Power Automateのコンカレンシー制御とは?わかりやすく説明

Power Automateの「コンカレンシー制御」とは?フローを安定稼働させるための交通整理を徹底解説!

 

「Power Automate(パワー・オートメイト)のフローが、同時に何度も動いてしまって、連携先のシステムに負担がかかっていないか心配だな…」「短時間にたくさんのファイルがアップロードされると、フローがエラーになったり、途中で止まったりすることがあるんだけど、どうすればいいの?」「『429 Too Many Requests』っていうエラーがよく出るのは、もしかしてフローが動きすぎているのが原因なのかな?」

こんな風に感じたことはありませんか? Power Automateのフローは、設定されたトリガー(きっかけ)が複数回発生したり、ループ処理(繰り返し処理)の中でたくさんのアクションを実行したりする場合、非常に速いスピードで処理を進めようとします。これは効率的である反面、連携先のシステムに過度な負荷をかけてしまったり、Power Automate自体のAPIリクエスト制限に達してしまったりする原因になることがあります。

Power Automateには、このような問題を解決し、フローが安定して動作するように「コンカレンシー制御(コンカレンシー・セイギョ)」という非常に重要な機能が備わっています。これは、まるで交通量の多い道路で、一度に流入する車の数を制限して渋滞を防ぐ「交通整理」のような役割を果たすものです。


 

「コンカレンシー制御」ってどんなもの?フローの同時実行を調整する役割

Power Automateにおける「コンカレンシー制御」とは、フローの同時実行数を制限したり、特定の処理の並列実行の度合いを調整したりする機能を指します。これは、フローが同時に処理できる「仕事の量」をコントロールすることで、連携先のシステムやPower Automate自身の処理能力を超えないようにするためのものです。

 

なぜ「コンカレンシー制御」が必要なのか?その重要な目的

コンカレンシー制御を導入することには、フローの運用における安定性と信頼性を大きく高める、多くの重要な目的があります。

  • 「429エラー(Too Many Requests)」の回避:これがコンカレンシー制御を使う最も大きな理由の一つです。連携先のサービス(例えばSharePoint OnlineのAPI、Outlookのメール送信API、外部のWebサービスなど)は、システムを安定稼働させるために、短期間のうちに受け付ける要求の数に上限(レート制限やスロットリング)を設けています。フローがこの上限を超えて要求を送りすぎると、サービス側は「要求が多すぎます」という意味の429エラーを返します。コンカレンシー制御で同時実行数を制限することで、API要求の集中を避け、この429エラーの発生を大幅に減らすことができます。
  • システムへの負荷軽減:Power Automateのフローが高速で多数実行されると、連携先のシステム(データベース、SharePoint、SaaSなど)に過度な負荷がかかり、そのシステムのパフォーマンスが低下したり、ダウンしたりするリスクがあります。コンカレンシー制御で流入量を調整することで、連携先システムの安定稼働を保護できます。
  • データ整合性の維持:複数のフローインスタンス(フローの実行一つ一つ)や、一つのフロー内の複数のループ処理が同時に実行され、同じデータやリソース(例えば、Excelファイルの一部のセル、データベースの同じレコード)を書き換えようとした場合、データの競合が発生し、データが破損したり、意図しない値になったりする可能性があります。特に、順序性が重要な処理では、コンカレンシー制御で同時実行数を1に制限(直列実行)することで、このようなデータ競合を防ぎ、データの整合性を保つことができます。
  • Power Automate自体のリソース管理:Power Automateのフローも、実行されるにはマイクロソフトのクラウド上のリソースを消費します。無制限に同時実行されると、Power Automate自体のAPIリクエスト制限に達したり、処理能力が逼迫したりする可能性があります。コンカレンシー制御は、Power Automate自体の健全な動作を維持する上でも役立ちます。
  • コストの最適化:不必要な大量実行やAPIリクエストの集中は、Power Automateのライセンス費用や、連携先のクラウドサービスの利用料金が増加する原因にもなります。コンカレンシー制御は、リソースの無駄遣いを防ぎ、コストを最適化する手助けとなります。

コンカレンシー制御はどこで設定するの?二つの主要な設定場所

Power Automateのコンカレンシー制御は、主に二つの異なる場所で設定できます。一つは「トリガー」に対して、もう一つは「Apply to each」というループアクションに対してです。

 

1. トリガーに対するコンカレンシー制御:フローの「起動数」を調整する

これは、フローが動き出す「きっかけ」(トリガー)が短時間に何度も発生した場合に、フローが同時に何個まで起動できるかを制御するものです。例えば、SharePointにファイルが大量にアップロードされたり、Outlookに多数のメールが短時間に届いたりした場合に、フローが爆発的に起動しすぎるのを防ぎます。

トリガーのコンカレンシー制御を設定するやり方

  1. Power Automateのフローを編集モードで開きます。ウェブブラウザでPower Automateポータル(https://www.google.com/search?q=make.powerautomate.com)にアクセスし、制御したいフローを編集モードで開きます。
  2. フローの最初の「トリガー」を選択し、「設定」を開きます。フローデザイナー画面の最初のステップである「トリガー」(例: 「ファイルが作成または変更されたとき」や「新しいメールが届いたとき」)をクリックします。アクションボックスの右上にある「…」(三点リーダー)をクリックし、「設定」を選択してください。
  3. 「同時実行管理」を「オン」にします。「設定」パネルの中に「同時実行管理」(Concurrency Control)という項目があるはずです。これを「オン」に切り替えます。
  4. 「並列処理の次数」を設定します。「並列処理の次数」というスライダーが表示されます。ここで、同時に実行を許可するフローインスタンスの最大数を設定します。最小値は1(完全に直列実行)、最大値は通常100です。
    • 推奨: まずは低い値(例えば、10や20)から試してみてください。サービスへの影響を最小限に抑えたい場合や、処理の順序が重要な場合は「1」に設定します。
    • 「最大実行待機数」も設定可能: 「並列処理の次数」で設定した数だけフローが既に並列で実行されていて、さらに新しいリクエストがトリガーに送られた場合に、いくつまで実行を「待機」させるか、という数を設定できます。この上限を超えると、新しいフローの起動は拒否されます。
  5. 「完了」をクリックし、フローを保存します。設定が完了したら「完了」ボタンをクリックし、その後フロー全体を保存します。

 

2. 「Apply to each」アクションに対するコンカレンシー制御:ループ内の「並列処理」を調整する

これは、フローの中にある「Apply to each(各項目に適用)」というループアクションが、処理すべき複数のアイテムを同時に何個まで並行して処理するかを制御するものです。既定では、Apply to eachは可能な限り並列で実行しようとします。

「Apply to each」のコンカレンシー制御を設定するやり方

  1. フローを編集モードで開きます。制御したいフローを編集モードで開きます。
  2. 「Apply to each」アクションを選択し、「設定」を開きます。フローデザイナー画面で、コンカレンシー制御を設定したい「Apply to each」アクションをクリックします。そのアクションボックスの右上にある「…」(三点リーダー)をクリックし、「設定」を選択してください。
  3. 「コンカレンシー制御」を「オン」にします。「設定」パネルの中に「コンカレンシー制御」(Concurrency Control)という項目があるはずです。これを「オン」に切り替えます。
  4. 「並列処理の最大限度」を設定します。「並列処理の最大限度」というスライダーが表示されます。ここで、同時に処理を許可するループの反復(アイテム)の最大数を設定します。最小値は1(完全に直列処理)、最大値は通常50です。
    • 推奨: ループ内の各処理がAPI呼び出しを伴う場合や、データ競合のリスクがある場合は、低い値(例えば、5や10)から試してみてください。順序が重要な場合は「1」に設定します。
  5. 「完了」をクリックし、フローを保存します。設定が完了したら「完了」ボタンをクリックし、その後フロー全体を保存します。

 

コンカレンシー制御を理解し、最適化するためのヒント

コンカレンシー制御は強力な機能ですが、その影響を理解し、適切に設定することが重要です。

1. 設定変更の影響を理解する

 

  • 「オン」にして「1」に設定する場合:フローのトリガーやApply to eachループの「並列処理の次数」を1に設定すると、処理は完全に「直列」で行われます。これは、処理の順序性が非常に重要な場合や、API制限が極めて厳しい場合に有効です。しかし、全体の処理時間は長くなります。
  • 「オン」にして「高めの値」に設定する場合:ある程度の並列性を保ちつつ、サービスへの負荷を適切に管理したい場合に有効です。処理時間は短縮されますが、連携先のAPI制限やデータ競合のリスクを常に意識する必要があります。
  • 「オフ」(既定)の場合:可能な限り多くの処理を同時に実行しようとします。これは、データ量が少なく、API制限に達する可能性が低い場合に最も高速ですが、制御不能な大量実行につながるリスクがあります。

 

2. 「変数」の取り扱いに注意する

 

「Apply to each」ループ内で「変数」を設定している場合、コンカレンシー制御(並列処理)を「オン」にすると、複数のループが同時にその変数を書き換えようとするため、変数の値が意図しないものになる(競合状態)可能性があります。変数の値が正しくない場合、フローが失敗したり、誤った処理を進めたりすることがあります。

  • 対策: 並列処理を行う「Apply to each」ループ内で変数を更新する処理がある場合は、その変数を「グローバルな変数」(並列処理の外で定義された変数)として扱い、その更新を「ロック」するような仕組みを検討するか、あるいは変数を使わずに、各ループ内で処理を完結させる設計にすることが推奨されます。

 

3. 「再試行ポリシー」との組み合わせ

コンカレンシー制御は、API要求の数を「流量制限」するものですが、それでも連携先のサービスが一時的に不安定になり、429エラーや500エラー(内部サーバーエラー)を返すことはあり得ます。そのため、コンカレンシー制御を設定した上で、各アクションの「再試行ポリシー」も適切に設定しておくことで、一過性のエラーを自動で吸収し、フローの堅牢性をさらに高めることができます。

 

4. 「遅延」アクションの活用

コンカレンシー制御がトリガー全体やループ全体に適用されるのに対し、「遅延」アクションは、特定のステップの実行を数秒間待機させるものです。複雑なAPI連携で、API呼び出しの間に強制的に間隔を開けたい場合に有効です。コンカレンシー制御と組み合わせて使うことで、API制限の回避に役立つことがあります。

 

5. エラーハンドリングと通知の設定

コンカレンシー制御を設定しても、すべてが完璧に動作するわけではありません。予期せぬエラーや、設定した並列度で処理しきれない問題が発生した場合に備えて、必ずエラーハンドリング(例: スコープと実行条件の組み合わせ)を設定し、フローの失敗時に自動で管理者へ通知が飛ぶようにしておくことが重要です。これにより、問題の早期発見と迅速な対処が可能になります。

 

6. テスト環境での十分な検証

コンカレンシー制御の設定を変更した場合、必ずテスト環境で十分な検証を行ってください。特に、異なる設定値(並列度の次数)で繰り返しテストを行い、フローが期待通りに動作するか、エラーが発生しないか、連携先のシステムに過度な負荷がかからないかなどを確認することが不可欠です。本番環境での予期せぬ問題を防ぐためにも、この検証は非常に重要です。


 

「コンカレンシー制御」はフローを安定稼働させるための生命線!

 

Power Automateにおける「コンカレンシー制御」は、フローの同時実行数や並列処理の度合いを調整することで、連携先のサービスへの負荷を軽減し、API制限(429エラーなど)を回避し、データ整合性を保ち、フローを安定して稼働させるための生命線とも言える重要な機能です。

  • トリガーに対して設定することで、フローの「起動数」を調整できます。
  • 「Apply to each」アクションに対して設定することで、ループ内の「並列処理」の度合いを調整できます。

これらの設定を適切に行うことで、あなたはPower Automateのフローをより堅牢にし、予期せぬトラブルに動じることなく、安心して業務の自動化を進められるようになるでしょう。