「実施」と「遂行」の違いは?ビジネス用語としての意味と使い分け
「実施」とは何か
「実施」という言葉は、計画されたことや決められた方針、施策、行事などを実際に行うこと、つまり“現実の行動として進めること”を意味します。もともと「実」は「現実にする」、「施」は「施す・おこなう」という意味があるため、計画や予定として考えられていた事柄を、実際に世の中や現場で具体的に行動へ移す場合に使われます。
ビジネスの現場では「新制度を実施する」「アンケート調査を実施する」「研修を実施する」といった具合に、会議や検討を経て決まったことを“実際に行う”ときによく登場します。「準備」や「検討」よりも一歩進んだ、「いよいよ始める」「形にする」というニュアンスです。
そのため、「実施」は計画段階と実行段階の“境目”を意識させる言葉ともいえます。
ポイントとして、
- 計画や方針、施策などを“実際に行う”こと
- 「始める」「具体的に進める」という現実化のニュアンス
- 会議や検討後、次のアクションとして「実施」が使われる
- 単発の行動から大規模プロジェクトまで幅広く適用できる
- 実際の行動として物事が進んでいることを伝えたいときに便利
「遂行」とは何か
「遂行」という言葉は、「任務」や「課題」「計画」「目標」など、ある目的や使命に向かって最初から最後まで責任を持ってやり遂げる、最後まできちんと実現する、という意味を持ちます。「遂行」は「遂げる(とげる)」と「行う(おこなう)」の組み合わせで、「やり終える」「貫徹する」というニュアンスが強く、単なる開始や実施だけでなく、過程や完了を強調します。
ビジネスでは「プロジェクトを遂行する」「計画を遂行する」「業務を遂行する」など、一定の期間や流れの中で「最初から最後までしっかりとやり抜く」ことを示します。「実施」が“実際に始める”ことを中心に表すのに対し、「遂行」は“目標達成や完了”に主眼を置いているのが特徴です。
要点として、
- 目標や計画、任務などを“最後までやり抜く”こと
- 過程やプロセス、完了を強調
- 一定の責任や使命感を伴うイメージ
- 個人・チームいずれにも使え、「責任ある実行」を示す
- 単なる実行ではなく、「完遂」「やり切る」ことを伝えたいときに便利
「実施」と「遂行」の主な違いまとめ
- 「実施」は「決めたこと・計画を実際に行動へ移す」こと自体を指す
- 「遂行」は「決めたこと・任務を最初から最後までやり抜く、完了する」ことを指す
- 「実施」は“スタート”“現実化”のニュアンス、「遂行」は“過程”“やり切る”を強調
- 「実施」は一時的・単発でも使えるが、「遂行」は一定期間・流れを感じさせる
- ビジネスでは「実施」が活動開始、「遂行」が業務達成・完了のイメージ
「実施」と「遂行」の一般的な使い方は?
- 来月より新サービスを実施します
- 定期的にアンケート調査を実施しています
- 社内研修を実施いたしました
- 緊急対策を速やかに実施する必要があります
- 新制度の実施に伴い、説明会を開催します
- プロジェクトを責任を持って遂行しました
- 上司から与えられた任務を遂行する
- 目標達成に向けて計画を着実に遂行しています
- チームで各自の役割を遂行しました
- 重要なミッションを無事に遂行できました
「実施」が使われる場面
「実施」は、会議や検討、計画段階を終え、実際の行動として何かをスタートさせる場面で最もよく使われます。例えば、「社内アンケートを実施」「新制度の実施」「説明会の実施」など、“実際に行う・始める”という現実的なアクションの開始を伝えたいときに最適です。
ビジネスメールや社内外の案内、公式な発表、報告書などでも広く使われます。「準備」「計画」から「実施」への切り替えを相手に伝えることで、段階的な進捗や実行力をアピールできます。
一方「遂行」は、プロジェクトや業務、タスク、使命など「やり遂げるべき仕事や課題」を最初から最後まできちんと果たす、というニュアンスで使われます。「プロジェクトを遂行」「業務を遂行」「使命を遂行」など、“完了”“やり切る”という達成感や責任感を伴いたい場面に向いています。
ビジネスでは、上司や取引先への報告、評価、ミッション完了の宣言、進捗の説明など、責任や結果を強調したいときに有効です。
失礼がない使い方 目上や取引先に送る場合の丁寧な伝え方
- いつも大変お世話になっております。来月より新制度を実施する運びとなりましたので、ご案内申し上げます。
- 今回の施策は〇月〇日より実施いたしますので、何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
- 新サービス実施に伴い、必要な手続きをご案内いたします。ご不明な点がございましたらお知らせください。
- 本日よりアンケート調査を実施しております。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
- 今回の取り組みを円滑に実施できるよう、引き続きご支援のほどお願い申し上げます。
- 皆様からのご協力を賜り、プロジェクトを無事遂行できましたこと、心より感謝申し上げます。
- 業務遂行にあたり、関係各位のご指導・ご支援を賜り、誠にありがとうございました。
- 新たな計画遂行に向けて、引き続き最善を尽くしてまいりますので、ご指導のほどお願い申し上げます。
- 今後も各自の役割を着実に遂行できるよう、チーム一同努力してまいります。
- おかげさまで重要なミッションを無事に遂行することができました。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。
英語だと違いはある?「実施」と「遂行」のニュアンス
英語での「実施」
「実施」に該当する英単語は「implement」「carry out」「execute」「conduct」などが中心です。
「implement」は「計画や施策を実行・導入する」の意味でビジネスシーンで非常に多用されます。「carry out」は「実行する、遂行する」ですが、どちらかというと「実施」と「遂行」の中間的なイメージもあります。「conduct」は「調査や実験、会議などを実施する」際によく使われます。
- We will implement the new system next month.(来月新しいシステムを実施します)
- The survey will be conducted from next week.(来週から調査を実施します)
英語での「遂行」
「遂行」に近い英単語は「accomplish」「fulfill」「complete」「carry out」「execute」などです。
「accomplish」は「やり遂げる」「達成する」ニュアンスが強く、ゴールまできちんと終えたことを示します。「fulfill」は「任務や責任、義務などを果たす」ことを強調します。「complete」は「完了させる」意味がストレートです。
文脈によって「carry out」「execute」も「遂行」寄りで使うことができます。
- The project was successfully accomplished.(プロジェクトを無事に遂行しました)
- We will fulfill our duties responsibly.(責任を持って業務を遂行します)
メール例文集 ビジネスでの「実施」「遂行」の使い方
- いつもご支援いただきありがとうございます。この度の新制度は〇月〇日より実施することとなりましたので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
- ご案内しておりましたアンケート調査を本日より実施しております。ご協力のほどお願い申し上げます。
- 本プロジェクトの円滑な実施に向けて、引き続きご指導ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
- おかげさまで、全ての業務を無事遂行できましたこと、深く感謝申し上げます。
- 計画遂行にあたり、各部門との連携を一層強化してまいりますので、今後ともご協力のほどお願いいたします。
- 新サービス開始に伴う各種対応を着実に実施してまいりますので、ご安心ください。
- 皆様のご協力により、プロジェクトを予定通り遂行することができました。厚く御礼申し上げます。
- 今後も責任を持って業務を遂行してまいりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
- 今回の施策実施に際し、必要な資料やご案内を随時ご提供いたします。
- 全社一丸となって、各自の役割を遂行してまいりますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
「実施」「遂行」相手に送る際・伝え方の注意点・まとめ
「実施」と「遂行」は、どちらも「物事を進める」「実行する」意味を持つ言葉ですが、そのニュアンスや使い方にははっきりとした違いがあります。「実施」は、計画や決定事項を現実の行動として開始する、あるいは具体的なアクションに移す段階で使う言葉です。例えば、新制度やサービスの開始、調査の開始など、実際に“始める・行う”ことを強調したいときにぴったりです。
一方で「遂行」は、「計画や任務、目標を最初から最後までやり遂げる、きちんと終わらせる」ことに焦点を当てています。業務やプロジェクトなど、一定の期間や流れがある仕事を責任を持って達成したいとき、または達成したことを報告したいときに使うと最適です。
メールやビジネス文書では、段階や目的に応じて適切に使い分けることが大切です。「実施」は始めること、「遂行」はやり切ること。これを意識することで、伝えたい内容がより正確かつ相手に分かりやすく届きます。
また、目上の方や取引先に対しては、丁寧な言葉遣いや背景説明、今後の協力への感謝の気持ちを加えることで、より良い信頼関係が築けます。
「実施」だけで終わらず、その後の「遂行」まで責任感や誠実さを持って伝えることで、安心感や信頼感を高めることもできます。
ぜひ、日常業務やビジネスメールでこの違いを意識し、適切に使い分けてみてください。それだけでコミュニケーションの質がぐっと高まります。