Power Automate Desktop無償版(無料版)でできること・できないことは?

Power Automate Desktop「無償版」でできること・できないこと:無料版RPAの限界と可能性を徹底解説!

「Power Automate Desktop(パワー・オートメイト・デスクトップ、略してPAD:パッド)がWindows 10や11で無料で使えるって聞いたけど、無料版で一体どこまでできるんだろう?」「会社で本格的に使うには、やっぱり有料版が必要なのかな?無料版で何ができて、何ができないのか、具体的に知りたいな…」

こんな風に感じたことはありませんか? Power Automate Desktopは、あなたのパソコンの画面操作を自動化できるRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールとして非常に注目されています。特にWindowsのパソコンを使っている多くの方々にとって、無料で手軽にRPAを試せることは大きな魅力ですよね。しかし、無料版にはいくつかの機能的な制約があり、それがどこまで許容できるかが、あなたの自動化の目的によって変わってきます。

Power Automate Desktopの無償版(無料版)でできることとできないことを具体的に理解することで、あなたの自動化の目的が無料版で達成できるのか、それとも有料版の検討が必要なのかを明確に判断できるようになります。


 Power Automate Desktop(PAD)ってどんなツール?なぜ無料版があるの?

Power Automate Desktop(PAD)は、Power Automate(パワー・オートメイト)というマイクロソフトの自動化サービスの一部です。これは、あなたのパソコンのキーボード入力、マウス操作、Webブラウザの特定の要素のクリック、デスクトップアプリケーションの起動・操作など、「人間の手」が行うようなパソコンの画面操作を自動化することに特化しています。

 

なぜPADの無償版が提供されているのか?

マイクロソフトは、より多くの人がRPAや自動化技術に触れ、その利便性を実感できるようにするために、PADの無償版を提供しています。特に、Windows 10やWindows 11のパソコンには、Power Automate Desktopがプリインストールされていたり、無料でダウンロードできるようになっています。これは、個人ユーザーが日々の単純作業を自動化したり、企業が本格導入前にRPAの概念や機能を評価したりするための、入り口としての役割を果たしています。

無償版PADの基本的な利用環境

  • OS: Windows 10またはWindows 11(Home/Pro/Enterprise)、Windows Server 2016/2019/2022の最新バージョン。
  • アカウント: Microsoftアカウント(個人向けアカウントまたは会社/学校のMicrosoft 365アカウント)。

 

Power Automate Desktopの「無償版」でできること(RPAの基本機能は網羅)

Power Automate Desktopの無償版は、「無料だから機能が大幅に制限されている」と心配するかもしれませんが、実はパソコンの画面操作を自動化するための基本的なRPA機能は、非常に高いレベルで網羅されています。初めてRPAを試したい方や、個人的な単純作業を自動化したい方には十分な機能が揃っています。

1. デスクトップアプリケーションの操作を自動化できる

あなたのパソコンにインストールされているWord、Excel、Outlook(アウトルック)といったMicrosoft Officeアプリケーションや、その他の会計ソフト、業務システム、Webブラウザなどを直接操作する自動化フローを作成できます。

  • Excelアプリを起動し、特定のシートを開いてデータを入力する。
  • Outlookアプリで、受信したメールから添付ファイルを特定のフォルダーに保存する。
  • 古いデスクトップ業務システムにログインし、日次データを入力する。
  • 特定のフォルダ内のファイルをコピー、移動、削除、名前変更する。

 

2. Webブラウザの操作を自動化できる(Webスクレイピングも可能)

Google Chrome(グーグル・クローム)やMicrosoft Edge(マイクロソフト・エッジ)といったWebブラウザを操作し、Webサイト上の情報を読み取ったり、入力したりする作業を自動化できます。

  • 特定のWebサイトに自動でアクセスし、ログイン情報を入力する。
  • Webサイト上の表からデータを自動で取得し、Excelに転記する(Webスクレイピング)。
  • 定期的にWebサイトの情報をチェックし、変更があったら通知する。
  • オンラインのフォームにデータを自動入力して送信する。

 

3. 数百種類のアクションを無料で利用できる

Power Automate Desktopには、ファイル操作、テキスト操作、日付と時刻の操作、変数設定、条件分岐、ループ処理など、300種類を超える非常に豊富なアクション(操作の部品)が標準で用意されています。これらのアクションは、無償版でもすべて利用可能です。

  • 変数を使ってデータを一時的に保存したり、計算を行ったりする。
  • 「もし〇〇ならば、この処理をする」といった条件分岐を設定する。
  • 「〇〇回繰り返す」といったループ処理で、複数のデータを処理する。
  • キーボード入力、マウスのクリック、ウィンドウの操作といった基本的なUI(ユーザーインターフェース)操作を自動化する。

 

4. 直感的な操作でフローを作成できる(プログラミング不要)

PADのインターフェースは、プログラミングの知識がない方でも直感的に操作できるよう設計されています。

  • デスクトップレコーダー: 実際にあなたがパソコンで行った操作(マウスのクリックやキーボード入力など)を記録し、それを自動的にフローとして作成してくれる「デスクトップレコーダー」機能が利用できます。
  • ドラッグ&ドロップ: 画面の左側に並んでいるアクションを、フローの作成画面にドラッグ&ドロップするだけで、簡単にステップを追加できます。
  • 詳細な設定: 各アクションの設定は、テキストボックスへの入力やドロップダウンからの選択が中心です。

 

Power Automate Desktopの「無償版」でできないこと(有償版との大きな違い)

Power Automate Desktopの無償版は、基本的なRPA機能は網羅していますが、企業でRPAを本格的に運用したり、クラウドサービスと密接に連携させたりする際には、いくつかの重要な制限があります。これらの制限が、無償版と有償版の大きな違いとなります。

1. フローの「自動実行」ができない(手動実行のみ)

これが無償版の最も大きな制限であり、企業でのRPA運用における最大のボトルネックとなります。

  • 手動実行のみ: 無償版のPADで作成したデスクトップフローは、あなたがPower Automate Desktopのアプリを起動し、「実行」ボタンを自分でクリックしなければ動作しません。これは「アテンド型RPA(有人ロボット)」と呼ばれます。
  • 「スケジュール実行」ができない: 毎日午前9時に自動で起動する、といった「スケジュール実行」はできません。
  • 「トリガー実行」ができない: 「新しいメールが届いたら自動で起動する」「SharePointのファイルが更新されたら自動で起動する」といった「トリガー実行」はできません。
  • 「クラウドフローからの呼び出し」による自動起動ができない: Power AutomateのWeb版(クラウドフロー)から、PADのデスクトップフローを自動で呼び出して実行することはできません。Web版のフローで「デスクトップ用フローを実行します」というアクションはありますが、これを自動実行するためには有償版のライセンスが必要です。無償版では、メールを送り合うなどの「間接的な」連携で擬似的に自動化する工夫が必要になります。

 

2. フローを「共有」できない(共同作業や一元管理が困難)

無償版で作成したデスクトップフローは、あなたが作成したパソコンの外に持ち出して、他のユーザーと共有したり、Power Automateポータル上で他のユーザーに共同で編集してもらったりすることができません。

  • 個人のPCにロックされる: フローはあなたのパソコンのローカルに保存され、あなたがサインインしているMicrosoftアカウントに紐づきます。他の人があなたのフローにアクセスしたり、修正したりすることはできません。
  • 配布は手作業で、更新は手間: 別のユーザーにフローを使ってもらいたい場合、手動でフローをエクスポートし、そのファイルを渡すことは可能ですが、フローに修正があった場合は都度再配布する必要があり、非常に手間がかかります。これにより、組織的なRPAの展開や一元管理が非常に困難になります。

 

3. 「中央管理」や「監査・監視」ができない

企業でRPAを導入する上で非常に重要な、組織的な管理機能が無償版にはありません。

  • IT管理者による可視化ができない: IT管理者が組織全体のRPAフローを把握したり、利用状況を監視したりする「中央管理機能」がありません。誰がどんなフローを使っていて、それが正しく動いているか、エラーがないかなどを、管理者は一元的に把握できません。
  • 実行ログの集中管理ができない: フローの実行履歴やエラーログは、基本的にはそのフローが動いたパソコンのローカルにしか残りません。そのため、問題が発生した場合のトラブルシューティングや監査が困難になります。

 

4. 一部の「プレミアムコネクタ」が使えない(クラウドフロー連携時)

Power Automate Desktop自体は無料ですが、これをPower AutomateのWeb版(クラウドフロー)と連携させる場合、Web版のフローがSalesforce、Dynamics 365、SQL Server、HTTPリクエストといった「プレミアムコネクタ」を使用していると、そのクラウドフローを実行するために有償のPower Automateライセンスが必要になります。無償版では、Web版で利用できるコネクタが「標準コネクタ」に限定されます。

 

5. 「AIのような高度な判断」や「一部のシステム連携」に制限

  • AIのような高度な判断はできない: PADは、定型化された作業を自動化するのが得意ですが、AIのように「顧客の感情を読み取って対応を変える」「異常なデータを分析して原因を探る」といった状況に応じた複雑な判断や予測を行うことはできません。AI Builderなどの機能は、Power Automateの有償ライセンスで提供されます。
  • 特定のクラウドサービスとのリアルタイム連携が制限される: 無料版のPower Automate Desktopは、一部のクラウドサービス(特にリアルタイム性が求められるもの)との直接連携に制限があることがあります。

 

4. 無償版はどんな時に使える?どんな時に有償版が必要になる?

無償版Power Automate Desktopの制限を理解した上で、それがどんな目的であれば十分なのか、そしてどんな目的で有償版が必要になるのかを明確にしましょう。

 

無償版で十分なケース

  • 個人的な作業の自動化:日々の単純な繰り返し作業(例: 個人のExcel集計、Webサイトからの情報コピー、デスクトップアプリの定型操作)を、自分一人で、手動で実行するレベルであれば、無償版で十分に対応できます。
  • RPAの学習や評価目的:本格的なRPA導入を検討する前に、RPAの概念やPADの操作感を試してみたいという場合に、無料で評価ツールとして活用できます。
  • 小規模な自動化で実行頻度が低い場合:週に数回のフロー実行しかない、または個人レベルのタスク整理であれば、無償版でも十分対応可能です。

 

有償版への移行が必要なケース

  • RPAの「自動実行」が必要な場合(非アテンド型RPA):ユーザーがPCにログインしていない状態(サインアウトしている状態)でも自動でRPAを実行したい場合や、スケジュールに基づいて自動でRPAを動かしたい場合は、有償の「Power Automate Process(旧:Process Automation)」ライセンスや、「非アテンド型RPAアドオン」といったライセンスが必要になります。これにより、RPAは真の無人化を実現できます。
  • クラウドサービスとの連携による「自動トリガー」が必要な場合:「新しいメールが届いたら自動でPADフローを起動する」「SharePointのファイルが更新されたらPADフローを実行する」といった、Web版のPower Automate(クラウドフロー)からの自動起動が必要な場合は、有償の「Power Automate Premium(旧:Power Automate Per User with Attended RPA)」ライセンスなどが必要になります。これは「アテンド型RPA(有人ロボット)」と呼ばれます。
  • フローを「共有」し、組織全体で管理したい場合:作成したデスクトップフローを他のユーザーと共有したり、IT部門が組織全体のPADフローを一元的に管理・監視したりしたい場合は、有償版のライセンスが必要です。
  • 「プレミアムコネクタ」が必要な場合:Web版のPower AutomateがSalesforceやSQL Serverといったプレミアムコネクタを利用するフローからPADフローを呼び出す場合、有償版のライセンスが必要になります。
  • 公式サポートやSLA(サービス品質保証)が必要な場合:企業でRPAを導入し、安定稼働を求める場合は、トラブル発生時の公式サポートやサービス品質保証(SLA)のある有償プランを選択するのが一般的です。

無償版はRPAの素晴らしい「入り口」、有償版は「本格運用」への道

Power Automate Desktopの無償版は、パソコンの画面操作を自動化するための基本的なRPA機能を網羅しており、プログラミング知識がなくてもRPAを体験できる、非常に素晴らしい「入り口」となります。個人の業務効率化やRPAの学習には十分に活用できるでしょう。

しかし、もしあなたが「24時間自動で動かしたい」「複数の人とフローを共有して管理したい」「クラウドサービスと連携して自動で動かしたい」といった、より高度な要求や組織での本格運用を目指すのであれば、有償版のライセンスへの移行が必要となります。

まずは無償版をインストールして、あなたのパソコンでのRPA体験を始めてみてください。その便利さを実感した上で、あなたのビジネスニーズに合わせて、有償版へのステップアップを検討されるのが、最も賢いアプローチと言えるでしょう。