ダブルケアってなに?
「ダブルケア」という言葉を聞いたことがありますか?これは、子どもを育てながら、同時に親や義理の親の介護もしている状態のことをいいます。
たとえば、小学生の子どもがいて、同時に高齢の親の食事や入浴の手伝い、病院への付き添いもしている…そんな状況です。
「子育て」だけでも時間も体力もたくさん必要ですが、そこに「介護」が加わると、毎日がとても忙しくなります。これは特別な家庭だけではなく、これからの日本で誰にでも起こりうることなんです。
ダブルケアが増えてきた理由
ダブルケアが増えているのは、いくつかの理由があります。
一つは、結婚や出産の年齢が昔よりも遅くなったことです。30代や40代で子育てをしていると、ちょうどその頃に親が70代や80代になり、介護が必要になる場合が多いのです。
もう一つは、医療の進歩で寿命が延びたこと。長生きできるのは素晴らしいことですが、その分、年をとってからの生活の手助けが必要な時間も長くなります。
このように、家庭のライフサイクル(人生の流れ)と社会の変化が重なって、ダブルケアを経験する人が増えてきています。
こうなりやすい家庭の特徴
ダブルケアになるのは、偶然や運もありますが、家庭の状況によってなりやすさが変わります。
たとえば、兄弟や姉妹が少ない家庭では、親の介護を分担できる人がいないため、子育て中の人に負担が集中します。
また、親の家と自分の家が近く、すぐに駆けつけられる距離に住んでいる場合も、介護を引き受けやすくなります。
もちろん、介護をすること自体は家族への愛情から始まりますが、無理が重なると体や心に負担がたまりやすくなります。
ほかの育児や介護とのちがい
ダブルケアは、単に「育児と介護を別々にやること」とは少し違います。
育児は、時間が経つと子どもが成長し、自立していきます。一方で介護は、年を重ねるにつれて手助けの量が増える傾向があります。
つまり、育児は少しずつ楽になりますが、介護は少しずつ大変になる場合が多いのです。
この二つを同時にこなすのは、時間や体力だけでなく、気持ちの切り替えもとても難しいことです。朝は子どもに元気いっぱいで接し、午後は親の病院で真剣な話を聞く…そんな日常が続くと、気持ちのアップダウンが激しくなります。
社会で話題になりはじめたきっかけ
ダブルケアという言葉が社会で広く知られるようになったのは、新聞やテレビで特集されるようになったからです。特に2010年代に入り、政府や自治体の調査で「ダブルケアをしている人の増加」が数字で示されるようになりました。
これによって、「自分だけが大変なのではない」ということがわかり、同じ立場の人たちがつながるきっかけにもなりました。
ただし、まだ支援制度は十分とはいえず、知っている人と知らない人で大きな差があります。
だからこそ、こうした言葉や実態を広く知ることが、助け合いの第一歩になります。
ダブルケアが生活にあたえる影響
ダブルケアでまず感じるのは、とにかく時間が足りないということです。
朝は子どもの学校や保育園の準備をし、そのあと親の朝食や薬の準備。昼には買い物や掃除、午後は病院の付き添い。夜は子どもの宿題を見て、親の入浴や就寝の手伝い…こうした流れが毎日続きます。
自分のための時間はほとんどなく、趣味や休養は後回しになります。1日が終わるころには「今日も自分のことは何もできなかった」と感じる人も多いのです。
お金の負担がふえる
介護と育児の両方にはお金がかかります。
育児では教育費や習い事の費用、介護では医療費や介護用品、交通費がかさみます。たとえば介護用ベッドや車いす、紙おむつなどは毎月の出費として積み重なります。
「介護保険」を使えば費用の一部は国や自治体が負担してくれますが、それでも全額ではありません。さらに、介護や育児のために働く時間を減らすと収入も減り、家計のやりくりがますます難しくなります。
心や体がつかれる
ダブルケアは体だけでなく、心にも大きな負担をかけます。
朝から晩まで動き続けることで体力が消耗し、慢性的な疲れや肩こり、腰痛に悩まされる人も少なくありません。
さらに、時間やお金の不安、人との関係の変化など、精神的なストレスも積み重なります。ストレスがたまると、気分が落ち込んだり、集中力がなくなったりと、日常生活にも影響が出ます。
心と体はつながっているので、どちらかが弱るともう片方にも悪影響が及びます。
家族の気持ちや関係が変わる
介護や育児に多くの時間を使うことで、夫婦やきょうだいとの関係にも変化が出ることがあります。
「なぜ自分ばかりが負担をしているのか」と感じたり、「もっと協力してほしい」と思うことが増えたりします。逆に、周囲からは「あなたがやってくれるから安心」と任されすぎる場合もあります。
こうした偏りが続くと、家族内で不満やすれ違いが生まれ、関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
自分の将来の予定が変わる
ダブルケアは、自分の人生計画にも大きな影響を与えます。
本来なら転職や資格取得、引っ越し、旅行などを計画していた人も、介護や育児のために先延ばしせざるを得なくなります。
時間が経つにつれて、その計画を再開するのは難しくなり、「このまま自分の人生が終わってしまうのでは」という不安を感じる人もいます。
将来への道筋が見えにくくなることは、精神的にも大きなストレスになります。
ダブルケアになりやすい人・子育て中に親が高齢になった人
ダブルケアは、子どもを育てている時期と親の介護が必要になる時期が重なることで起こります。
最近は結婚や出産の年齢が昔より遅くなってきています。30代後半や40代で子どもがまだ小さい時期に、親が70代や80代になって介護が必要になる…というケースは珍しくありません。
子どもの手がまだかかる時期に介護も同時に始まると、生活のほとんどが家族の世話に費やされ、自分の時間はほとんどなくなってしまいます。
兄弟や姉妹が少なく助けがない人
兄弟や姉妹がいれば、介護の負担を分け合うことができますが、少子化の影響で兄弟姉妹がいない、または遠方に住んでいて助けを頼めない人も増えています。
その場合、介護の責任が一人に集中します。仕事も子育てもしている人にとって、この負担はとても大きなものになります。
親の通院や介護サービスの手配、日常の世話まで全部を自分でやらなければならないこともあります。
ひとりで子どもを育てている人
シングルマザーやシングルファザーのように、一人で子どもを育てている場合は、もともと育児の負担が大きいです。そこに介護が重なると、精神的にも体力的にも限界を感じやすくなります。
頼れるパートナーがいないため、介護の急な予定変更にも自分だけで対応しなければなりません。
経済的にも負担が重くなり、仕事を減らせば収入が減る、でも働きすぎると介護や育児に支障が出る…という板ばさみの状態になりやすいです。
近くに親せきや頼れる人がいない人
実家が遠方にある、または親せきとの付き合いが薄い場合、介護を分担してくれる人がいません。
こうした状況では、病院の送迎や日常の世話をすべて自分で行う必要があります。さらに、地域の支援サービスを利用するためにも、自分で情報を集め、手続きする手間がかかります。
サポートしてくれる人が近くにいないと、ちょっとした休息も取りづらくなります。
仕事も家庭もひとりで支えている人
共働き世帯が増えたとはいえ、家事や育児、介護の多くを自分一人でこなしている人も少なくありません。
こうした人がダブルケアに直面すると、仕事と家庭のバランスをとるのが非常に難しくなります。休みが取りにくい職場だと、介護や子どもの行事に参加できないこともあります。
結果的に、自分の体と心を削って両立を続けることになり、長期的には健康を損ねる危険もあります。
ダブルケアを助ける制度やサービス
介護には「介護保険」という制度があります。これは、40歳以上の人が保険料を払い、介護が必要になったときに費用の一部を国や自治体が負担してくれる仕組みです。
利用するには「要介護認定」という手続きが必要で、専門の調査員が本人の生活や体の状態を見て、どのくらいの介護が必要かを決めます。
認定を受けると、訪問介護(ヘルパーさんが家に来てお世話をする)やデイサービス(昼間に施設で過ごす)などを、1割から3割程度の負担で利用できます。
ダブルケアの負担を少しでも減らすためには、早めに申請しておくことが大切です。
育児の支援とあわせて使えるかどうか
育児にも支援制度があります。例えば、保育園や幼稚園の利用料を一部補助してくれる制度、児童手当(月ごとに支給される子どものためのお金)、病児保育(病気の子どもを預かってくれるサービス)などです。
ダブルケアの場合、介護保険と育児支援を同時に使える場合がありますが、制度ごとに申請方法や条件が違います。
窓口がバラバラなことも多く、知らないと使えないままになってしまうこともあるため、役所や地域の相談窓口で一度まとめて相談することをおすすめします。
地域包括支援センターの役わり
地域には「地域包括支援センター」という、高齢者やその家族を支えるための相談窓口があります。
ここでは、介護保険の申請方法やサービスの紹介、介護に関する悩み相談ができます。ケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)とつながるきっかけにもなります。
ダブルケアのように複雑な状況でも、必要な制度を組み合わせて提案してくれるので、まずは一度相談してみると、思っていた以上に助けてもらえることがあります。
保育園や学童と協力する
子どもの預け先を確保することは、ダブルケアの大きな助けになります。
保育園や学童では、延長保育や一時預かりといった柔軟なサービスを行っているところもあります。介護で急に外出が必要になったときにも、こうした仕組みがあると安心です。
施設の先生やスタッフと普段からコミュニケーションをとっておくことで、急なお願いもしやすくなります。
会社の介護休暇や育児休暇を使う
働いている場合は、会社の制度も確認しておきましょう。
法律では、一定の条件を満たす労働者に「介護休暇」や「介護休業」、「育児休暇」を取得する権利があります。介護休暇は短期間、介護休業は最長93日まで休める制度です。
職場によっては在宅勤務や時短勤務が可能な場合もあります。上司や人事担当に状況を伝え、無理なく働ける形を探すことが、ダブルケアを長く続けるためのポイントです。
ダブルケアの問題をへらすために
最近、国や自治体もダブルケアの問題に注目し始めています。
たとえば、介護と育児を同時にしている家庭を対象にしたアンケートや実態調査が行われ、その結果をもとに新しい支援制度が検討されています。
介護サービスや保育サービスの利用料を減らす補助制度を設ける地域も出てきました。
こうした制度がもっと広がれば、時間やお金の負担を少しでも軽くすることができます。
会社や職場の理解を広げる
ダブルケアをしている人が安心して働き続けられるように、職場の理解も大切です。
介護や育児で休みが必要になったときに、柔軟に対応してくれる職場なら、仕事をやめずに続けられます。
具体的には、在宅勤務や時短勤務、フレックスタイム(出勤や退勤の時間を自分で決められる制度)などの導入です。
働く人が声を上げやすい雰囲気を作ることも、負担を減らす大事な一歩です。
地域や民間のサービスを使う
ダブルケアは家族だけで抱え込むと限界が来やすいです。
地域のボランティア団体や、民間の家事・介護サービスをうまく活用すれば、家事や送迎などの一部を任せることができます。
もちろん費用はかかりますが、「自分が休む時間」を作るための必要な投資と考えると、長く続けるためには意味があります。
また、地域の交流会やサークルに参加して、同じ立場の人とつながるのも心の支えになります。
情報や相談できる場所をふやす
ダブルケアの問題は、情報不足によってさらに大変になることがあります。
介護保険や育児支援、地域サービスの情報が一か所でわかる窓口があれば、探す手間や時間を大幅に減らせます。
また、電話やオンラインで気軽に相談できる場所が増えれば、外出できない人でも支援につながりやすくなります。
「どこに相談すればいいのかわからない」という状態をなくすことが大切です。
助けが届きにくい家庭への対応
すべての家庭が同じように支援を受けられるわけではありません。
たとえば、制度を知らないまま困っている人や、役所に行く時間が作れない人、申請がむずかしいと感じる人もいます。
こうした家庭にこそ、行政や地域が積極的に声をかけ、情報を届ける必要があります。
支援を受けることは恥ずかしいことではなく、より良い生活のための権利だという考えを広めていくことも重要です。

