「熨斗(のし)を付ける」意味は?言い換えは?ビジネスでも使える?失礼ではない使い方例文

「熨斗(のし)を付ける」意味は?言い換えは?ビジネスでも使える?失礼ではない使い方例文

「熨斗を付ける(のしをつける)」という慣用句は、単に贈り物として物品を渡す際に添えられる装飾や飾りの「熨斗(のし)」の行為を表しているわけではありません。この言葉は慣用的に「もう要らないから、むしろ感謝の気持ちまで込めて差し上げますよ」といった、やや皮肉や嫌味のこもった意味で使われる場合が多いものです。つまり、相手に対して「どうぞご自由に持っていってください。ありがたく差し上げます」と、丁寧なようで突き放すような感情を含んで使われるのが一般的です。

たとえば、ある物や責任、人物などを手放したいとき、「熨斗を付けてでも差し上げたい」という表現がされます。これはその対象が、手元に置いておきたくない、または迷惑であるといったニュアンスを含んでおり、「どうぞ持って行ってください」と強調するために、飾りまで付けて渡す様子を比喩的に表しているのです。

英語でこれを直訳するのは難しいですが、近いニュアンスの表現には「You can have it with my compliments.」や「You’re more than welcome to take it off my hands.」といった言い方があげられます。どちらも「喜んで差し上げますよ」という意味合いを含みつつ、皮肉や嫌味がこもる文脈で使うことができます。

このように、「熨斗を付ける」という慣用句は、表面上は丁寧で礼儀正しく見える一方で、実際には強い拒否感や迷惑さを暗示する言い回しとして日常会話やビジネスでも目にする機会がある言葉です。相手との関係性や場の雰囲気によっては誤解やトラブルを生む可能性もあるため、使用には一定の注意が必要です。

「熨斗を付ける」の一般的な使い方と英語で言うと

・彼にはあの古いパソコンを熨斗を付けてでも譲りたいくらいだ。もう処分に困っていたからちょうどよかったよ。
(I’d gladly give him that old computer with a bow on it. I was struggling to get rid of it anyway.)

・その仕事は本当に大変だから、誰かがやりたいと言ってくれたら熨斗を付けて差し上げたい気分です。
(The job is so tough that if someone wants to take it, I’d hand it over with all my best wishes.)

・あの迷惑な案件、ついに他部署が引き取ってくれることになった。熨斗を付けて送り出したよ。
(That troublesome case was finally taken over by another department. I happily handed it over like a gift.)

・彼女が転職するって聞いたとき、正直、熨斗を付けて送り出したいほどだったよ。
(When I heard she was quitting, honestly, I felt like sending her off with a fancy ribbon.)

・壊れかけたコピー機を新しいのに替えてくれるなんて!それはもう熨斗を付けてでも持って行ってもらわないと。
(They’re replacing the broken copier with a new one? Well, I’ll gift-wrap the old one for them!)

似ている言い方

・手放したいくらい
・ありがた迷惑
・押しつける
・厄介払いする
・さっさと渡したい

「熨斗を付ける」のビジネスで使用する場面の例文と英語

「熨斗を付ける」という言葉は、ビジネスにおいても非公式な会話や雑談の中で使われることがあります。特に、自分の部下や後輩、または同僚との間で、あまり関わりたくない案件や人物に対しての感情を共有する際に用いられるケースが多いです。ただし、表現としてはかなり強く、聞き手によっては不快に感じる可能性があるため、公の場や文書では控えるのが望ましいです。

・このクレーム対応、他社が引き受けてくれるなら、熨斗を付けてお渡ししたいくらいです。
(If another company is willing to handle this complaint, I’d happily hand it over with a ribbon.)

・あのトラブルメーカーが異動するらしいよ。熨斗を付けて送り出す準備しとくよ。
(That troublemaker is being transferred? I’ll be ready to send him off with a big bow.)

・部長があの企画を引き受けてくれるって。正直、熨斗を付けてでもお願いしたい。
(The director is taking over that project? Honestly, I’d be glad to hand it over with wrapping paper.)

・このシステムの不具合、外注先に引き取ってもらえるなら熨斗を付けてでもお願いしたいです。
(If the contractor can take care of this system error, I’d gratefully pass it along with a ribbon.)

・例の調整業務、別部署に移すって聞いて、熨斗を付けてでも渡したい気持ちになりました。
(I heard the coordination task is being moved to another department. I couldn’t be more relieved to hand it over.)

「熨斗を付ける」は目上の方にそのまま使ってよい?

「熨斗を付ける」という表現は、表面上は丁寧な印象を与える言い方ではありますが、その実、かなり強い否定的な意味や皮肉を含んでいるため、目上の方や取引先など、敬意を払うべき相手に対して使用するには注意が必要です。この言い方には「迷惑だから早く持っていってくれ」というような強い拒絶や厄介払いの感情が含まれている場合が多く、受け取り手によっては非常に不快に感じられてしまう可能性があります。

たとえば、上司や取引先との会話で「この案件、熨斗を付けてでもお渡ししたいです」と言えば、相手によっては「この案件が面倒で厄介で、できるだけ早く手放したいという不満があるのだな」と受け取られてしまい、信頼関係にひびが入ることもあります。特に文書やメールなど記録に残る形で使用すると、後々まで印象が悪く残ってしまう危険性もあります。

・感情的な否定の意図が強く伝わってしまう
・相手に対する敬意を欠いた印象を与える
・上から目線だと誤解される可能性がある
・関係性を損なうリスクがある
・皮肉として捉えられやすい

熨斗を付けるの失礼がない言い換え

・お引き受けいただけるのであれば、大変助かります。何卒よろしくお願いいたします。
・もしお任せいただけるようでしたら、安心してお願いできると存じます。
・お力添えをいただけるとのことで、心より感謝申し上げます。
・ご対応いただけるとのこと、私どもも大変ありがたく思っております。
・お願いできることになり、大変心強く感じております。

適した書き出しの挨拶と締めの挨拶は?

書き出し

・日頃より多大なるご尽力を賜り、心より御礼申し上げます。本日は一件、お力添えをお願い申し上げたくご連絡いたしました。
・平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。ご多忙中とは存じますが、下記の件にてご相談申し上げたく存じます。
・いつもご丁寧なお取り計らいをいただき、誠にありがとうございます。早速ですが、以下の件についてご連絡差し上げます。
・お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇です。さて、このたび業務に関して一点、ご確認いただきたく存じます。
・日頃より温かいご支援を賜りまして、厚く御礼申し上げます。本日は、業務の引継ぎに関しましてご報告させていただきます。

締めの挨拶

・何かご不明点等ございましたら、どうかご遠慮なくお申しつけくださいませ。今後とも変わらぬご指導のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
・末筆ながら、貴社のますますのご発展と皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
・以上、ご多用のところ恐縮ではございますが、何卒ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
・今後とも変わらぬご高配を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。何卒、よろしくお願い申し上げます。
・本件に関しまして、ご不明点がございましたらいつでもご連絡いただけますと幸いでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(以下、次のメッセージに続きます)

注意する状況・場面は?

「熨斗を付ける」という言い回しは、感情や意図を強く表現する言葉であるため、使い方を間違えると相手に対して不快感を与える可能性が高いものです。特に対人関係の繊細さが求められる場面では、その言葉の裏に込められた意味が大きく影響します。たとえば、日常会話で親しい友人とのやりとりならば、ユーモアや軽口として受け取られることもありますが、職場の上司や社外の取引先など、一定の礼節が求められる間柄では、相手を軽んじた印象を与えてしまいかねません。

「熨斗を付ける」は「厄介なものを、感謝までつけて差し出す」というニュアンスがあるため、たとえ言葉としては丁寧であっても、含意される否定的な感情が強いため、冗談のつもりでも聞き手によっては「迷惑なものを押しつけられた」「自分のことをそう思っていたのか」と誤解されることがあります。

また、メールや会議の席、または報告書などの書面上で使うと、その意味合いが記録として残ることになります。これが後になって問題となる可能性も否定できません。さらに、世代や地域によっては、この言葉の皮肉の含みが伝わりづらく、かえって混乱を招く場合もあるのです。

・職場の目上の人に対して使うと無礼と受け取られる可能性がある
・冗談が通じにくい会話や文書では不適切と判断されやすい
・相手に対する本心を疑われ、信頼関係に影響が出る恐れがある
・書面で使用すると誤解が生じやすく、後々問題になる可能性がある
・聞き手の解釈次第で嫌味・批判・押しつけと感じ取られてしまう

細心の注意払った言い方

・こちらの件につきましては、〇〇様のお力をお借りできれば大変心強く思います。何卒お引き受けいただけましたら幸いに存じます。
・本件について、もしお手をお貸しいただけるようでしたら、私どもとしても安心してお願いできると考えております。
・ご多忙の折、大変恐縮ではございますが、こちらの業務についてご対応いただけましたら、非常にありがたく思います。
・案件の引き継ぎについてご相談申し上げます。〇〇様にお任せできることを心より願っております。
・〇〇に関する対応をお願いする形となりますが、ご配慮いただけましたら大変助かります。何卒よろしくお願い申し上げます。

熨斗を付けるのまとめ・注意点

「熨斗を付ける」という言葉は、一見すると丁寧で控えめな印象を与えるように感じるかもしれませんが、その実、相手に対して強い否定や拒否の意思、または迷惑さを間接的に伝えるものであるという点をしっかり理解しておくことが重要です。皮肉や嫌味を含む表現であるため、軽い冗談として用いたつもりでも、受け取り手の気持ちや立場によっては非常に不快に感じられてしまう可能性があるのです。

特に仕事の場や、上下関係のはっきりした関係性の中では、不用意な使用が大きな誤解を招くことになります。上司に対して使用すれば敬意を欠いたと受け止められる恐れがあり、取引先に対して使用すれば信頼を損ねてしまう危険も否めません。また、口頭での会話であればまだしも、文書やメールなど記録が残る媒体での使用は、後々のトラブルに発展しかねないため、特に慎重に扱うべき言葉と言えます。

このように、「熨斗を付ける」という言い回しには、相手に物や責任を喜んで押しつけるという皮肉めいた気持ちが含まれており、それが場面や相手によっては非常に不適切な言葉となります。言葉の持つ背景や文脈を理解し、場にふさわしい言い回しに置き換える努力をすることが、円滑な人間関係や信頼の維持にとって欠かせない心配りと言えるでしょう。ビジネスにおいても私生活においても、相手の気持ちを大切にするためには、言葉の選び方一つで印象が大きく変わるということを常に意識しておく必要があります。