域

AIは、大量の顧客データをもとに以下の分析を自動実行可能です:

● 属性別クラスタリング(年齢・性別・エリア・購入履歴)
● 行動ベースの分類(閲覧時間・クリック回数・購入頻度)
● ペルソナの自動定義とラベリング(例:「価格に敏感な30代男性」)
● 顧客のLTV推定とランク付け(ゴールド/シルバー/ブロンズ)
● 離脱兆候のある顧客のスコアリング

こうした分析は、主にマーケティング系のデータサイエンティストが担ってきた領域ですが、AIにより、非専門職でも容易に扱えるようになりつつあります。


市場分析・競合分析:時系列・地理・製品軸の統合

● 過去5年の市場成長率と競合のシェア変化をグラフ化
● 地域別売上・店舗数の推移と市場浸透率の相関分析
● 製品カテゴリごとの売上構成の変化をビジュアルで提示
● ニュース・IR資料・業界紙をAIが統合し、重要キーワードを抽出・時系列表示

これにより、分析者は「グラフを描く」作業から解放され、「その意味をどう読むか」という“思考”に集中できるようになります。


IT系技術職への影響:分析基盤の構築者としての重要性

分析の自動化が進むなかで、IT系技術職には以下のような役割が求められます:

● データ基盤の整備(データウェアハウス、ETLパイプライン)
● API連携によるリアルタイムデータ取得(会計ソフト、CRM、外部統計機関など)
● 分析モデルの再学習設計と運用(例:商品カテゴリが増減したときの分類調整)
● ノーコードBIツールとAI分析エンジンの連携構築

これらの業務は、従来の「エンジニア的作業」から、「ビジネス目的に基づいた分析インフラの提供者」へと高度化しており、経営コンサルや戦略部署と直接対話する機会も増えています。


分析結果の“解釈”は、依然として人間の特権

AIは「正確に」「早く」「大量に」分析できますが、次のような作業は人間にしかできません:

● 「このグラフの傾きが意味するものは何か?」という背景理解
● 「ここでの数字の変化は、制度変更の影響ではないか?」という文脈判断
● 「このセグメントは売上高は大きいが、将来性は乏しい」などの非数値的洞察

特に、複数のデータを“並べて眺める”ことで見えてくる暗黙の関係性(例:「退職率と新人研修予算が逆相関」など)は、現時点ではAIには解釈が困難です。


人間とAIの役割分担:分析業務の未来

分析工程 AIの役割 人間の役割
データの収集 API連携・クローリング・データベース構築 信頼性の確認、漏れのチェック
データの加工 整形・統合・形式統一(ETL処理) イレギュラー対応・例外処理
分析の実行 統計処理・機械学習モデル・自動可視化 指標の選定・前提の設定
結果の解釈 傾向抽出・分類は可能だが、意味づけは困難 背景知識・業界文脈・経営戦略との接続
レポート作成 グラフ挿入・コメントの素案は可能 経営陣向けのストーリー構築・論点の選定

このように、AIは分析の「手足」として最高のパートナーですが、「何を見て、どう伝えるか」は依然として人間のスキルです。


分析業務の高速化が生む新たな価値

  1. 仮説の打ち返しが可能になる
    分析結果が即座に出るため、「ではこれなら?」「あの条件では?」という反復的仮説検証がリアルタイムで可能になります。
  2. 非分析職の戦力化
    営業・企画・人事など、従来データ分析から遠い職種でも、AI支援により「データに基づく発言」が増加。意思決定の質が底上げされます。
  3. “意味ある数字”を抽出する力が求められる
    数が読めるより、「何が見えているかを言語化できる」人材が価値を持つようになります。

第9章:戦略立案支援(仮説生成・選択肢評価)

戦略立案の本質とは何か

戦略コンサルティングの最終工程にあたるのが、「戦略の立案」です。ここでいう戦略とは、単なる施策の羅列ではなく、

● クライアントの目標(売上拡大、コスト削減、海外進出など)
● 外部環境の制約(競合、規制、市場構造)
● 内部資源の制約(人材、設備、技術、資金)

――を踏まえた上で、「複数ある選択肢のなかで、最も合理的かつ実行可能な進路を示すもの」です。

戦略立案は、情報の多さでも論理の精緻さでもなく、「不確実性を抱えたまま意思決定を進める力」が問われるプロセスです。そのため、従来は極めて人間依存、かつ経験知に基づいた属人的作業が主流でした。

しかし、AIの進化により、戦略構築の「材料生成」と「選択肢の評価」という二大要素が、機械的に支援可能な段階に入りつつあります。


現在のAIができること①:戦略オプションの自動生成

AIは、基本的な戦略フレーム(3C分析、5F分析、SWOT、バリューチェーン、PESTなど)を理解し、それに沿った戦略案を生成できます。

例:「地方製造業が売上を20%伸ばす戦略を3つ提示せよ」

→ AI出力例:

  1. 新規販路開拓:海外販路の開拓(東南アジア中心)、現地商社との提携
  2. 製品多角化:既存設備を活かした異業種OEM生産の受注
  3. 価格戦略強化:サブスクリプション型パッケージによる顧客単価引き上げ

このように、AIはフレームワークに沿って“漏れなく・重複なく”選択肢を提示するのが得意であり、発想の偏りや漏れを防ぐ補助役として優秀です。


現在のAIができること②:各戦略案の評価とスコアリング

AIは、戦略オプションを評価する際、以下のような視点を自動的に適用可能です:

● 投資対効果(ROI):初期投資額、ランニングコスト、見込利益のバランス
● 実現難易度:社内体制の準備状況、法規制の有無、既存業務との整合性
● インパクト:対象KPI(売上・利益・CSなど)に与える影響度合い
● リスク要因:外部依存、サプライチェーン、競合の反応

これにより、「戦略A・B・C」の三案に対して、定量スコアと定性補足を併記した“意思決定支援資料”を自動生成することが可能になります。


今後のAIができるようになること:動的シナリオ設計とリアルタイム比較

将来的には、AIが以下のような動的支援を提供するようになります:

● 変数を変更すると、戦略オプションのスコアが即座に更新される
→ 例:「人員を20%削減した場合の実現難易度はどう変わるか?」を即時試算
● 経営陣ごとの判断スタイルを学習し、それに合わせたシナリオ設計
→ 例:「短期志向の社長には、3年以内の効果が強調された案を提示」
● 他社事例との類似度分析により、「この戦略は競合C社が3年前に実施、失敗」といった補足まで出力

つまり、AIは単なる“案の列挙”から、“条件反射型シミュレーションエンジン”へと進化し、戦略策定そのものが「動的プロセス」へと変貌します。


営業職への影響:提案の深度と差別化が自動化される

AIによる戦略支援は、営業活動にも以下のような変化をもたらします。

①「刺さる提案」の再現性が上がる

従来、営業担当が試行錯誤で構築していた「最適提案構成」は、AIによって以下のように半自動で導出可能になります:

  • 顧客の属性(業種・規模・エリア)
  • 目的(コスト削減/売上向上/業務効率)
  • 過去提案で反応がよかったスライド構成・言葉遣い・KPI

→ これらを統合し、成功確率の高い戦略案を提示するテンプレートがAIから供給されるようになります。

② 提案準備の時間が1/10に短縮される

ヒアリング後すぐに、「3案+評価+補足資料」がAIから出力されることで、営業担当は“提案資料作成”に時間をかける必要がなくなり、“関係構築と提案の精緻化”に集中できます。


人間に残される役割:意思決定の設計者としてのコンサルタント

戦略立案において、AIに任せられる部分が広がったとしても、「最終意思決定」に関わる以下のような設計は、依然として人間の領域です。

● どのKPIを最も重視するか(成長重視か、安定重視か)
● 短期と長期、どちらに軸足を置くか
● 社内政治や関係部門の支持を得やすい案はどれか
● 社長の“こだわり”や“過去の失敗体験”は何か

AIは数字で示せる要素に強くても、「感情・信念・空気感」といった“非数値的な要因”を理解し、判断に組み込むことは苦手です。


ケーススタディ:AIと人間の協業による戦略立案

クライアント:中堅建設会社、直近の悩みは営業利益率の低下
目的:利益率向上、収益の安定化

ステップ1:AIによる戦略オプション出力

  • 案A:高粗利案件への営業特化(建築系ゼネコン連携)
  • 案B:社員の業務多能化によるコスト削減(研修+ローテーション)
  • 案C:資材調達方法の見直しと共同購買の実施

各案に対して、AIが「予想改善幅」「実行可能性」「初期投資額」を定量化し、マトリクス表示。

ステップ2:人間による補正

  • 案Bは人材が流動的な社内文化に合わず、実行困難
  • 案Aは営業部長がゼネコンとの関係を築いており、推進しやすい
  • 案Cは昨年トライして失敗した前例あり、慎重論が強い

→ 最終的に案Aを主軸に、Bを補助的施策とする戦略が選定される。


結論:戦略立案は“意思決定のプロセス設計”へ進化する

戦略立案は、かつては“天才的直感”の領域とされていましたが、AIの登場により以下のように変化しています:

● 選択肢の網羅性:AIが論点を網羅的に提示
● 評価の客観性:スコアリングと数値シミュレーションで補強
● 判断の柔軟性:人間が空気感・政治・直感で微修正

コンサルタントの役割は、もはや「案を出す人」ではなく、「意思決定の場を設計する人」へと進化しているのです。


第10章:KPI設計と実行管理モデルの自動化

KPI設計とは何か

KPI(Key Performance Indicator)とは、組織の目標達成に向けた進捗を測るための指標であり、戦略を現場レベルに落とし込む際の“道しるべ”です。KPIが適切でないと、どれだけ戦略が正しくても現場は動かず、企業全体のベクトルが崩壊します。

KPI設計とは単に指標を決める行為ではなく、以下を統合する構造設計のプロセスです。

● 目標(例:売上○億円、原価率○%以下)
● 戦略(例:高単価製品の推進、チャネル見直し)
● 現場業務(例:営業行動数、工数、在庫回転率)
● 評価制度(例:MBO連動、OKRなど)

これらを一貫性のあるツリー構造に落とし込み、「誰が・いつ・何を・どう測るのか」を明確化する必要があります。


現在のAIができること①:KPI設計の自動ツリー生成

たとえば「事業部の利益率向上」という目標を与えた場合、AIは以下のようなロジックツリーを自動で設計できます。

目標:利益率向上
 ├ 売上高の増加
 │  ├ 新規案件数の増加
 │  └ 単価の向上
 └ 費用の削減
    ├ 材料費率の削減
    └ 外注費の削減

さらに、各要素に対して測定可能なKPI(例:商談数、平均契約単価、粗利率、平均仕入単価など)を紐付け、エクセルやBIツールでの実装フォーマットまで生成可能です。


現在のAIができること②:実行管理モデルの構築支援

KPIを“回す”ためには、業務フロー上のアクションと紐づいていなければ意味がありません。

AIは、CRMやSFAツールから行動データを取得し、

● KPIに対する達成率の可視化(ダッシュボード化)
● 各現場におけるボトルネック特定(例:案件数は多いが失注率が高い)
● タスクとKPIの因果関係分析(例:〇〇営業手法を取ったときだけ成約率が20%向上)

といった「実行モデルの可視化と自動補正」を実現します。


今後のAIができること:KPIの“設計→実行→補正”の完全自動化

将来的には、以下のプロセスすべてがAIにより自動で回るようになります。

  1. KPIの自動設計:目的や目標から逆算し、戦略を分解して最適KPIセットを構築
  2. データ収集・整備:各部門のシステムと連携して必要なデータを自動取得・整形
  3. 進捗トラッキング:実績値の集計と、達成見込みの自動予測(例:週次で警告)
  4. 因果分析・リスク検出:KPI未達の理由を構造的に分析(例:「A地区は訪問数が極端に少ない」)
  5. 運用改善の自動提案:KPIが機能していない要因を特定し、再設計を提案

この一連のサイクルは、「人間のマネジメント力の再現」と言えるほど高精度に実行されるようになります。


IT・開発・事務職への影響

IT系技術職への影響

KPI設計に関わるBIツール開発やダッシュボード設計などの業務は、AIによって以下のように自動化されます。

● データ連携の設計:SQLを書かずとも、「この指標をSFAから取って週次で表示して」と指示するだけで生成
● データ可視化:目的に応じた最適チャート(棒グラフ/折れ線/ヒートマップ)をAIが選択
● アラート設計:異常検知モデルとKPIの連動による自動通知

→ 従来の“手作業ベースのBI開発”は大幅に縮小し、代わりに「KPIの背景や意図」を設計できる人材にシフトしていきます。

開発職への影響

製品開発においては、KPIの自動設計が「開発優先度の自動評価」として応用されます。

● 「〇〇機能を実装するとCVRが○%向上する見込み」
● 「△△仕様変更は保守コストを年100万円下げる可能性」
→ こうした試算をもとに、ロードマップや要件の優先順位付けまでAIが支援

開発職は、「プロダクトビジョンとKPIの接続点」を理解する“戦略的プロダクトマネージャー型”が求められるようになります。

事務・総務職への影響

従来、KPI集計・報告業務を担っていた事務職は、以下の変化が生じます。

● 日次・週次でのKPI更新は完全自動化
● 会議用の報告資料はAIが自動生成(文章+チャート)
● 上司からの「この数値、なんで悪化してるの?」という質問に対して、AIが要因候補をリストアップ

→ 事務職には、定型業務から脱し「運用改善のアドバイザー」的な立場への進化が求められます。


ケーススタディ:AIを活用したKPI設計プロジェクト

クライアント:人材紹介企業(社員数200名、営業主導)

課題:KPIが曖昧で、部門ごとに指標がバラバラ

導入プロセス:

  1. 目的の明確化:経営陣と「利益率向上」「案件成約率の改善」を共通目標に設定
  2. AIによるKPIツリーの自動生成(部署別)
    – 営業:商談数、1商談あたり成約率、フォロー回数
    – マーケ:リード数、獲得単価、転換率
    – 管理部:契約処理時間、クレーム率、手戻り件数
  3. ダッシュボード自動設計(Tableau/Lookerと連携)
  4. 月次でAIがKPIの異常を自動検知 → 部門長に改善案提示

結果:部門間の指標整合性が取れ、数値責任の所在が明確化。1年で営業利益が15%改善。


結論:KPI設計は「実行を支える構造」から「実行を導く知能」へ

KPIは本来、「進捗を監視する」ためのものではなく、「組織を動かすための言語」です。

AIによってこの言語は、以下のような変化を遂げています:

● データと直結し、リアルタイムで“話しかけてくる”指標に
● 達成可能性と運用現場の接地感を持った“生きた指標”に
● 自動で変化・補正される“適応型構造”に

コンサルタントや経営者にとって重要なのは、「何を測るか」ではなく、「測ることで何を動かすか」。AIはその答えを、人間より早く・広く・深く、提示しはじめています。


第11章:プロンプト設計とAIリテラシーの重要性

なぜ「プロンプト」が全てを左右するのか?

AIを業務に活用する上で、最も軽視されやすいが最も重要な要素――それが「プロンプト設計」です。

AI、特に生成系AIは、入力されたプロンプト(命令文・指示文)によって出力内容の品質が激変します。たとえば、同じ情報を引き出そうとしても、以下のように結果が大きく異なります。

● 「業界分析して」→ 表層的な説明、定型的な構造
● 「◯◯業界の上位5社の直近5年の成長率、主力商品、資本構造の傾向をまとめて」→ 深度ある比較・具体的な数値・構造化出力

この違いが、成果物の品質・意思決定の精度・業務スピードに直結するのです。


現在の生成AIの実力と限界

現代のAIは「目的が曖昧な指示には曖昧な結果を返す」性質を持っています。裏を返せば、「目的・前提・粒度・期待値」を明示した指示には、極めて高精度な出力を返してきます。

現場でありがちな失敗例:

● 抽象的プロンプト:「新規事業の案を出して」→ トンチンカンな提案
● 不完全な条件指定:「このPDFを要約して」→ どの視点で、誰に向けてか不明
● 用語未定義:「競合の分析をお願い」→ 競合の定義(業種?地域?資本構造?)が曖昧

適切なプロンプト設計には、以下のような要素が必要です。

● 前提:対象業界、対象企業、目的、制約条件など
● 期待する出力形式:表形式、箇条書き、論文調など
● 粒度:どのレベルまで掘り下げるか
● 視点:誰の立場で考察させるか(例:経営者目線、購買担当目線)


プロンプト設計能力=コンサルスキル

実は、優れたプロンプト設計能力とは、コンサルタントが常に行っている「構造化思考」「仮説構築」「論点分解」の再現に他なりません。

たとえば以下のようなプロンプトは、まさにコンサル的な指示の典型です。

● 「新規事業として、◯◯技術を活用したB2B向けサービスを構想したい。前提として、対象業界は○○で、競合は△△。差別化の観点と収益モデルの観点から、3つの構想を比較して出して」
● 「このプロジェクトの課題構造を、Whyツリー形式で5階層まで出力し、施策とKPIも添えて」

こうした精緻な設計を行うには、「論点が何かを正確に言語化できる能力」が不可欠です。AIの活用は、この論点設計能力=コンサル能力そのものを試す場面に他なりません。


AI活用リテラシーの全体像

生成AIを業務で“戦力”として使うには、以下の5ステップに分解したリテラシーが求められます。

ステップ1:目的設計力

AIに聞く前に「何のために聞くのか」「誰の意思決定に使うのか」を明確にする力。ここが曖昧だと、すべてが迷走します。

ステップ2:構造設計力

プロンプトを構造化して「前提→論点→指示→期待形式」に分解できる力。これはロジカルシンキングと同義です。

ステップ3:対話調整力

初回の出力が期待通りでなくても、修正指示で精度を高めていく“対話力”。AIとの連携には、修正提示の粘り強さも重要です。

ステップ4:結果評価力

出力された内容を「目的に対して妥当か」「ロジックに飛躍がないか」「前提が正しいか」などの観点でレビューする力。

ステップ5:再利用・共有力

作成したプロンプトと結果をテンプレ化し、チームや他部門と共有・再利用する仕組みを作る力。


業種別:AIリテラシーがもたらす変化

営業職

これまで感覚的にプレゼンを作っていた営業が、「過去の案件分析」「業界動向」「競合の提案書比較」などをAIで瞬時に準備できるようになります。

→ 重要なのは、AIに“何を調べさせるか”の設計力。つまりプロンプト設計能力が営業の武器になります。

開発職・IT技術職

コード生成や設計案出力はプロンプト次第で効率に大差がつくため、「どう伝えれば正しいコードが出るか」を把握するプロンプト力が重要に。

→ 特に仕様書の要件をどうAIに渡すかが鍵となり、仕様設計力のある技術者が重宝されます。

事務職・総務職

定型作業の自動化(議事録、報告書、通知文作成など)が進むなかで、プロンプトを整備して「汎用化」する力が求められます。

→ 文書テンプレをAIで生成・展開することで、事務の生産性が倍増。プロンプト設計が業務改善の出発点に。

人事職

人事評価やキャリア面談のコメント生成、エンゲージメント分析などで、AI活用が始まっています。人事データの読み取り精度はプロンプトに大きく依存します。

→ 「誰に何を聞くか」「どの属性と比較するか」の条件設定をどう設計するかが人事スキルに直結します。


プロンプト設計が変えるコンサルタント像

従来のコンサルタントは、以下のようなスキルで評価されていました。

● 分析の深さ
● ロジック構築の精度
● 提案資料の完成度

これからのコンサルタントに求められるのは、

● AIに正しく構造的な問いを投げる力
● 結果の妥当性を検証し再設計する力
● クライアントとプロンプトを共有し、“一緒に問いを育てる”力

です。

つまり、生成AIを“問いの相手”として扱い、ビジネスの真因に迫るための補助脳として位置付けられる人材こそが、次世代のエースとなります。


結論:AI活用の肝は、「どんな問いを立てるか」

AIの時代において、人間の役割は「答えを出すこと」から「正しい問いを作ること」へと変化しています。

そしてその問いを言語化する能力が、すなわちプロンプト設計力です。

情報があふれ、ツールが高度化しても、「何を聞くかが曖昧な人」は、今後ますます取り残されていきます。

逆に言えば、「構造的に問いを立てられる人間」は、どんな業種でも、どんなフェーズでも、AIを駆使して圧倒的成果を生み出せるようになります。


第12章:AIでは代替できない「人間の仕事」とは何か

AIが得意なこと、不得意なこと

ここまでの11章で、戦略コンサルティング業務の約8割が、プロンプト次第でAIに置き換え可能であることを詳細に解説してきました。
AIは情報収集・整理・仮説生成・計算・構造化といった「知的なルーティンワーク」において、人間を上回る精度と速度を持ちます。

では、残る2割、AIがどうしても代替できない領域とは一体何なのか。

それは、以下のような「人間特有の文脈理解と関係性構築の領域」に集約されます。


1. 経営層との“言葉にならない対話”

戦略コンサルティングにおいて最も繊細で困難な瞬間、それは**「言語化されていない不安や葛藤」を経営層から引き出すこと**です。

たとえば以下のような場面。

● 数字上は問題ないが、社長がなぜか戦略に難色を示している
● 論理的には妥当でも、社員の感情がついてこないと読み取れる
● 「この会社らしさを壊さない形で変革したい」という想いが漂う

これらは、AIには察知不可能な情報です。経営者の表情、声の揺れ、沈黙、雑談の端々に宿る“本音”を読み取れるのは人間だけです。

そしてその本音を「共感」しつつ「構造的に翻訳する」役割こそ、コンサルタントという人間が担うべき最後の要塞です。


2. 組織の“空気”を読む調整力

AIには、定量データを基に「最適解」は提示できます。しかし、人間組織は最適解では動かないという現実があります。

あるべき姿を実現するには、

● 現場の納得
● 部門間の利害調整
● 過去の経緯としがらみの理解
● 「あの人が言うなら」という信頼関係

といった「空気」「しがらみ」「情理」を読み取りながら進める調整と合意形成が不可欠です。

たとえば、AIが出した案を採用する際に、

● 「これは現場から反発が出るので、別の人から提案させたほうがいい」
● 「このKPIは前に失敗した案件に似てるから、名前を変えて再提案しよう」

など、“人間の記憶と感情”をベースにした政治的な編集作業が求められます。ここは、人間だけが担える高度な領域です。


3. 想定外を喜ぶ力と柔軟性

AIは、あくまで「過去データと論理の範囲」でしか動けません。
それに対して人間は、想定外を歓迎し、受け入れ、発展させる力を持っています。

たとえば、戦略立案中に突如、現場の若手社員から「まったく新しい事業アイデア」が飛び出したとき――
AIは「外れ値」として処理しますが、人間のコンサルタントは、「そこにこそ革新の芽がある」と気づけるのです。

● データにならない“違和感”を尊重する力
● クライアントの雑談から可能性を嗅ぎ取る嗅覚
● 無駄話や脱線から構造的仮説を生み出す柔軟性

これは、AIが最も苦手とする部分であり、偶発的な発見を価値に変える能力こそが、最も人間らしいコンサルティングの真骨頂です。


4. 人の“変化”を支える力

戦略がうまくいくかどうかは、人が変わるかどうかにかかっています

資料やKPIを整備するだけではダメで、「人が本気になる」「人が行動を変える」「人が人を巻き込む」この流れを生み出すためには、

● 背中を押す言葉
● 一緒に悩んだという実感
● 成長を実感させる関わり

が必要です。

AIが「この戦略でいきましょう」と言っても、人は動きません。
しかし、コンサルタントが「この戦略に、あなたの価値が生きている」と伝えたとき、人は動き始めます。

つまり、戦略を“人の物語”にする力が、人間にしかない最終武器です。


コンサルティングの未来像:AIと人の協働

ここまでを総括すると、戦略コンサルティングは今後、以下のような2層構造になります。

第1層:AIに完全委託される業務(約8割)

● 情報収集
● 分析・整理
● 資料作成
● 論理チェック
● モデル設計

→ 正確で高速なAIが担う。人間はプロンプト設計とレビューに集中。

第2層:人間にしか担えない業務(約2割)

● 経営者との対話
● 組織政治と人間関係の調整
● 本音・感情の読み取り
● 意図を汲んだ構造的再編集
● 想定外を拾い上げる力
● 人の変化を支える言葉と関与

→ 人間の感性と関係性構築力が発揮される。

この2層を両立できる人材こそ、次世代のハイブリッド型コンサルタントです。


職種別:この未来にどう備えるか

営業職

→ 提案書の作成・顧客情報の収集はAIに任せ、人間は「信頼」「共感」「関係構築」のスキルを強化すべきです。

開発職・IT技術職

→ コーディングや設計案生成はAIに任せ、人間は「仕様要件の調整」「部門間折衝」「意図の翻訳」などに注力を。

総務・事務職

→ 書類作成やスケジューリングはAIに移行。人間は「職場の雰囲気調整」「対人接点の対応」に価値がシフトします。

人事職

→ AIが数値評価を担い、人間は「育成」「対話」「心理的安全性の確保」など、内面的なケアが中心に。


最後に:AIとともに“仕事の意味”を再定義する時代へ

AIの進化は、恐怖ではなく機会です。

「作業から解放され、意味に向き合う時代がきた」

その意味を、人はこれから何度も問い直していくでしょう。
戦略コンサルタントとは、本来「問いを立てる仕事」であり、「意味を与える仕事」です。

AIが“正解”を出せる時代だからこそ、
人間には“意義”を見つける力が求められます。

この2万文字の中で一貫して述べてきたのは、

「AIがここまでやれるようになった」
ではなく、
「その先に、人間がやるべきことは何か」

という問いです。

そしてその答えは、今日もあなたのクライアントの言葉の隙間にあります。