ビジネスケアラーってどんな人?
「ビジネスケアラー」という言葉は、まだ耳慣れない方も多いかもしれません。簡単に言うと、会社や職場で働きながら、家族や親せきの介護をしている人のことです。
ここでいう「介護」とは、日常生活で必要なサポート全般を指します。例えば、食事を作って食べさせること、入浴や着替えを手伝うこと、病院へ連れていくこと、薬を準備して飲ませることなどです。また、介護サービスの手配や行政への申請なども含まれます。
「ビジネスケアラー」という言葉は、「ビジネス(仕事をしている)」と「ケアラー(介護する人)」を組み合わせた造語です。つまり、自分の仕事と家族の介護を両方担っている人たちを表しています。こうした立場の人は、仕事と家庭の間で多くの時間とエネルギーを使いながら、日々を一生懸命に過ごしています。
働きながら家族を介護するビジネスケアラーの姿
ビジネスケアラーの毎日は、とても慌ただしいものです。
朝は早く起きて、家族の着替えや朝食の準備をします。そのあと急いで出勤し、仕事中も心の片隅には家族のことがあります。昼休みにケアマネジャー(介護サービスを計画する専門職)へ連絡を取ったり、休憩時間に病院の予約を入れることも少なくありません。
仕事が終われば急いで帰宅し、夕食の用意や薬の確認、入浴の介助などをこなします。夜になってやっと自分の時間ができても、翌日の準備や連絡ごとが待っています。
このように、ビジネスケアラーは「勤務時間外も気が休まらない」ことが多く、心身の疲れが蓄積しやすい生活を送っています。それでも「仕事も家族も大事だから」と両方を続ける姿は、本当に尊いものです。
ビジネスケアラーが介護する相手はどんな人?
介護の対象はさまざまですが、日本では多くの場合、親や義理の親が中心です。高齢になって体の動きが不自由になったり、認知症(物忘れや判断力の低下が進む病気)になったりすると、日常生活に支えが必要になります。
また、配偶者(夫や妻)を介護するビジネスケアラーもいます。病気やけが、加齢にともなう体力低下で、生活の手助けが必要になるケースです。
さらに、障がいのある子どもや成人した兄弟姉妹を支える場合もあります。この場合、介護は長期にわたり、将来への不安も大きくなりがちです。
介護する相手が誰であっても、その人の生活や健康を守るためには、毎日の見守りと支えが欠かせません。
日本と外国のビジネスケアラーのちがい
ビジネスケアラーは世界中にいますが、日本と外国では置かれている環境が少し違います。
欧米の国々では、在宅介護だけでなく施設介護(老人ホームなど)や訪問サービスの利用が比較的進んでおり、仕事との両立がしやすい仕組みが整っています。たとえば、有給の介護休暇が長く取れる国や、在宅勤務が柔軟にできる職場文化が根付いている国もあります。
一方、日本では介護を家族が担う割合がまだ高く、特に親の介護は子ども世代が中心になる傾向があります。また、仕事を休むことに心理的な負担を感じたり、職場に迷惑をかけたくないと考える人も多く、制度があっても使いにくい雰囲気が残っています。
この違いは、国の制度だけでなく、文化や価値観にも影響されていると言えるでしょう。
ケアラーとビジネスケアラーのちがい
「ケアラー」という言葉は、介護をしている人全般を指します。専業主婦(または主夫)で介護をしている人、定年退職後に介護をしている人、学生でありながら介護をしている人なども含まれます。
一方、「ビジネスケアラー」は、その中でも特に、仕事を持ちながら介護をしている人のことを指します。つまり、ケアラーの一部がビジネスケアラーです。
ビジネスケアラーは、介護と仕事の両方をこなす必要があるため、時間的にも体力的にも負担が大きくなります。また、キャリア(仕事上の経歴や実績)への影響や、収入の減少など、生活全体に関わるリスクも抱えています。
こうした現状を知ることで、ビジネスケアラーがどれほど多くの責任を背負っているかが、より理解できると思います。
働きながら介護をするビジネスケアラーが増えている
日本では、働きながら家族の介護をしているビジネスケアラーは年々増えています。最新の国の調査によると、ビジネスケアラーはおよそ365万人いるとされています。これは、日本の働く人全体の中でもかなり大きな割合です。
この数字はあくまで「公的に確認できた人数」であり、実際には「自分がビジネスケアラーだと思っていない」人も多く含まれていると考えられます。たとえば、「少し家事を手伝っているだけだから介護じゃない」と思っている人や、「親の通院に付き添っているだけ」という人も、実際には介護をしていると言えます。そうした人を含めると、さらに多くの人がビジネスケアラーとして日常を送っているはずです。
年代や性別ごとのビジネスケアラーの傾向
ビジネスケアラーが多いのは、40代から50代の働き盛りの世代です。この世代は、自分の子育てが終わった頃や、まだ子どもが学生の時期と重なる場合もあり、家庭内の役割が多くなりがちです。
また、女性の割合がやや高い傾向がありますが、男性のビジネスケアラーも確実に増えています。以前は「介護は女性がするもの」という意識が強かったのですが、共働き家庭の増加や価値観の変化により、男女問わず介護を担うようになっています。
年代や性別によって、抱える課題や感じるストレスの種類も変わります。たとえば、40代男性は「職場での役職責任」と「介護の時間確保」の両立に悩むことが多く、50代女性は「自分の健康」と「親の介護」の両立に不安を感じやすい傾向があります。
都会と地方でのビジネスケアラーのちがい
都会と地方では、ビジネスケアラーの置かれる環境に違いがあります。
都会では介護サービスや施設が比較的多く、選択肢もありますが、利用者が多いため予約が取りにくいことや、費用が高くなりがちな課題があります。さらに、職場までの通勤時間が長く、介護に使える時間が限られてしまうケースも多いです。
一方、地方では施設やサービスの数が少なく、選べる選択肢が限られます。そのため、家族が介護を担う割合が高くなり、ビジネスケアラーの負担が大きくなりやすい傾向があります。移動距離が長く、通院や買い物のために半日がつぶれてしまうことも珍しくありません。
どちらの環境にもメリットとデメリットがあり、地域によってビジネスケアラーの工夫や悩みは大きく変わります。
ビジネスケアラーが増えている理由
ビジネスケアラーが増えている一番大きな理由は、日本の高齢化です。特に「団塊の世代」(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)になる時期を迎え、多くの家庭で介護が必要になっています。
さらに、共働き家庭が増えたことで、家族の中に「介護だけに専念できる人」が減りました。かつては、家族の中で誰か一人が専業主婦(主夫)として家事や介護を担うことも多かったのですが、今は夫婦ともに働くケースが一般的になっています。
また、医療の進歩で寿命が延びた一方で、健康寿命(自立して生活できる期間)はそれほど延びていません。そのため、介護が必要な期間が長くなり、働きながら支える人が増え続けているのです。
これからのビジネスケアラーの見通し
今後もビジネスケアラーは確実に増えると考えられています。国の試算では、2030年にはビジネスケアラーが約318万人になると予測されています。
これは単に人数が増えるだけではなく、職場全体に大きな影響を与えることを意味します。欠勤や早退が増えたり、フルタイム勤務が難しくなる人が増えれば、企業の生産性にも関わってきます。
しかし、この未来は避けられないわけではありません。職場や社会全体で理解と支援の仕組みを整えれば、ビジネスケアラーが無理なく働き続けられる環境は作れます。
これからの日本では、「介護は家庭の問題」ではなく、「社会全体で支える課題」という考え方がますます大切になっていくでしょう。
ビジネスケアラーが増えている背景
ビジネスケアラーが増える一番大きな理由は、日本全体でお年寄りが増えていることです。日本は世界でもトップクラスの「高齢化社会」で、65歳以上の人はすでに人口の3割近くに達しています。さらに、75歳以上の「後期高齢者」も急速に増えています。
特に「団塊の世代」(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者になる時期を迎えており、介護を必要とする人が一気に増えています。長生きする人が増えるのは喜ばしいことですが、その一方で体や心の健康が不安定になる人も増え、日常生活でのサポートが欠かせなくなります。
こうして、親や義理の親を支えるために働きながら介護を担う人、つまりビジネスケアラーが増えていくのです。
共働き家庭が多くなりビジネスケアラーも増加
昔は「家で介護する人」として、専業主婦や専業主夫が家庭にいるケースが多くありました。けれども、今は共働きが当たり前になり、家族全員が外で働く家庭が増えています。
共働きの場合、家族の中に介護だけを担当できる人がいないことが多く、どうしても働きながら介護をする人が出てきます。しかも、夫婦どちらも正社員で働いている場合、時間のやりくりは一層難しくなります。
そのため、日中は介護サービスを使い、朝や夜に家族が直接介護をするという「時間をつなぎ合わせる」ような生活を送るビジネスケアラーが増えています。
家族が少なくなりビジネスケアラーの負担が大きくなる
日本では、家族の人数が少なくなっています。昔は祖父母、両親、子どもといった大きな家族で住むことも多く、介護を分担できました。しかし今は、親と子だけ、または夫婦だけといった小さな家族が増えています。
きょうだいの数も減っているため、「兄弟で介護を分け合う」ことが難しくなりました。その結果、1人のビジネスケアラーにかかる負担が大きくなります。
特に一人っ子の人は、親の介護をすべて自分で担うことになり、仕事との両立がより難しくなります。これは都会でも地方でも共通の大きな課題です。
介護期間が長くなりビジネスケアラーの生活に影響
医療の進歩で寿命が延びたことは喜ばしい一方で、介護が必要な期間も長くなっています。
介護の平均期間は約5年とされていますが、10年以上続くケースも珍しくありません。特に認知症の場合、症状がゆっくり進むため、長期にわたって介護が必要になります。
介護が長く続くと、ビジネスケアラーは仕事のペースを変えざるをえなかったり、昇進や転勤のチャンスをあきらめることもあります。また、精神的な疲れや健康への影響も無視できません。「少しの間だけ」というつもりで始めた介護が、気づけば何年も続いていたという人も少なくありません。
社会の仕組みとビジネスケアラーの関係
介護保険制度や福祉サービスはありますが、まだ十分とは言えません。
介護サービスは予約が必要で、利用できる時間や回数に限りがあります。また、費用の負担もあります。こうした制度の制限のために、結局は家族が介護の多くを担うことになり、ビジネスケアラーの存在が欠かせない状況になっています。
さらに、職場での理解や支援が不十分な場合、制度を使いたくても遠慮してしまう人もいます。「休むと同僚に迷惑がかかる」「評価が下がるかもしれない」という不安が、ビジネスケアラーを追い詰めてしまうのです。
社会全体の意識や仕組みを変えなければ、ビジネスケアラーの負担は今後も減りにくいでしょう。
ビジネスケアラーが介護する相手はいろいろ
日本のビジネスケアラーが介護する相手で一番多いのは、やはり自分の親や義理の親です。年齢を重ねるにつれて体力が落ち、転びやすくなったり、病気やけがで日常生活の一部を手助けする必要が出てきます。
特に80歳を超えると、体だけでなく物忘れが増えることもあり、食事や薬の管理、金銭の出し入れなども見守る必要があります。
義理の親の介護では、自分の親と同じくらいの思いやりが求められますが、生活習慣や考え方の違いから気をつかうことも多くなります。仕事で疲れて帰ってきても、親や義理の親のケアが待っている日々は本当に大変です。それでも「育ててもらった恩を返したい」という思いが支えになっている方も多いでしょう。
妻や夫を介護するビジネスケアラー
配偶者(妻や夫)の介護をしているビジネスケアラーも少なくありません。病気や事故、加齢による体力低下で生活が不自由になった場合、最も近くにいる家族として支えるのが配偶者です。
夫婦で介護をする場合、心の距離が近い分、気持ちの負担も大きくなりがちです。毎日の介助に加え、病院やリハビリの付き添い、家事全般も担わなければならないことがあります。
また、配偶者介護は「長期間になる可能性が高い」ことも特徴です。仕事を続けながらこの状況に向き合うには、介護サービスや周囲の協力をうまく取り入れることが欠かせません。
障がいのある子どもを支えるビジネスケアラー
障がいのある子どもを育てているビジネスケアラーは、日常生活で細やかな配慮を続ける必要があります。障がいは身体的なものだけでなく、知的障がいや発達障がいも含まれます。
成長段階に合わせた支援が必要で、学校や支援機関との連絡、医療的ケア、日常動作のサポートなど、介護の内容は多岐にわたります。
子どもへの介護は、成人してからも続くことがあります。そのため、長期的な視点で働き方や生活計画を考えなければならず、心身の負担が長く続きやすいのです。
一方で、子どもの成長や小さな変化を一緒に喜べる瞬間があり、それがビジネスケアラーの励みにもなります。
兄弟や親せきを介護するビジネスケアラー
兄弟や姉妹、またはおじ・おば、いとこなど、親せきの介護をするビジネスケアラーもいます。こうした場合、自分の家庭や仕事に加え、別の世帯の介護を担うことになり、移動や連絡の手間が増えます。
特に独身の兄弟姉妹や親せきの場合、近くにいる自分が自然と介護役になることがあります。法律上の義務はなくても、「放っておけない」という気持ちが行動の原動力になります。
ただし、血縁関係や生活スタイルの違いから、介護の方針で意見が食い違うこともあります。そんな時には、他の家族や第三者も交えて話し合うことが大切です。
高齢者以外を介護するビジネスケアラー
介護というと高齢者を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は高齢者以外を介護するケースもあります。
例えば、病気やけがで一時的に生活が不自由になった家族や、精神的な不調で日常生活にサポートが必要な人も介護の対象です。
こうした介護は期間が短いこともありますが、突然始まることが多く、準備ができていない中で対応しなければなりません。
ビジネスケアラーは、相手の年齢や状態に合わせた支援を柔軟に行いながら、仕事も続ける必要があります。この適応力こそ、ビジネスケアラーが日々磨かれていく力のひとつかもしれません。
ビジネスケアラーが困ること・大変なこと
ビジネスケアラーが最初に直面する大きな壁は「時間の足りなさ」です。
朝は家族の介護で始まり、日中は仕事、帰宅後もまた介護や家事が待っています。通勤時間や打ち合わせ、病院への付き添いなどを合わせると、1日があっという間に過ぎてしまい、自分のための時間はほとんど残りません。
たとえば、親の入浴を手伝う日には、夕食の支度が遅れ、その後に洗濯や翌日の準備をすると夜中になることもあります。そんな日が続けば、睡眠時間も削られ、体力も気力も消耗してしまいます。
時間の不足は、精神的な焦りやストレスを生み、「どちらも中途半端になってしまうのでは」という不安にもつながります。
心も体も疲れるビジネスケアラー
介護は体力も精神力も使います。体を支えて移動させる「身体介助」は腰や腕に負担がかかりますし、夜間の見守りが必要な場合は睡眠不足にもなります。
精神的にも、「これで本当に良いのか」「もっとできることがあるのでは」という自責の気持ちが積み重なりやすいです。また、介護をしている家族との関係が変化することもあり、会話や態度に気をつかいすぎて疲れてしまうこともあります。
こうした疲れは知らず知らずのうちに溜まり、体調不良やうつ状態につながることもあります。「介護疲れ」という言葉があるように、頑張りすぎが健康を奪ってしまう危険性もあるのです。
職場で理解されないビジネスケアラー
ビジネスケアラーの悩みでよく聞かれるのが「職場での理解不足」です。
介護のために急な早退や休暇を取ると、周囲から「また?」という目で見られてしまうことがあります。制度としては介護休暇があっても、実際には取りづらい雰囲気がある職場も少なくありません。
特に、介護は育児と違ってゴールが見えにくく、「いつまで続くのか」が分からないため、長期的な配慮を得にくいという特徴があります。このため、周囲に相談すること自体をためらい、孤立してしまうビジネスケアラーも多いのです。
収入や仕事の先行きが心配なビジネスケアラー
介護と仕事の両立が難しくなれば、勤務時間を減らしたり、時短勤務に切り替えることになります。その結果、収入が減ってしまうことは珍しくありません。
また、昇進やキャリアアップのチャンスを逃すこともあります。「もっと働きたいけれど、介護があるから無理」という状況は、将来の生活設計にも影響します。
特に、長期間にわたる介護では、貯金を取り崩す必要が出てくることもあります。介護にかかる費用(介護サービスや医療費、交通費など)が増える一方で、収入が減るという二重の負担が、ビジネスケアラーを追い込むことになります。
家でも職場でも板ばさみになるビジネスケアラー
ビジネスケアラーは、家庭と職場の両方から期待や責任を背負っています。家では「もっとそばにいてほしい」と求められ、職場では「もっと働いてほしい」と求められる。その両方を同時に満たすのは難しく、精神的な板ばさみになります。
どちらを優先しても、もう一方に対して申し訳ない気持ちが残ります。この感情が積もると、自分を責めてしまったり、何もかもが嫌になってしまうこともあります。
こうした状況は、一人で抱え込むほど深刻になります。信頼できる人や支援サービスに頼ることが、ビジネスケアラーの心を守るためには欠かせません。
ビジネスケアラーとお金・仕事への影響
ビジネスケアラーは、介護のために常に時間と心を分けて使っています。頭の中では仕事のことと介護のことが同時に存在していて、どちらも気になる状態です。
たとえば、会議中でも「今日は訪問介護の時間に間に合うかな」「病院から連絡が来たらどうしよう」といった心配が頭をよぎります。こうした不安は集中力を削ぎ、仕事の効率を下げてしまいます。
また、夜間の介護や見守りで睡眠不足になると、翌日の判断力や作業スピードにも影響が出ます。本人は頑張っているつもりでも、以前のような成果を出せず、自信を失うビジネスケアラーも少なくありません。
会社をやめざるをえないビジネスケアラー
介護と仕事の両立が長期間続くと、ついには「どちらかを選ばなければならない」場面に直面することがあります。
国の統計では、年間およそ10万人が介護を理由に離職しているといわれています。この中には、十分な介護休暇や在宅勤務制度があっても、職場に迷惑をかけたくない、評価が下がるのが怖いという理由で仕事を手放す人も含まれます。
離職は収入の減少だけでなく、再就職の難しさやキャリアの中断という大きな影響をもたらします。特に中高年のビジネスケアラーにとっては、その後の生活基盤を大きく揺るがす選択になってしまいます。
会社の経営に影響を与えるビジネスケアラーの増加
ビジネスケアラーが増えることは、会社にとっても大きな課題です。
欠勤や早退が増えると、人手不足になり、残業や業務のしわ寄せが他の社員にかかります。その結果、職場全体の雰囲気が悪くなったり、別の社員の離職にもつながることがあります。
また、介護と仕事の両立で疲れ切った社員は、生産性が下がり、成果も出にくくなります。こうした状態が続くと、会社の業績や組織の安定にも影響を及ぼします。
一方で、介護両立を支援する制度を整え、働きやすい環境を作った企業では、社員の定着率が上がり、結果として会社の信頼や評判も向上しています。
社会のお金の負担をふやすビジネスケアラーの存在
ビジネスケアラーが離職や時短勤務を選ぶと、社会全体の経済にも影響があります。働く人が減れば税収(国や自治体に入るお金)が減り、介護や医療にかかる公的支出は逆に増えます。
また、介護による離職者が多いと、失業給付や生活支援制度の利用が増え、国の財政負担が重くなります。
一方で、ビジネスケアラーが働き続けられるような環境を整えれば、この負担を減らすことができます。社会全体にとっても、介護と仕事の両立は重要なテーマなのです。
国全体で見たビジネスケアラーによる経済的な損失
試算によると、2030年にはビジネスケアラーによる経済的損失が年間9兆円にのぼる可能性があるといわれています。
この数字には、離職による生産性の低下、税収の減少、社会保障費の増加などが含まれます。9兆円というのは、日本の国家予算の一部に匹敵する規模です。
この損失を防ぐには、企業・国・地域が一体となって支援を広げることが不可欠です。ビジネスケアラー本人が安心して働ける環境をつくることは、本人や家族だけでなく、日本全体の未来にとっても大切なことだといえます。
会社ができるビジネスケアラーのサポート
会社がビジネスケアラーを支えるための基本は、介護休暇や短時間勤務(時短勤務)の制度をしっかり整えることです。
介護休暇は、家族の介護や通院の付き添い、手続きのために仕事を休める制度です。法律でも一定の条件を満たせば取得できるようになっていますが、会社によって日数や使い方が異なります。
また、短時間勤務は、1日の労働時間を短くして介護の時間を確保する制度です。朝だけ、あるいは夕方だけ勤務するなど、柔軟に働けるようにするとビジネスケアラーの負担が大きく減ります。
ただし、制度があっても「取りにくい雰囲気」があると意味がありません。会社が率先して利用しやすい環境をつくることが、制度の本当の価値を生みます。
テレワークや在宅勤務の導入
ビジネスケアラーにとって、通勤時間は大きな負担です。その時間を介護や休息にあてられれば、心にも体にも余裕が生まれます。
テレワークや在宅勤務は、自宅で仕事ができるため、介護との両立がしやすくなります。たとえば、日中に介護サービスの受け入れをしたり、食事や薬の準備をしてから仕事に戻ることが可能です。
もちろん、全ての職種でテレワークができるわけではありませんが、会議や事務作業だけでも在宅でできるようにすれば、ビジネスケアラーにとっては大きな助けになります。
コロナ禍で広まったテレワークの経験を活かし、介護支援の一環として定着させることが重要です。
社内相談窓口や担当者の設置
介護に関する悩みは、職場で話しづらいと感じる人が多いです。「誰に相談したらいいかわからない」という声もあります。
そこで、会社内に介護相談ができる窓口や担当者を置くことは大きな支えになります。担当者が介護制度や地域の支援サービスの情報を持っていれば、ビジネスケアラーは必要な情報を早く得られます。
また、相談を通じて上司や同僚への理解を広げるきっかけにもなります。社内で「話していい雰囲気」があるだけでも、ビジネスケアラーの孤立感は大きく減ります。
同僚や上司の理解を広げる研修
制度や支援があっても、それを受け入れる職場の理解がなければ意味がありません。
上司や同僚がビジネスケアラーの状況を理解していれば、急な休みや時間調整にも柔軟に対応できます。そのためには、介護の基本や現状を知る研修が有効です。
研修では、介護の大変さや支援の方法、制度の利用例などを紹介します。実際のビジネスケアラーの体験談を聞くことで、より現実的な理解が深まります。
こうした研修を通じて、「助け合える職場」の空気をつくることができます。
介護と仕事の両立を支援する社内文化づくり
制度や研修はもちろん大切ですが、最終的には会社全体の文化がビジネスケアラーの働きやすさを左右します。
「介護で休むのは当然のこと」「困ったときはお互い様」という雰囲気があれば、ビジネスケアラーも安心して働けます。
この文化をつくるには、経営層や管理職が率先してメッセージを発信することが重要です。たとえば、社内報や会議で介護支援の大切さを伝えたり、制度を使った社員の事例を共有するなど、小さな積み重ねが文化になります。
働く人が長く安心して活躍できる職場は、結果的に会社の信頼や成長にもつながります。
ビジネスケアラーが使える国や自治体の制度
介護休業制度とは、家族の介護をするために一定期間、仕事を休める制度です。これは法律で定められており、正社員だけでなく、条件を満たせばパートや契約社員も利用できます。
対象となる家族は、親や義理の親、配偶者、子ども、祖父母、兄弟姉妹など幅広く、1人の要介護家族につき通算93日まで休業できます。
この制度を使うときは、会社に書面で申し出をする必要があります。事前に上司や人事と相談しておくと、手続きや引き継ぎがスムーズになります。
また、介護休業中は雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。これは収入の約67%が支給されるもので、経済的な不安を減らすためにも大切な制度です。
介護休暇制度
介護休暇制度は、介護のために1日または半日、時間単位で休める制度です。介護休業が長期間の休みを取る制度なのに対し、介護休暇は短期間や突発的な用事に使えます。
例えば、家族の通院の付き添いや、役所の手続き、介護サービスの契約などに活用できます。
法律では、要介護状態の家族1人につき年間5日、2人以上なら年間10日まで取得できると決められています。
会社によっては、これ以上の日数を認めている場合もありますので、自分の職場の就業規則を確認しておくと安心です。
介護サービスの利用(介護保険制度)
介護保険制度は、介護が必要になったときに、サービスを利用できる仕組みです。40歳になると自動的に介護保険料を支払い始め、65歳以上になると原則として介護保険サービスを使えるようになります。
ビジネスケアラーが介護保険を使うには、まず市区町村の窓口で「要介護認定」の申請をします。調査員が訪問して心身の状態を確認し、その結果に応じて介護度が決まります。
介護度に応じて、訪問介護(ホームヘルパー)、通所介護(デイサービス)、福祉用具のレンタル、住宅改修などのサービスが1割から3割の自己負担で利用できます。
介護保険をうまく活用すれば、ビジネスケアラーの負担は大きく軽くなります。
自治体の独自支援
自治体によっては、国の制度に加えて独自の支援を行っているところがあります。
例えば、介護用品購入の助成、タクシー料金の割引券、介護者へのリフレッシュ事業(温泉利用や交流会)、夜間や休日の緊急訪問サービスなどです。
こうした制度は全国一律ではないため、自分の住んでいる市区町村のホームページや介護相談窓口で最新情報を確認することが大切です。
特に都会よりも地方の自治体の方が、地域密着型のきめ細かい支援をしている場合があります。
専門家による無料相談
国や自治体、社会福祉協議会では、介護について無料で相談できる窓口があります。
ここでは、介護保険の使い方、施設の選び方、費用の見積もり、介護と仕事の両立方法など、幅広い相談ができます。
また、地域包括支援センターという公的機関では、高齢者本人だけでなく、その家族やビジネスケアラーも対象にした総合的な支援を行っています。
「困ったときは一人で抱え込まず、まず相談してみる」ことが、ビジネスケアラーが疲れすぎないための第一歩です。
ビジネスケアラーが日常でできる工夫
ビジネスケアラーは、仕事と介護の予定が日々入り混じります。頭の中だけで管理していると、抜けや漏れが起きたり、余計なストレスを感じてしまいます。
そこで役立つのが、予定を「見える化」することです。紙のカレンダーでもスマホアプリでも構いません。仕事の予定と介護の予定を一緒に書き込み、色分けするだけで全体像が見やすくなります。
たとえば、青は仕事、赤は介護、緑は自分の休息時間と決めて使うと、どこで無理をしているかも一目で分かります。
また、家族や同居人と共有できるカレンダーアプリを使えば、「この日は病院に行くから早めに帰る」といった情報を事前に伝えられ、協力を得やすくなります。
家事や介護の外部サービスを取り入れる
すべてを自分で抱え込む必要はありません。ビジネスケアラーにとって、外部サービスは時間と心の余裕をつくる大切な味方です。
訪問介護(ホームヘルパー)だけでなく、買い物代行、宅配弁当、掃除サービスなども利用できます。費用がかかる場合もありますが、その分、自分の休息や仕事の集中時間を確保できます。
特に「自分でやった方が早い」と思ってしまう家事こそ、意識的に外部に頼むことが効果的です。無理を続けて体調を崩してしまうよりも、早めにサポートを取り入れる方が長期的には良い結果につながります。
家族や周囲に頼る勇気を持つ
ビジネスケアラーは「迷惑をかけたくない」と考えてしまいがちですが、周囲の協力は介護を続けるための重要な資源です。
きょうだいや親せき、友人、近所の人など、お願いできる人を具体的に書き出しておくと、いざというときに頼みやすくなります。
頼む内容は細かくても構いません。「病院に付き添ってほしい」「薬を取りに行ってほしい」「一時間だけ見ていてほしい」など、小さなお願いの積み重ねがビジネスケアラーの負担を大きく減らします。
助けを求めることは弱さではなく、むしろ介護を続けるための強さです。
自分の休息時間をしっかり取る
介護と仕事を続けていると、自分のことは後回しになりがちです。しかし、ビジネスケアラー自身が元気でいなければ、介護も長く続けられません。
1日の中で短くても「自分だけの時間」を確保するよう心がけましょう。
例えば、朝のコーヒータイム、夜寝る前の読書、散歩やストレッチなど、自分をリセットできる時間を意識的に作ります。
また、睡眠は心と体の回復に欠かせません。夜間の介護で眠れない場合は、昼間に短時間でも休憩を取る工夫をしましょう。
気持ちを共有できる場を持つ
ビジネスケアラーは、孤独になりやすい立場です。職場でも家庭でも、介護の大変さを分かってくれる人が少ないと、気持ちを抱え込みすぎてしまいます。
地域の介護者会や、オンラインのビジネスケアラー向けコミュニティに参加すると、同じ立場の人と悩みや工夫を共有できます。
「自分だけじゃない」と感じられることは、精神的な支えになります。愚痴をこぼす場があるだけでも、心は軽くなります。
情報交換から新しい介護サービスや制度を知ることもあり、それが日常の負担を減らすきっかけになることもあります。
ビジネスケアラーが心と体を守る方法
ビジネスケアラーは、介護も仕事も「きちんとやらなければ」と思うあまり、自分に過剰な負担をかけてしまいがちです。
しかし、無理をしすぎると体も心も壊れてしまい、介護を続けられなくなります。
「今日はここまでできれば十分」と、自分の中で優先順位を決めることが大切です。
完璧を目指さず、「できない日があってもいい」と自分を許す気持ちを持つことが、長く介護を続けるための第一歩です。
健康診断や検査を受ける
介護を続けていると、自分の健康管理はつい後回しになります。
ですが、ビジネスケアラーが健康でなければ、介護も仕事もできません。年に一度の健康診断は必ず受け、必要な検査や治療は先延ばしにしないことが大切です。
特に、腰痛や肩こり、睡眠不足などは介護による負担で悪化しやすいので、早めに医師に相談しましょう。
小さな不調のうちに対処すれば、大きな病気になるのを防げます。
ストレスをためこまない
介護中は、思い通りにいかないことや、相手とのすれ違いが増えます。そのたびに我慢していると、ストレスはどんどん蓄積します。
ストレス発散の方法は人によって違いますが、趣味や運動、好きな音楽を聴くなど、短時間でできることを持っておくと役立ちます。
また、誰かに話すことも大きな効果があります。ビジネスケアラー同士の交流会やオンラインコミュニティで、日々の悩みや愚痴を共有することは、心の負担を軽くします。
睡眠と食事を大事にする
睡眠と食事は、心と体を守る基本です。
介護のために夜中に起きることがあっても、昼間に短い昼寝をするなど、休養を補う工夫をしましょう。
食事も、忙しいからといって菓子パンやカップ麺ばかりになると、体調を崩しやすくなります。
簡単に作れる野菜スープや冷凍の健康食材などを活用し、少しでもバランスの良い食事を心がけることが大切です。
専門家に頼る
ビジネスケアラーがすべてを抱え込む必要はありません。心の不調を感じたら、心理士やカウンセラーなどの専門家に相談することも有効です。
また、介護に関してはケアマネジャーや地域包括支援センターが強い味方になります。介護の方法や制度の使い方、サービスの調整など、専門的な視点でサポートしてくれます。
「こんなこと相談していいのかな」と思うことでも、早めに聞くことで解決策が見つかることが多いです。
専門家に頼ることは、弱さではなく、自分と家族を守るための賢い選択です。
ビジネスケアラーと家族・周囲の関係
ビジネスケアラーにとって、家族との役割分担はとても大切です。介護は長期戦になることが多く、ひとりで抱え込むと心も体も疲れ果ててしまいます。
例えば、兄弟姉妹で「病院の付き添いは長男」「書類の手続きは次女」「日用品の買い出しは母」などと担当を分けるだけでも、負担はぐっと減ります。
もし家族が遠方に住んでいて直接手伝えない場合でも、「月に一度の帰省」や「費用の一部負担」など、できる形で関わってもらうことが可能です。
分担を決めるときは、誰かが一方的に我慢するのではなく、それぞれの仕事や生活事情を考慮しながら話し合うことが重要です。
周囲に状況を伝える
介護は見えにくいものです。職場や近所の人に事情を話していなければ、理解や協力を得るのは難しくなります。
ビジネスケアラーは、「今こういう状況で、こういうサポートがあると助かる」という情報をシンプルに伝えることで、周囲からの手助けを受けやすくなります。
もちろん、すべてを詳細に話す必要はありません。ポイントを絞って伝えるだけでも、「急な休みがあるかもしれない」という前提を持ってもらえます。
こうした小さな情報共有が、後々の誤解や摩擦を防ぎます。
感謝の気持ちを忘れない
介護を手伝ってくれる家族や友人、職場の同僚には、感謝の気持ちを言葉で伝えることが大切です。
「ありがとう」の一言は、相手にとって大きな励みになります。介護は終わりが見えにくいだけに、支える側も疲れてしまうことがあります。
お礼の言葉やちょっとしたお菓子など、感謝を形にして伝えることで、支援を長く続けてもらいやすくなります。
感謝のやり取りは、介護をめぐる人間関係を円滑に保つための潤滑油になります。
トラブルが起きたときの話し合い方
介護中は、家族間で意見の食い違いや不満が生じることがあります。たとえば、「もっと頻繁に来てほしい」「お金の負担が偏っている」といった問題です。
こうしたときは、感情的になる前に事実を整理し、冷静に話し合うことが大切です。
また、第三者(ケアマネジャーや地域包括支援センター職員)を交えて話すと、感情的にならずに解決策を探せる場合があります。
トラブルを避けるためにも、日頃から情報を共有し、相手の立場や事情を理解する努力が必要です。
信頼関係を築くための工夫
ビジネスケアラーが長く介護を続けるには、家族や周囲との信頼関係が不可欠です。
信頼関係は、一度築くと介護がスムーズになり、いざというときの支援も得やすくなります。
そのためには、「約束を守る」「感情的にならない」「相手の意見も尊重する」といった基本的なコミュニケーションが大事です。
また、支援してくれる人の負担も気にかけ、「無理のない範囲でお願いする」ことも信頼を保つ秘訣です。
ビジネスケアラーに向けた社会の動き
日本では、高齢化の進行に合わせて、ビジネスケアラーを支えるための法律や制度が少しずつ見直されています。
その中でも大きな動きの一つが、介護休業制度の拡充です。これにより、家族を介護するためにまとまった期間の休みを取れる人が増えました。
さらに、短時間勤務や柔軟な働き方を認める方向への労働法の改正も進んでいます。これらの改正は、単に休みを与えるだけでなく、ビジネスケアラーが「職場に居続けられる環境」を整えることを目的としています。
制度は年々変わることが多いため、最新情報を知っておくことがとても大切です。
企業の取り組み事例
多くの企業が、ビジネスケアラー支援に積極的に動き始めています。
例えば、大手メーカーでは、介護休暇を有給で取得できる制度を導入しました。これにより、収入への不安から休暇取得をためらっていた社員も安心して利用できるようになりました。
また、IT企業では、テレワークやフレックスタイム制度を組み合わせ、介護中の社員が通院や在宅介護の合間に仕事を進められる環境を作っています。
こうした事例は、「介護があっても働き続けられる職場」を作るための良いモデルとなっています。
地域社会でのサポート
国や企業だけでなく、地域社会でもビジネスケアラーを支える動きが広がっています。
例えば、自治体やNPOが運営する「介護者カフェ」では、介護中の人同士が気軽に集まり、悩みや情報を交換できます。
また、ボランティア団体が一時的に介護を代わる「レスパイトサービス(休息支援)」も増えてきました。
こうした地域の支援は、制度ではカバーしきれない細やかな助けを提供してくれます。
働き方改革との連動
近年の「働き方改革」は、単なる長時間労働の是正だけでなく、介護との両立にもつながっています。
柔軟な勤務制度や、場所にとらわれない働き方が広まることで、ビジネスケアラーも働き続けやすくなりました。
特に、テレワークやモバイルワークの普及は、通勤時間の削減だけでなく、介護中の急な対応にも役立っています。
働き方改革の流れに介護支援を組み込むことで、ビジネスケアラーの負担軽減がさらに進む可能性があります。
メディアや世論の関心の高まり
以前はあまり注目されていなかったビジネスケアラーですが、最近ではテレビや新聞、インターネットメディアで特集が組まれることが増えました。
有名人が自らの介護経験を語ることで、一般の人々にも問題の深刻さが伝わるようになっています。
世論の関心が高まることで、国や企業が本格的に取り組まざるを得ない環境が整いつつあります。
こうした社会的な後押しは、制度の改善や新しい支援サービスの誕生につながります。
数字で見るビジネスケアラーの今
働きながら家族の介護をしている人を「ビジネスケアラー」と呼びます。
これは特別な肩書きではなく、仕事をしながら家族の食事や入浴、通院の付き添い、書類の手続き、介護サービスの手配など、日常的な支えをしているすべての人にあてはまります。
ビジネスケアラーはどのくらいいるのか
2022年の調査によると、日本のビジネスケアラーは約364万人。働く人全体の5.4%、つまり20〜30人に1人が該当します。
2023年の推計では365万人ともされ、介護を必要とする家族を持つ人のうち、およそ58%がビジネスケアラーです。
これは「珍しい存在」ではなく、私たちの周りに普通にいる立場だということを示しています。
年代別で見ると
特に多いのは40〜50代。この年代だけで212万人以上、全体の58%を占めます。
この時期は仕事の責任が重く、家庭では子育ても終わらない場合が多い年代です。そこに親や義父母の介護が重なることで、日々の負担は想像以上になります。
将来の予測
今後もビジネスケアラーの数は増えると予測されています。
2030年には438万人に達する可能性があり、さらに別の推計では、家族介護者833万人のうち、約4割(318万人)がビジネスケアラーになると見込まれています。
この増加傾向は、少子高齢化の進行と共働き世帯の増加が大きな背景です。
経済的な影響
ビジネスケアラーの増加は、個人や家庭だけでなく、社会全体にも影響します。
介護によって仕事を休む・離職する・働く時間や集中力が減ることなどから、2030年には約9兆円の経済損失が出る可能性があると試算されています。
これは一企業や一地域の問題ではなく、国全体の課題であることがわかります。
企業が感じる課題
多くの企業もビジネスケアラーの問題を認識しています。調査では約7割の企業が「支援に課題がある」と回答。
その理由としては、
- 介護に関する情報不足
- 社内制度が整っていない
- 社員の介護事情を把握できていない
などが挙げられています。
介護を理由に優秀な人材が離職することは、企業にとっても大きな損失です。そのため、制度整備や働き方の柔軟化を進める企業が少しずつ増えています。
数字から見えてくること
これらの数字は、ビジネスケアラーが特別な存在ではなく、社会のあちこちにいるという現実を示しています。
同時に、その負担の大きさや、今後の増加、そして経済・企業への影響の深刻さも明らかにしています。
「介護が始まってから考える」のでは遅く、社会全体での準備と支え合いが必要です。
国や企業、地域、そして私たち一人ひとりがこの問題を理解し、できることから行動していくことが求められています。
企業の支援事例と、ビジネスケアラーができる準備
日本では、高齢化が急速に進み、仕事と介護を同時に抱える「ビジネスケアラー」が増えています。
かつては家庭内で介護を担う人が専業主婦である場合も多くありましたが、共働き世帯が増えた現代では、働きながら家族を支える人が当たり前のように存在しています。
しかし、その負担は大きく、仕事を続けることをあきらめてしまう人も少なくありません。
そうした中で、企業が従業員を支える取り組みを始めたり、ビジネスケアラー自身が事前に準備を整えることの重要性が高まっています。
企業が取り組む支援事例
1. 介護休暇制度を法定以上に整備したA社
ある大手企業(A社)では、法律で定められた介護休暇の日数を大きく上回る制度を導入しました。
さらに、有給で取得できるようにし、経済的な不安から休暇取得をためらう社員を減らしました。
結果として、介護を理由にした離職が大きく減少し、「制度を使っても大丈夫」という安心感が社内に広まりました。
2. 上司や経営層の意識改革を進めた中小企業
経済産業省が2024年3月に発表した「経営者向けガイドライン」を参考に、単なる制度導入だけでなく、管理職や経営層の理解を深める研修を実施した事例もあります。
この会社では、「介護は個人の問題」という考え方から、「会社全体で支えるべき課題」という意識に変わり、社員が介護の事情を話しやすくなりました。
3. 制度と風土づくりを両立させた企業
介護支援の制度は整っていても、職場の空気が「使いにくい」と感じさせると意味がありません。
そこで、ある企業では定期的に介護に関する社内セミナーや情報共有の場を作り、介護の話題が日常的に出やすい雰囲気をつくりました。
この「相談してもいい空気」が、制度利用を後押ししています。
これらの事例からわかるのは、制度そのものよりも、「使いやすい環境づくり」が成功のカギであるということです。
ビジネスケアラーができる準備
1. 会社の制度を把握する
まず、自分の勤務先にどんな介護支援制度があるのかを知ることが大切です。介護休業、介護休暇、短時間勤務、在宅勤務など、利用できる選択肢は会社によって異なります。
事前に就業規則や社内ポータルを確認しておけば、必要なときにすぐ動けます。
2. 相談先を決めておく
上司、人事部、社内相談窓口など、いざというときに話を聞いてくれる相手を決めておくと安心です。
介護が始まってから探すより、日頃から関係を築いておくことで、スムーズに相談できます。
3. 介護状況を整理しておく
「どの時間帯に支援が必要か」「外部サービスを使えるか」「他の家族の協力はどれくらいあるか」など、自分の状況を紙にまとめておくと、会社への説明や制度申請がしやすくなります。
4. 話す練習をしておく
介護の事情を職場に伝えるのは、意外と勇気が要ります。家族や信頼できる友人と練習し、要点を整理しておけば、本番でも落ち着いて話せます。
5. 同じ立場の人とつながる
介護を経験している人の話は、具体的で役立ちます。ネット上のコミュニティや地域の「介護者カフェ」などで交流することで、情報や励ましを得られます。
制度と準備の両輪で支える
企業の制度整備と、ビジネスケアラー本人の事前準備は、どちらが欠けても十分な支援にはなりません。
制度を作る側と使う側の両方が、同じ方向を向くことで、働きながら介護を続けられる環境は整っていきます。
介護は突然始まることも多く、準備をしていないと対応に追われてしまいます。
だからこそ、「まだ先のこと」と思わず、制度の確認や相談相手の確保など、できる準備を少しずつ進めておくことが、自分と家族を守ることにつながります。
地域や専門サービスを活用して、ビジネスケアラーの負担を減らす
ビジネスケアラーにとって、介護をすべて自分だけで抱えるのはとても大変なことです。
長期にわたる介護は、体力や精神力だけでなく、仕事への集中力にも影響します。だからこそ、「自分でできること」と「人に頼ること」のバランスを取ることが大切です。
ここでは、地域や専門のサービスを上手に活用する方法をご紹介します。
地域包括支援センターを頼る
全国の市区町村には、地域包括支援センターという介護の相談窓口があります。
ここでは、介護保険の申請方法、利用できるサービス、家族の負担を減らす方法などを無料で相談できます。
ケアマネジャー(介護支援専門員)が在籍しているため、介護の計画を一緒に立ててもらうことも可能です。
ビジネスケアラーの場合、勤務時間や通勤距離を考慮したサービス選びが重要になるので、事情を詳しく話すと、より適した提案を受けられます。
介護保険サービスを活用する
介護保険は、40歳以上の人が保険料を納めることで利用できる制度です。要介護認定を受けると、訪問介護(ホームヘルパー)、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所)など、費用の一部が保険でまかなわれます。
例えば、日中仕事に出ている間はデイサービスを利用し、休日は家族で介護する、といった組み合わせも可能です。
「お金がかかるから利用しない」と思う方も多いですが、自己負担は1〜3割程度で済むため、実際には思ったより経済的です。
民間の有料サービスを組み合わせる
介護保険でまかなえない部分は、民間サービスを利用する方法もあります。
たとえば、家事代行や買い物代行、通院付き添いなどは、介護保険の対象外になる場合が多いですが、民間の介護事業者やシルバー人材センターを通じて依頼できます。
また、アプリやウェブサービスを使って単発で依頼できる「スポット介護サービス」も増えています。
ビジネスケアラーの場合、突発的な残業や出張にも対応できる柔軟さが魅力です。
地域のボランティアやサークルを活用する
自治体や社会福祉協議会では、地域の高齢者を支えるボランティア活動があります。
例えば、見守り訪問、話し相手、ちょっとした家事の手伝いなどをしてくれるグループです。
また、介護経験者同士が集まって情報交換をする「介護者カフェ」や、「認知症カフェ」もあります。
こうした場は、同じ立場の人の気持ちや工夫を知るきっかけになり、孤立感を減らしてくれます。
専門職による相談とサポート
介護は、医療や法律、福祉などさまざまな知識が必要になる場面があります。
- 弁護士や司法書士:成年後見制度や財産管理
- 医師や看護師:在宅医療やリハビリ計画
- 社会保険労務士:介護休業や給付金の申請
こうした専門職に相談することで、将来のトラブルを防ぎ、安心して介護を続けられます。
最近は、自治体の無料相談やオンライン相談サービスも充実しており、時間や場所を選ばず利用できます。
まとめ
多くのビジネスケアラーが、「家族だから自分がやらなければ」と思い、支援を受けることをためらいます。
しかし、介護は長期にわたるため、一人で頑張り続けることは現実的ではありません。
地域や専門サービスを上手に使うことは、家族への愛情を減らすどころか、介護を長く続けるために必要な方法です。
頼ることは決して弱さではなく、「続けるための力」です。

