Power Automate Desktopで「画面のボタンがクリックできない!」原因と確実な改善方法を徹底解説!
「Power Automate Desktop(パワー・オートメイト・デスクトップ、略してPAD:パッド)で、作った自動化がなぜか途中で止まってしまって、画面上のボタンがクリックできないんだ…」「クリックしたい場所は画面に表示されているはずなのに、エラーが出てしまう…どうすればいいんだろう?」「せっかくパソコンの作業を自動化したのに、クリックできないと何も進まないから、原因を知って直したいな…」
こんな風に感じたことはありませんか? Power Automate Desktopは、あなたのパソコンの画面操作を自動化できる非常に便利なツールですが、RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)の自動化において最も頻繁に遭遇する、そして最も悩ましい問題の一つが、この「UI要素がクリックできない」というエラーです。これは、RPAのロボットが、まるで人間の目に見えているボタンや入力欄を認識できず、操作できないような状況です。この問題が起きると、せっかくの自動化が途中で停止してしまい、業務に大きな影響を与えかねません。
Power Automate DesktopでUI要素がクリックできない原因はいくつか考えられますが、その多くは特定でき、適切な対処法を知っていれば、比較的簡単に解決できます。これは、画面の認識方法や、操作のタイミング、パソコンの環境設定など、様々な要因が絡み合って発生します。
「UI要素がクリックできない」ってどういうこと?なぜ起きるの?
Power Automate Desktopにおける「UI要素(ユーアイ・ヨウソ)」とは、パソコンの画面上に表示される、あなたがマウスでクリックしたり、文字を入力したりする対象となるあらゆる部品のことです。例えば、ボタン、テキスト入力欄、リンク、チェックボックス、ドロップダウンリスト、画像などがこれにあたります。
「UI要素がクリックできない」というエラーは、PADのロボットが、これらの画面上の部品を正確に「認識できない」、あるいは「認識できているが操作できない」という状況を意味します。
なぜ「認識できない」「操作できない」問題が起きるのか?
この問題が発生する背景には、主に以下のような原因が考えられます。
- UI要素の「識別子(セレクター)」が不安定:Power Automate Desktopは、画面上のUI要素を、その位置や名前、IDといった情報(「識別子」や「セレクター」と呼びます)を使って特定しています。もし、その識別子が不安定で、実行のたびに変わってしまうような要素(例: ウェブサイトのセッションごとにIDが変わるボタン)を操作しようとすると、PADはその要素を見つけられなくなり、クリックに失敗します。
- 画面の状態やタイミングの問題:UI要素は画面上にあるように見えても、実際にはまだ完全に読み込まれていなかったり、別のポップアップやダイアログに隠されていたり、画面の外にスクロールされていたりする場合、PADは正確に操作できません。また、要素が表示される「前に」クリックしようとしてしまうなど、操作のタイミングが早すぎることも原因となります。
- アプリケーション側の問題:対象となるアプリケーション自体が一時的にフリーズしていたり、応答が遅かったり、異常な状態になっている場合、PADはクリック操作を実行できません。
- PC環境や設定の問題:パソコンの画面解像度、ディスプレイの拡大縮小設定(スケーリング)、マルチモニターの配置などが、PADのUI要素の認識に影響を与えることがあります。
これらの問題が一つでも存在すると、PADはUI要素を正しく操作できず、「クリックできませんでした」「要素が見つかりませんでした」といったエラーを発生させてしまいます。
UI要素がクリックできない主な原因と対策
UI要素がクリックできない場合、以下の原因が考えられます。一つずつ確認し、それぞれに合った対処法を試していきましょう。
対策1:UI要素の「識別子(セレクター)」の安定性を高める(最も重要)
PADがUI要素を特定するための「目印」が不安定な場合に試すべき、最も重要で根本的な対策です。
原因
- レコーダーで取得した識別子(セレクター)が不安定:PADのレコーダー機能は便利ですが、取得される識別子(セレクター)が、ウェブサイトのセッションIDや動的に変化する数値のような不安定な情報を含んでいることがあります。これにより、同じ要素でも実行のたびに識別子が変わってしまい、PADが要素を見つけられなくなります。
- 複数の類似要素が存在する:画面上に同じような見た目や名前の要素が複数ある場合、PADが意図しない要素を認識しようとしてしまうことがあります。
- UI要素の階層が複雑すぎる:特にウェブアプリケーションで、クリックしたい要素のHTMLの階層が非常に深く、親要素が少し変わるだけでパスが崩れてしまう場合。
対処法
- UI要素を「再取得」し直す:まず、PADのフローデザイナーで、クリックできないアクション(例: 「UI要素をクリック」)を開き、UI要素の選択欄の横にある「UI要素を再取得」ボタン(虫眼鏡のアイコン)をクリックします。これにより、PADが現在の画面の状態に合わせて、再度UI要素の識別子を取得し直します。この操作だけで解決することも少なくありません。
- UI要素の「セレクター」を最適化する(カスタムセレクター):再取得でうまくいかない場合は、より安定した識別子を自分で設定します。
- PADのフローデザイナーで、クリックできないアクションを開き、UI要素の選択欄の横にある「UI要素の編集」ボタン(鉛筆のアイコン)をクリックします。
- 「UI要素のプロパティ」画面が表示されますので、「セレクターのビルド」タブを開きます。
- ここで、UI要素を特定するための属性(例:
ID,Name,Class,Automation IDなど)が並んでいます。この中で、毎回変わらない、かつその要素に固有の属性(例えば、他の要素と重複しないIDやName)にチェックを入れて、「保存」します。 - ワイルドカード(
*)や正規表現を活用する: もし要素のIDや名前の一部だけが変化する場合(例:button_session_123のように数字部分が変わる)、button_session_*のようにワイルドカードを使ったり、より複雑なパターンで正規表現を使ったりすることで、変化に対応できます。 - 階層を簡素化する: セレクターのツリー表示で、不要に深い階層の親要素への依存を減らし、できるだけターゲットとなる要素に近い、安定した親要素を選択するように調整します。
対策2:画面の状態とタイミングを正確に制御する
UI要素がクリックできる状態にない場合や、PADが操作を早まってしまう場合に試すべきことです。
原因
- 要素がまだ読み込まれていない:Webページやアプリケーションが起動中、またはデータ処理中で、クリックしたい要素が画面に表示されていても、実際にはまだ「操作可能な状態」になっていない。
- ウィンドウがアクティブでない/最小化されている:PADが操作しようとしているアプリケーションのウィンドウが、バックグラウンドにあったり、最小化されていたりするため、PADが要素を認識できない。
- 別のポップアップやダイアログが邪魔をしている:クリックしたい要素の上に、別の確認ダイアログやエラーメッセージ、広告などが予期せず表示され、要素が隠されている。
- 画面スクロールが必要:クリックしたい要素が、現在の画面表示領域の外(下の方など)にあり、スクロールしないと見えない。
- 要素が非活性化されている(グレーアウトしている):画面上には要素があるが、アプリケーションの処理中で一時的にクリックできない状態(グレーアウトしている)になっている。
対処法
- 「待機」アクションでロード時間を確保する:クリック操作の直前に、「待機」(Delay)アクションを追加し、数秒(例: 2〜5秒)待機させてからクリックを試みます。これにより、Webページやアプリケーションが完全に読み込まれる時間を確保できます。
- 「UI要素がWebページで表示されるまで待機」アクションを使う:Webサイトの操作の場合、「Web ページからデータを抽出する」などのWebアクションのグループにある「UI要素がWebページで表示されるまで待機」アクションを使います。これにより、指定したUI要素が画面に完全に表示され、操作可能になるまでフローが待機します。
- ウィンドウをアクティブ化し、最大化する:クリック操作の前に、「ウィンドウをアクティブ化」アクションや「ウィンドウのサイズを変更/移動」アクション(ウィンドウを最大化する設定)を追加し、対象のアプリケーションのウィンドウが確実に前面に表示され、操作可能な状態になるようにします。
- スクロール操作を追加する:クリックしたい要素が画面の下の方にある場合、「ウィンドウをスクロール」アクションや「Webページをスクロール」アクションを追加し、目的の要素が表示される位置まで画面を動かしてからクリック操作を実行します。
- ポップアップやダイアログのハンドリングを追加する:予期せぬポップアップやダイアログが表示される可能性がある場合、「条件」アクションでそのポップアップが表示されたかどうかをチェックし、もし表示されていたら「閉じるボタンをクリック」するなどの処理(エラーハンドリング)を追加します。
- 要素の活性化を待機する:もしUI要素が一時的にグレーアウトするなどの非活性状態になる場合、「待機」アクションで待つか、より高度にはその要素の状態を監視するアクション(例: 「UI要素の状態が変化するまで待機」)を検討します。
対策3:ブラウザの拡張機能や管理者権限の問題を確認する
PC環境やPADの動作に関する一般的な問題です。
原因
- ブラウザ拡張機能が未インストール/未有効化:Webブラウザの操作を自動化する場合、Power Automate Desktopのブラウザ拡張機能が、使用しているブラウザに正しくインストールされ、有効化されていないと、Web要素を認識できません。
- ブラウザのバージョンが古い/非推奨:使用しているWebブラウザがPADがサポートする最新バージョンでない場合、Web要素の認識に問題が生じることがあります。
- 管理者権限の不一致:Power Automate Desktop自体が管理者権限で実行されているのに、操作したいアプリケーションが通常のユーザー権限で実行されている場合、またはその逆の場合、セキュリティ上の制約からUI要素の操作ができないことがあります。
対処法
- ブラウザ拡張機能を再インストール/有効化する:PADのコンソール画面(フローの一覧が表示される画面)の左側メニューにある「ツール」から「ブラウザー拡張機能」を選択し、使用しているブラウザの拡張機能が正しくインストールされ、有効化されているか確認します。必要であれば、一度削除してから再インストールを試してみてください。
- Webブラウザを最新バージョンに更新する:使用しているWebブラウザ(Chrome, Edgeなど)を常に最新バージョンに更新してください。
- PADと対象アプリの管理者権限を揃える:
- 両方を管理者として実行: PADのショートカットを右クリックし「管理者として実行」します。同時に、操作したいアプリケーション(例: Excelアプリ)も右クリックし「管理者として実行」して起動し直します。
- 両方を通常ユーザーとして実行: 両方を管理者として実行できない場合は、両方を通常ユーザーとして実行します。PADの起動時に管理者権限が要求される設定になっている場合は、設定を変更することを検討します。
対策4:PC環境や対象アプリケーションの問題を考慮する
より根本的なPC環境や、操作対象のアプリケーション側の問題です。
原因
- 画面解像度やスケーリングの変更:PADでフローを開発した時と、実行する時で、パソコンの画面解像度やディスプレイの拡大縮小設定(Windowsの「スケーリング」)が異なる場合、UI要素の認識位置がずれてしまうことがあります。
- マルチモニター環境での誤認識:複数のディスプレイを使っている場合、PADが意図しないディスプレイ上の要素を認識しようとしてしまうことがあります。
- 対象アプリケーションの動作不安定:操作したいアプリケーション自体がフリーズ寸前だったり、動作が不安定だったりすると、PADは操作を完了できません。
対処法
- 画面解像度とスケーリングを固定する:PADのフローを開発した時と、実行する時で、パソコンの画面解像度とディスプレイの拡大縮小設定(スケーリング)を同じ設定に固定することを強く推奨します。これにより、UI要素の認識ずれを防げます。
- 可能であればシングルモニターで開発/実行する:マルチモニター環境が問題の原因となっている場合、可能であれば、フローの開発と実行をシングルモニター環境で行うことを検討してください。
- 対象アプリケーションを再起動する:操作したいアプリケーションが不安定だと感じられる場合は、一度アプリケーションを完全に終了し、再起動してからフローを実行してみてください。
トラブルシューティングの進め方と予防策
UI要素がクリックできない問題は、原因が多岐にわたるため、一つずつ原因を潰していく必要があります。
トラブルシューティングの進め方
- 実行履歴の詳細を確認する:まず、フローの実行履歴を開き、エラーになったステップの詳細(「入力」や「出力」、エラーメッセージ)を注意深く確認してください。ここに、問題解決のヒントが隠されています。
- 「変数」や「表示メッセージ」アクションでデバッグする:フローの途中に「表示メッセージ」アクションを追加し、現在の状況(例: 「UI要素が見つかりません」といったエラーメッセージを画面に表示させる)や、変数の中身を確認しながら、どこで問題が発生しているのかを段階的に特定していきます。
- ステップを一つずつテストする:問題のあるセクションを特定したら、そのセクションだけを切り出して、ステップを一つずつ手動で実行したり、個別にテストしたりすることで、問題の特定を早められます。
今後のための予防策
- UI要素の「頑丈な」識別子を選ぶ:UI要素を取得する際、レコーダーに任せきりにせず、「ID」や「Name」など、毎回変わらないであろう、その要素に固有の属性を優先して選ぶようにしましょう。
- 「待機」アクションや「待機条件」を適切に使う:要素をクリックする前に、必ず「UI要素がWebページで表示されるまで待機」アクションや、「待機」アクションでロード時間を確保し、要素が完全に読み込まれてから操作するようにしてください。
- エラーハンドリングを導入する:クリックできないなどのエラーが発生した場合に備えて、必ず「エラー発生時にブロックを実行」アクションを追加し、エラーが発生したら管理者への通知を送ったり、特定の回数再試行したりするロジックを組み込んでおきましょう。これにより、フローが途中で停止するのを防ぎ、問題の早期発見につながります。
- 開発環境と実行環境の統一:可能な限り、フローを開発したパソコンの画面解像度やスケーリング、ブラウザのバージョンなどを、実行するパソコンの環境と揃えるようにしましょう。
- 対象アプリケーションの安定稼働:操作対象となるアプリケーションやWebサイトが安定して動作していることを確認し、必要であれば、フロー実行前にアプリケーションを再起動するアクションを追加することも検討してください。
Power Automate Desktopで「UI要素がクリックできない」問題は、RPA開発者にとって避けられない壁の一つですが、その原因を理解し、適切な対処法を一つずつ試していくことで、必ず解決できます。諦めずに、これらの方法を実践してみてください。

