氷河期世代だけが給料が上がらない理由・新入社員の方が高い?理由は?|団塊ジュニア問題

氷河期世代の給与問題:なぜ昇給が停滞し、新入社員に劣る状況が生まれるのか

「氷河期世代」という言葉を耳にするたびに、多くの社会人が複雑な感情を抱くのではないでしょうか。特に、自身がその世代に属している方々にとっては、給与がなかなか上がらない現状や、時には新入社員の給与が自分たちを上回るという不条理な現実に直面し、納得できない気持ちを抱えているかもしれません。これは単なる個人の努力不足で片付けられる問題ではありません。日本経済の歴史的背景、企業の採用戦略、そして世代間の労働市場の変化が複雑に絡み合って生まれた、構造的な問題だと理解する必要があります。


氷河期世代とは何か? その経済背景を理解する

まず、「氷河期世代」がどのような時代に社会に出たのかを振り返りましょう。一般的に、氷河期世代とは1970年代前半から1980年代半ばまでに生まれた世代を指し、1990年代半ばから2000年代前半にかけて就職活動を行った世代と重なります。この時期の日本は、バブル経済の崩壊後、長期にわたる経済停滞期、いわゆる「失われた10年」「失われた20年」の真っただ中にありました。

多くの企業が業績悪化に苦しみ、新卒採用を大幅に抑制しました。正社員としての職を得ることが極めて困難になり、非正規雇用を選択せざるを得ない若者が増加したのです。この時期に社会に出た人々は、十分なキャリア形成の機会を得られないまま、不安定な雇用環境に置かれることが少なくありませんでした。これが、氷河期世代の給与問題の根源にあると言えるでしょう。


氷河期世代の給与が上がりにくい構造的な要因

なぜ氷河期世代の給与は上がりにくいのでしょうか。個人の能力や努力とは別の部分で、いくつかの構造的な要因が存在します。

新卒採用の抑制と正規雇用の機会損失

氷河期世代が就職活動を行った時期は、企業が採用数を極端に絞り込んだ時代でした。これにより、多くの優秀な人材が希望する企業に就職できず、やむなく非正規雇用を選んだり、自身の専門とは異なる分野でキャリアをスタートさせたりするケースが頻発しました。

新卒時に正規雇用で安定したキャリアをスタートできなかったことは、その後の昇給に大きく影響します。日本では依然として、新卒一括採用と年功序列型の賃金体系が根強く残っており、キャリアの初期段階での正規雇用の有無が、その後の賃金カーブを大きく左右するからです。

年功序列賃金体系の変容

日本の伝統的な年功序列賃金体系は、勤続年数に応じて給与が上昇していく仕組みでした。しかし、バブル崩壊後の経済情勢の中で、多くの企業がこの仕組みを維持することが難しくなりました。成果主義や職務給への移行が進められましたが、その過渡期にあった氷河期世代は、年功序列の恩恵を十分に受けられず、かといって成果主義の恩恵も受けきれないという、いわば「制度の谷間」に置かれた側面があります。

特に、一度賃金カーブが低く設定されてしまうと、その後の巻き返しが難しいのが現実です。企業が固定費である人件費を抑える傾向にあったため、一度低い水準で採用された人材の給与を大幅に引き上げるインセンティブが働きにくかったと言えるでしょう。

キャリアパスの制約とスキルアップの機会

新卒時に希望する企業や職種に就けなかった場合、その後のキャリアパスも制約されることがあります。本来であれば、入社後にOJT(On-the-Job Training)や研修を通じて専門性を高めていく機会が豊富に与えられますが、非正規雇用の場合や、正規雇用であっても人員削減の対象となりやすい環境では、こうした機会が限られていました。

結果として、十分なスキルアップの機会を得られず、市場価値を高めにくい状況が生まれたと考えられます。これは、現在の転職市場においても、自身の市場価値を正当に評価してもらいにくい要因の一つとなっている可能性があります。

企業の人件費抑制策

経済のグローバル化や競争激化の中で、多くの企業は常にコスト削減を意識しています。人件費は企業にとって大きな固定費であり、景気後退期にはまず削減の対象となりやすい項目です。氷河期世代がキャリアを積む過程で、企業は人件費抑制のために昇給を抑制したり、リストラを行ったりするケースが多々ありました。

特に、バブル期に採用された高給の先輩社員の存在も、企業が若手や中堅層の給与を抑えざるを得ない要因の一つであったと指摘する声もあります。これにより、氷河期世代は、上の世代のしわ寄せを受ける形で、給与水準が低く抑えられてきた側面があると言えるでしょう。


 

新入社員の給与が氷河期世代を上回る現象の背景

最近では、一部の企業で新入社員の初任給が、勤続年数の長い氷河期世代の社員の給与を上回る、という逆転現象が見られるようになりました。これは、社会人として長く働いてきた氷河期世代の方々にとっては、特に納得しがたい状況ではないでしょうか。この現象には、いくつかの理由が考えられます。

労働市場の変化と人材獲得競争の激化

近年、少子高齢化の進展により、若年層の労働力人口は減少傾向にあります。特にIT分野やグローバル展開を進める企業では、優秀な若手人材の確保が喫緊の課題となっています。このため、企業は新卒採用において、競合他社に負けないよう初任給を引き上げる傾向にあります。

かつてのように「企業が選ぶ側」という立場から、「企業も選ばれる側」という意識が強くなり、特に優秀な学生を獲得するためには、魅力的な報酬を提示せざるを得ない状況が生まれているのです。

採用戦略の変化とジョブ型雇用の拡大

終身雇用や年功序列といった日本の伝統的な雇用慣行が変化しつつあります。特に、職務内容や成果に応じて報酬を決定する「ジョブ型雇用」への移行が進む企業が増えてきました。これにより、新卒であっても特定のスキルや専門性を持つ人材に対しては、高い報酬を提示するケースが増えています。

一方で、年功序列の恩恵を受けにくい氷河期世代は、長年の勤続によって得られるはずだった給与上昇が限定的であるため、特定のスキルを持たない限り、新入社員の給与水準に追いつけない、あるいは追い越される状況が生じやすいと言えるでしょう。

企業における人件費の「最適化」

企業は常に人件費の「最適化」を図っています。高騰するベテラン層の人件費を抑制しつつ、将来の企業を担う若手層には惜しみなく投資するという戦略を取る企業も少なくありません。

新入社員の初任給を引き上げる一方で、既存社員、特に氷河期世代のような中堅層の給与上昇を抑制することで、全体のパイを調整している可能性も考えられます。これは、企業が短期的な収益性や競争力を重視した結果とも言えますが、既存社員のモチベーション低下を招くリスクも孕んでいます。

 世代間賃金格差の是正とインフレの影響

政府は、長年のデフレ経済からの脱却と、世代間の賃金格差是正を目標として掲げています。経済界に対しても、賃上げを強く求めており、特に若い世代の賃金上昇を後押しする動きが見られます。

また、近年の物価上昇(インフレ)も、新入社員の初任給引き上げの要因となっています。生活費が増加する中で、企業は優秀な人材を確保するためには、より高い初任給を提示せざるを得ない状況にあります。これらの要因が複合的に作用し、新入社員の給与が氷河期世代を上回るという、一見すると不公平に見える現象を引き起こしているのです。


 

氷河期世代が現状を打破するために

氷河期世代の私たちはどのようにして自身のキャリアと給与を向上させていくべきでしょうか。個人でできることには限界があるのも事実ですが、それでも現状を打開するための方法は存在します。

スキルの再構築とリスキリング

現在の労働市場で求められるスキルは常に変化しています。特にデジタル技術の進化は目覚ましく、新たなスキルを習得することは自身の市場価値を高める上で不可欠です。

例えば、データ分析、AI、プログラミング、クラウド技術など、需要が高い分野のスキルを積極的に学ぶ「リスキリング」は有効な手段です。企業によっては、社員のリスキリングを支援する制度を導入している場合もありますので、積極的に活用を検討すべきです。新しいスキルを身につけることで、社内での役割拡大や、より良い条件での転職の可能性が広がります。

キャリアの棚卸しと自己分析

これまでのキャリアで培ってきた経験やスキルを改めて棚卸しし、自身の強みや弱みを客観的に分析することも重要です。自分がどのような価値を企業に提供できるのかを明確にすることで、社内での昇進・昇給交渉や、転職活動において有利な立場を築くことができます。

特に、氷河期世代は様々な困難を乗り越えてきた経験があり、高いレジリエンス(回復力)や問題解決能力を備えていることが多いはずです。そうした「ソフトスキル」も自身の強みとして認識し、アピールしていくべきでしょう。

ネットワークの構築と情報収集

社内外の多様な人々と積極的に交流し、ネットワークを構築することは、新たなキャリア機会や情報を得る上で非常に有効です。業界のトレンドや求人情報、企業の採用動向など、インターネットだけでは得られない生きた情報を手に入れることができます。

また、同じ氷河期世代の仲間と情報交換をすることで、共通の課題に対する解決策を模索したり、精神的な支えを得たりすることもできます。孤立せずに、積極的に人と繋がりを持つことが大切です。

副業・兼業による収入源の多様化

もし本業での給与上昇が難しい状況であれば、副業や兼業を検討することも一つの選択肢です。自身のスキルや経験を活かして、フリーランスとして活動したり、別の企業でアルバイトをしたりすることで、収入源を多様化し、経済的な安定を図ることができます。

ただし、副業・兼業を始める際には、勤め先の就業規則を必ず確認し、問題がないかを確認することが重要です。また、本業に支障が出ない範囲で行うよう、自己管理も求められます。

転職も視野に入れる

現在の会社での評価や給与に不満があり、改善の見込みが低いと感じるのであれば、転職も真剣に検討すべきです。特に、キャリアの途中で非正規雇用から正規雇用への転換を目指す場合や、より自身のスキルや経験が評価される企業への転職は、給与アップに直結する可能性があります。

転職活動においては、自身の市場価値を客観的に評価してくれる転職エージェントの活用も有効です。専門家の視点から、最適なキャリアパスや求人情報を提供してもらうことで、効率的に転職活動を進めることができるでしょう。


 

企業に求められる氷河期世代への向き合い方

この問題は、個人の努力だけで解決できるものではありません。企業側にも、氷河期世代の置かれている状況を理解し、彼らが能力を最大限に発揮できるような環境を整える責任があると言えるでしょう。

適切な評価と報酬制度の再構築

長年の経済停滞期に入社し、様々な困難を乗り越えてきた氷河期世代は、企業にとって貴重な存在です。彼らが持つ経験や知識、そして会社への貢献度を正当に評価し、適切な報酬を与える制度を再構築する必要があります。

単に勤続年数や役職だけでなく、個々のスキルや貢献度を重視した評価制度の導入は、彼らのモチベーション向上にも繋がり、企業の成長にも寄与するはずです。

スキルアップ・キャリアアップ支援の強化

氷河期世代が新たなスキルを習得し、キャリアを向上させるための支援を強化することも重要です。リスキリングのための研修プログラムの提供、資格取得支援、あるいは社内でのジョブローテーションの機会を増やすことなどが考えられます。

特に、デジタルスキルやマネジメントスキルなど、将来的に企業の競争力を高める上で不可欠なスキル習得への投資は、企業にとっても長期的なリターンをもたらすでしょう。

世代間の公平性への配慮

新入社員の給与引き上げは重要ですが、それによって既存社員、特に氷河期世代との間で大きな賃金格差が生じることは、社内の士気低下を招きかねません。世代間の公平性にも配慮し、全体の人件費配分を見直す必要があります。

給与だけでなく、福利厚生や働き方など、多様な側面から社員のエンゲージメントを高める施策を講じることで、すべての世代が納得して働ける環境を築くことが求められます。


 

まとめ

氷河期世代の給与問題は、日本が経験した特殊な経済状況と、それに対応した企業行動の結果として生じた複雑な問題です。個人の努力だけではどうにもならない構造的な要因が大きく影響しているため、自己責任論で片付けるべきではありません。