「叙述」と「叙情」の違い?使い分けは?
日本語には似た響きを持つ言葉が多くありますが、「叙述」と「叙情」もその一つです。しかし、この二つは意味も使いどころもまったく異なります。両者を正しく理解し、場面や用途に応じて使い分けることは、日常会話でもビジネスメールでも、相手に正確に気持ちや事実を伝える上でとても大切です。ここでは、それぞれの意味、特徴、使い方、そして注意点について丁寧に解説します。
ビジネス用語としての「叙述」の説明
「叙述」とは、出来事や事実、経過や理由、または考えなどを客観的かつ論理的に順序立てて述べることを意味します。「叙述」には自分の感情や主観はあまり含まず、なるべく客観的・中立的な立場から、事実や内容、物事の流れをわかりやすく伝える役割があります。
例えば、ビジネスメールでの報告、会議の議事録、経過説明書、トラブル発生時の対応記録など、「いつ」「どこで」「何が」「どのように」起こったのか、流れや理由をしっかりと説明することが求められる場面で用いられます。
叙述の特徴まとめ
- 出来事や経過、背景を事実ベースで順序よく述べる
- 主観や感情を入れず、冷静かつ論理的に記載する
- ビジネスや公的文書、業務報告、議事録など、客観性が求められる文章で使われる
ビジネス用語としての「叙情」の説明
「叙情」とは、自分の心に浮かんだ感情や気持ち、思いを表現することを意味します。たとえば、感動や悲しみ、喜び、愛情、不安など、心の奥にある気持ちを言葉や文章、時には詩や歌、文学などを通じて表現する場合に使われる言葉です。「叙情」には客観的な事実説明よりも、個人の思いや感情をいかに繊細に表すかが重視されます。
文学や詩、歌詞、エッセイ、日記など、「自分の感情」をストレートに表現したい場面でよく用いられます。ビジネスメールや公式文書で使われることは少なく、どちらかといえばプライベートや芸術分野で活きる表現です。
叙情の特徴まとめ
- 個人の心の動き、感動や悲しみ、喜びなど感情を表現する
- 客観性よりも、主観的な気持ちや印象を強調する
- 詩、エッセイ、創作、日記、スピーチなど、感情を伝えたい文章で使われる
「叙述」と「叙情」の一般的な使い方は?
日常会話やビジネスメールの中で、「叙述」と「叙情」はまったく異なる場面で登場します。使い分ける際のイメージが掴めるよう、それぞれの使い方を具体的に紹介します。
「叙述」の使い方
- 昨日の会議の内容を時系列で説明してください。
- トラブル発生から解決までの流れを、事実に基づいて説明してください。
- 今回のプロジェクトの進捗状況を、具体的に説明してください。
- 新商品の開発過程を順序立てて説明してください。
- 先日のイベントについて、出来事の経過をまとめて説明してください。
「叙情」の使い方
- 季節の移り変わりに感じた思いを文章にしてみました。
- お客様からいただいた温かい言葉に、深く感動した気持ちを表しました。
- 子どもたちの笑顔に、心からの幸せを感じました。
- 新入社員としての不安や期待を、率直な気持ちで書きました。
- 春の桜並木を見て、懐かしい思い出がよみがえりました。
「叙述」が使われる場面
「叙述」は主に、ビジネスや公的な場面、または客観的な説明や報告を求められる場面で使います。
報告書や議事録、業務マニュアル、進捗報告、事故やトラブルの経過報告など、「事実を分かりやすく正確に伝える」ことが必要な時に非常に適しています。主観的な感情や思いはなるべく控え、冷静で論理的な説明を心がけます。
間違えないように使い分けるには?
叙述は「出来事・経過・理由を順序立てて客観的に説明」する時に使い、叙情は「心の中の気持ちや感動を表現」したい時に使います。
ビジネスメールや報告では「叙述」がほとんどで、「叙情」はあまり使われません。
「叙述」を言い換えて失礼がない伝え方・目上・取引先に送る場合
ビジネスメールや取引先、目上の方への報告・説明などでは、客観的な事実や経過を正確かつ丁寧に伝えることが重要です。直接「叙述してください」と言うよりも、より自然な日本語表現で、配慮のある丁寧な言い回しを使うと好印象です。
- お手数ですが、本件について事実関係を順を追ってご説明いただけますと幸いです。
- 今回の経緯を分かりやすくまとめてご報告いただけますようお願い申し上げます。
- 発生から解決までの流れについて、時系列でご説明いただけますでしょうか。
- 詳細についてご説明いただき、ご不明点がございましたらご指摘いただけますと幸いです。
- 本件に関する経過や背景を、分かりやすくご説明いただきますようお願いいたします。
- 今回の会議内容について、要点をまとめてご共有いただけますとありがたく存じます。
- 先日のプロジェクトの進行状況を、簡潔にご説明いただけますようお願いいたします。
- お手数ですが、トラブルの対応経緯についてご説明いただければと思います。
- ご対応いただいた内容の流れを、分かりやすくまとめていただきますようお願い申し上げます。
- 今後の方針決定までの過程について、ご説明いただけますと幸いです。
- 報告内容に追加事項があれば、追記いただけますようお願いいたします。
- 必要事項や背景など、ご説明いただき、今後の参考とさせていただきます。
- 会議の議事内容を、分かりやすくご説明いただければと存じます。
- 作業工程について、順序立ててご共有いただきますようお願い申し上げます。
- 本日までの進捗について、ご説明いただければ助かります。
「叙述」と「叙情」の間違えた使い方は?
「叙述」と「叙情」を間違えて使ってしまうと、内容や文章の目的が伝わりにくくなります。よくある間違いと、その理由を簡単に説明します。
- ビジネス報告や議事録で「叙情」を使う
(解説)事実や経過、内容を客観的に伝える時には「叙述」が必要です。
間違った例:会議の内容を叙情的にまとめてください。 - 個人の気持ちや感動を説明する際に「叙述」を使う
(解説)感情や思いを表現したい時には「叙情」を使います。
間違った例:お客様からの感謝の言葉に対する気持ちを叙述してください。 - 経過や事実の説明に「叙情」を使ってしまう
(解説)客観的な報告や経過説明には「叙述」が適切です。
間違った例:トラブル発生から解決までの流れを叙情的に説明してください。 - エッセイや日記、詩などで「叙述」を使う
(解説)自分の気持ちや印象を述べる場合は「叙情」が適しています。
間違った例:新しい季節の訪れに対する気持ちを叙述してください。 - 感想文で「叙述」を強調してしまう
(解説)感想文や体験談は感情や思いを表現するため「叙情」が大切です。
間違った例:読書感想文を叙述的に書いてください。
英語だと違いはある?
「叙述」と「叙情」は英語でそれぞれ異なる単語や表現を使います。目的に応じて適切な表現を選ぶことが大切です。
「叙述」の英語での説明
「叙述」は英語で「describe」「state」「explain」「narrate」などが使われます。
「narrate」は出来事や流れを順序立てて語る場合、「state」は事実や内容を簡潔に述べる場合、「explain」は背景や理由を説明する場合に使います。
ビジネスシーンでは「Please explain the process(経過を説明してください)」や「Please state the facts(事実を述べてください)」のように使います。
「叙情」の英語での説明
「叙情」は「express emotions」「lyrical」「emotional expression」などが該当します。詩やエッセイ、感想文、スピーチで「感情を表現する」場合は、「express one’s feelings」「write lyrically」などと表現します。ビジネスの場面では使われることは少なく、主に文学や創作分野で活用される単語です。
目上にも使える丁寧な言い回し方は?
「叙述」はビジネスでよく使われますが、「叙情」はビジネスではほとんど使われません。そのため、叙述的な内容をお願いする際は、相手への配慮を込めて、冷静かつ丁寧な言い回しを使うと安心です。
叙述を丁寧にお願いする場合
「事実関係を順を追ってご説明いただけますと幸いです」「経緯を分かりやすくご説明いただきますようお願い申し上げます」など、相手の労力や状況に配慮した優しい日本語を使いましょう。
叙情を丁寧に伝えたい場合
もしエッセイや感想文などで感情や思いを丁寧に伝えたいときは、「率直な思いをお聞かせください」「ご自身の気持ちや印象を素直にご記入いただければ幸いです」など、柔らかな表現がおすすめです。
メール例文集
- お世話になっております。先日発生した件につきまして、事実関係を時系列でご説明いただけますと幸いです。
- この度のプロジェクト進捗について、出来事の経過を分かりやすくご報告いただければと存じます。
- 会議の議事内容を、要点をまとめてご共有いただけますようお願い申し上げます。
- お手数ですが、トラブルの発生から対応までの流れについてご説明いただけますと助かります。
- 新商品の開発過程を、順を追ってご教示いただき、今後の参考とさせていただきます。
- 今回のイベントの流れを、出来事ごとに分かりやすくご説明いただけますとありがたく存じます。
- 業務内容の変更点について、背景や理由も含めてご説明いただきますようお願いいたします。
- ご担当いただいた作業工程を、時系列でご説明いただけますと助かります。
- 先日のお打ち合わせの内容を、簡潔にご報告いただければ幸いです。
- 本件の経緯や詳細について、分かりやすくご説明いただきますようお願い申し上げます。
「叙述」と「叙情」相手に送る際・伝え方の注意点・まとめ
「叙述」と「叙情」は、どちらも文章表現の大切な要素ですが、その目的と内容が大きく異なります。「叙述」は客観的な事実や出来事、経過、背景を論理的かつ順序立てて説明する時に使います。ビジネスメールや報告書、議事録、業務連絡など、冷静な説明が求められる場面で不可欠な表現です。
一方、「叙情」は自分の心の動きや感情、思いを言葉にして伝えるための表現です。文学や詩、エッセイ、日記、スピーチ、感想文など、自分の気持ちや思いを素直に表現したい時に使われます。
ビジネスの場面で使うことはほとんどありませんが、感謝の手紙やスピーチなど、心を込めたメッセージを伝えるときに役立つこともあります。
使い方を間違えてしまうと、伝えたい内容が正しく伝わらなかったり、目的に合わない印象を与えてしまうことがあります。
特にビジネスでは「叙述」が求められることがほとんどですので、「事実」「経過」「内容」「要点」を分かりやすく、冷静に伝えることを心がけましょう。
感情を表現する場合も、相手や場面によっては「率直な気持ちを添える」程度にとどめ、相手に配慮した丁寧な言い回しを意識すると、信頼感のあるやり取りができます。
このように、「叙述」と「叙情」の違いをしっかり理解して使い分けることで、日常会話やビジネスシーンでも相手に伝わる文章力を磨くことができます。相手の立場や気持ちに寄り添った、分かりやすいコミュニケーションを心がけていきましょう。