小学校1年の算数、図形の認識・算数を好きになる

小学校1年の算数、図形の認識・算数を好きになる

小学校1年の算数、図形の認識・算数を好きになる

図形の認識(正方形・長方形・三角形・円・円柱・円錐・箱・球)をテーマとする全5回構成の第1回です。今回は**平面図形(正方形・長方形・三角形・円)**に焦点を当て、幼児〜小学校低学年の子どもが図形にどう出会い、どのように理解していくかを丁寧に解説します。
以降の回では立体図形や思考力とのつながり、応用展開まで扱います。

平面図形の出発点 ―「見て」「触って」「話す」ことで形が育つ

はじめに ― 図形学習の土台は「体感と思考の往復」

図形の学びは、数とちがって“目に見える”“触れられる”対象であるぶん、子どもにとっては入りやすい反面、「名前を覚えただけ」で終わってしまいやすい領域でもあります。
けれども、形には数とは違う学びの面白さがあります。それは、「関係性」「空間」「構造」などを感覚的にとらえる力を育てることです。

この回では、まず「平面図形」と呼ばれる**2次元の基本形(正方形・長方形・三角形・円)**について、家庭での関わり方を中心に、視点・声かけ・遊び方を具体的にご紹介します。


正方形と長方形 ― 「同じ形」と思ってしまうのが自然なスタート

子どもの認識:

・どちらも「四角」であるため、区別がつきにくい
・見た目の大きさや形に影響されて、印象で判断しがち
・「正方形=折り紙」「長方形=ノート」という連想に頼る

目指す学び:

・正方形:4つの辺の長さが等しく、すべての角が直角
・長方形:向かい合う辺が等しく、4つの角が直角

実践方法:

・折り紙を実際に折って、「折っても同じ形になる」ことを体感
・定規で4辺の長さを測って、「正方形はぜんぶ同じ長さだね」と確認
・ノートや本、画用紙などを使って「これは正方形かな?長方形かな?」とクイズ形式に

声かけ例:

・「この形のどこが同じ長さかな?」
・「正方形ってどんなときに見つかる?長方形は?」
・「全部の角、直角かな?曲がってるところはある?」

→ ポイントは、形の“見え方”ではなく、性質に目を向ける導きをすることです。


三角形 ― 「形が変わっても三角形」の理解が重要

子どもの誤解:

・とがっていない三角形(鈍角三角形)を「三角形じゃない」と思い込む
・形の印象に引きずられて「きれいな形」だけを三角形と考えてしまう

本来の定義:

・「辺が3本、角が3つ」の図形
・どんなに形がゆがんでいても、三角形であれば三角形

遊びと発見:

・厚紙でいろいろな三角形(正三角形、二等辺三角形、鈍角三角形など)を作る
・「これは三角形?なんでそう思う?」と形を分類してみる
・三角定規や看板、家の屋根などで「見つけてくる」活動も効果的

声かけ例:

・「この三角はどこが広がってるかな?」
・「角の数は同じ?辺の数は?」
・「これも三角形なんだね。どんな三角形か名前をつけてみる?」

→ 「見慣れた形」から離れられるかが、図形の本質に気づく第一歩です。


円 ― 「境目がない」「どこから見ても同じ」という特異性に気づく

子どもの見方:

・円=「まる」=「コイン、ふた、お皿」などの見た目で認識
・どこが「まるい」のか、中心との関係が見えにくい
・「回る」「転がる」という性質が理解の入り口になる

学びの観点:

・円は「すべての点が中心から等しい距離にある」図形
・角がない、辺もないという特殊性があり、「まるいこと自体が特徴」

実体験活動:

・コップの底やテープの芯で型をとる
・コンパスを使って「同じ長さで回す」と円ができることを体感
・ペットボトルのふたなどを転がして「まるは動き方もちがう」と気づかせる

声かけ例:

・「このまる、どこがはじまりかな?」
・「どこまで行ってもまるのままって不思議だね」
・「この形はどこから見ても同じに見える?四角とちがうところは?」

→ 円の学びは、“まるいことの不思議さ”に気づかせるところから始まります。


「形を教える」のではなく、「形を一緒に見つける」

平面図形の理解は、「正解を言える」ことよりも、「なぜそう思ったかを説明できる」ことを目指すべきです。
子どもが自分のことばで、「ここが同じ長さ」「これはとがってる」「これはまるくつながってる」と言えるようになったとき、**図形は記号ではなく“意味のある形”**として認識されていきます。


立体図形を感じる ―「手で動かして、目で見て、頭で組み立てる」

はじめに ― 立体図形は「見る力」と「想像する力」を鍛える学び

平面図形が“形の認識”だとすれば、立体図形は“空間の認識”です。
目に見える面だけでなく、「見えない裏側」「回したときの形」「上から見たとき、横から見たとき」といった視点の移動や空間のイメージ操作が必要になります。

つまり立体図形の学びは、算数と同時に論理的な思考や視覚認知力を育てる場でもあります。


箱(直方体・立方体)― 生活の中にある「組み合わせの形」

特徴:

・面がすべて四角(正方形や長方形)
・辺の長さや角の大きさが一定
・展開図(平面にひらいた形)を想像する練習にも最適

家庭でできる活動:

・空き箱(ティッシュ箱・お菓子の箱など)を一度ばらして、展開図にしてみる
・そのあと、子どもと一緒に「もとの箱に戻せるかな?」と折って立体にする
・折り紙を使って、小さな直方体・立方体の箱を折る

声かけ例:

・「この面、どの向きに折れたら立体になる?」
・「上から見たら、どの面が見えると思う?」
・「同じ面が何枚ある?」

→ “見る→触る→戻す”という体験の流れで、「形は作れるもの」という感覚を育てます。


円柱 ― 「回しても同じ」から「まるい面とまっすぐな面」へ

特徴:

・上下は円の面、まわりは曲がった面(側面)
・転がせる・立てられるという性質
・上下左右どこから見ても「高さ」と「まるさ」の関係が変わらない

身近な例:

・トイレットペーパー、ペットボトル、缶、グラス、電池

活動例:

・実際に円柱型の物を転がす
・「転がるけど、止まるときは面で立つ」という特性に気づかせる
・紙を巻いて円柱をつくり、「側面は実は長方形」だと教える

声かけ例:

・「まるいところはいくつある?横の面はどんな形?」
・「この形は転がるかな?どうして?」
・「立てるとどこが下になる?それってなんで?」

→ 平面図形との共通点(円・長方形)を発見できると、図形間の理解が深まります。


円錐 ― 「ささる」「とがる」「回せる」独特の形を体験する

特徴:

・底面は円、頂点に向かって細くなる
・回すと円になる、尖った先がある
・見る方向によって形が大きく変わる(上からは円、横からは三角形)

身近な例:

・アイスクリームのコーン、交通標識、紙コップ、パーティー帽

活動例:

・コーン型の紙を切って、広げてみる(→実は“扇形”の面を巻いて作られている)
・転がしたときに「円を描きながらまわる」動きに注目する
・横から見ると「三角形に見えるね」と、形の変化を意識

声かけ例:

・「とんがってるのはどこ?何に似てる?」
・「これはどこを回した形だと思う?」
・「下の円、上のとんがり、横の面はどんな関係かな?」

→ 円錐は“変化”を楽しめる図形です。見る方向の違いを比べることがポイント。


球 ― 「まるいとは何か?」を体で感じる図形

特徴:

・すべての面がまるく、どこから見ても同じ
・転がる方向に制限がない(全方向に滑る・転がる)
・面も辺も角もない、唯一の形

身近な例:

・ボール、ビー玉、地球儀、卵(少しちがう)、水滴の模型など

活動例:

・球を手に取って転がす、転がる方向を観察
・四角の箱との転がり方を比べる
・粘土で作った球体を触らせ、「まるいってこういうことなんだね」と確認

声かけ例:

・「これ、どこから見ても同じに見える?ほんと?」
・「角ってある?さわってみて」
・「この形、どうしてどっちにも転がるんだろう?」

→ 球は、「まるさ」や「均等さ」の感覚を養う最適な素材です。


最後に ― 立体図形は「動き」「向き」「変化」を観察する学び

立体図形は、ただ形を知るだけでなく、
・向きを変えるとどう見えるか?
・展開したらどんな形か?
・平面とのちがいはなにか?
を体感することで、空間の思考力・予測力・構造理解を自然に伸ばすことができます。


平面と立体のつながり ―「形は組み合わせでできている」ことに気づく

はじめに ― 図形の“仕組み”を考える視点が育つとき

立体図形は、いくつかの平面図形で構成されています。
子どもがそれに気づくと、図形は「完成されたもの」ではなく、「組み合わせてできるもの」「広げられるもの」という構造的な見方へと進んでいきます。

この“構造をとらえる感覚”は、図形の学習だけでなく、算数全体(数の分解・面積・体積など)の思考にも深く関わります。


「面」を発見する練習 ― 立体は平面の組み合わせ

直方体・立方体の面に注目する

実践例:

・ティッシュ箱や牛乳パックを使って、「何枚の面がある?」と問いかける
・面を1枚ずつ色紙で貼って、数えてみる
・「この面は四角いね」「この面と同じ形のはどこ?」と確認

子どもにとっての発見:

・「立体って、実は四角が何枚か集まってるんだ」
・「同じ面が向かい合ってるね」
・「箱の形を全部広げたら、どうなるかな?」

立体=面の集合体という見方が芽生えることが大切です。


展開図の理解 ―「立体をひらいて考える」力

活動の流れ:

  1. 空き箱を切って展開図にして見せる(親が実演)
  2. 子どもに、「この面が上だったんだよ」「これはどこの面?」と質問
  3. 展開図の絵を見せて、「この面を折るとどこになるかな?」と予測させる
  4. 自分で展開図から箱を組み立ててみる

育つ力:

・立体の構造を、頭の中で回したり折ったりできる
・見えない部分を想像する力(空間認知)
・図を見て“動かせる”という感覚的処理力

声かけ例:

・「この部分を立ち上げたら、どこになると思う?」
・「ふたを閉じたら、ここは見える?見えない?」
・「全部で何枚あればこの箱になるかな?」

→ 展開図は、単なる図形ではなく「思考の操作」です。子どもが図形を動かせるようになることが最大の目標です。


「辺」と「角」に注目する練習 ― 数の世界とつながる図形の見方

基本の確認:

・「辺」は線のこと、「角」は線と線が出会ったところ
・三角形には辺が3つ、角が3つ/正方形には辺が4つ、角が4つ
・立体では辺が“線のつながり”に、角が“とがった部分”になる

活動例:

・積み木や折り紙で、辺と角の数を数える
・直方体の模型を見て「辺は何本?角はいくつ?」とたずねる
・平面と立体の違い(辺と角の数が増える)に気づかせる

声かけ例:

・「ここをさわってみて。これが“辺”っていうんだよ」
・「この四角には何本の辺がある?何個の角がある?」
・「三角形って、どこまでが三角?これが三角に見える?」

→ 図形の言葉を“数”で捉えると、算数との結びつきが深まります。


平面と立体の「対応関係」に気づく

重要な視点:

・「立体の面=平面図形」
・「立体の角=平面図形の角が交わるところ」
・「立体の辺=平面図形の辺と辺のつなぎ目」

この視点が身につくと、立体が“平面図形の進化形”のように見えてきます。

例:

・立方体の面はすべて正方形 → 平面図形で見た「正方形」がここでも使われている
・円柱の側面は長方形 → 実は円柱を切ると「ながーい長方形」になることに気づく


まとめ:図形の世界は「見て終わり」ではなく「作って、動かす」もの

平面と立体のつながりを知ることで、子どもは形を単なる記号や名称でなく、構造や関係の中で理解するようになります。
それは、図形が「覚える」ものから「考えられる」ものへと変わる大きな転機です。


図形を“使って考える” ― 比較・分類・説明の力を図形で育てる

はじめに ― 図形は“思考のトレーニング場”になる

図形の学びは、見て覚えるだけではありません。
形を「どうちがう?」「なんで同じ?」「どう分けられる?」「どう言えば伝わる?」と考えることで、分類力・観察力・表現力・論理力といった“考える力”を育てることができます。

これはすべての教科につながる土台であり、「図形に強い子は、言葉と論理に強い」と言われる所以です。


図形を比べる ―「どこが同じ?どこがちがう?」を言葉にする練習

活動の例:

・三角形カードを数種類用意(正三角形、二等辺三角形、鈍角三角形など)
・「どれとどれが似てる?なんでそう思った?」と聞く
・「辺の長さ」「角のひろがり」「左右対称か」などの特徴に気づかせる

比較の視点:

・辺の本数/長さ/そろい具合
・角の数/角度の大小/直角があるかどうか
・左右対称かどうか(折って重なるか)
・回すとどう見えるか(回転対称)

声かけ例:

・「この2つの三角形、何が同じで何がちがう?」
・「こっちはとんがってるけど、こっちは広がってるね。なんでかな?」
・「この形を説明するとき、どんな言葉を使う?」

→ 「なんとなく同じ」「なんかちがう」から、「何がどうちがう」へ。観察から説明への変化を支えることが重要です。


図形を分類する ―「条件に注目して分ける」力を育てる

活動の例:

・いろいろな図形(円・正方形・長方形・三角形など)を広げて並べる
・「同じ仲間に分けてみよう」と自由に分類させる
・そのあとで「なんで分けたの?」「この形はどっちに入る?」と問いかけ

発見されやすい分類ルール:

・角の数(例:3つ、4つ、なし)
・辺の長さ(全部同じ、ちがう)
・辺の形(まるい、まっすぐ)
・対称性(折って重なるか)
・回転できるかどうか

声かけ例:

・「この形たちは、なんのルールで分けたの?」
・「この形は、どのグループにも入る?入らない?」
・「同じ形をもっと見つけられるかな?」

自分でルールを作って分類する力は、図形に限らず算数・理科・国語にもつながります。


図形を見つける ―「観察の目」と「イメージする力」の育成

活動の例:

・「家の中で三角形を3つ見つけてこよう!」と形探しゲーム
・写真や図の中に、隠れた図形(窓の中の正方形、看板の円形など)を探させる
・身の回りにあるものを見て「どんな形でできてる?」と聞く

声かけ例:

・「これ、何の形に見える?」
・「見た目は違うけど、形は似てない?」
・「この形の中に、別の形がかくれてるかもよ?」

→ 「観察→発見→説明」というプロセスを通じて、図形を意識的に見る力と語る力が育ちます。


図形を説明する ―「言葉で図形を伝える」力をつける

活動の例:

・カードを1枚選び、相手に見せずに「言葉だけで」説明する
・聞いた人はその言葉をもとに、紙に形を描いてみる
・終わったら答え合わせ。「ここがちがったね」「もっと詳しく言えばよかったかも」と話し合う

鍛えられる力:

・図形の性質を整理する力
・順序立てて話す力
・相手に伝わるように言葉を選ぶ力

声かけ例:

・「どうしてその形が正方形ってわかったの?」
・「もっと正確に言うと、どんな説明になるかな?」
・「相手に伝えるには、どこを先に言ったほうがよかった?」

→ 図形の「見た目」を「ことば」で置きかえる練習は、思考と言語をつなぐ最高のトレーニングになります。


図形は「考える力を鍛える教具」になる

ここまでに紹介したように、図形は単なる形の学習ではなく、
・分類する力
・違いを見つける力
・共通点を探す力
・論理的に説明する力
・空間的に想像する力
など、思考力の土台を自然に鍛える道具として活用できます。

保護者の皆さまには、ぜひ「図形で遊ぶ」「図形を語る」「図形で考える」体験を、日常の中でゆっくり支えていただければと思います。


図形は世界を理解する窓 ― 算数・生活・創造力につながる力

はじめに ― 図形は“生きている知識”

図形は教科書の中だけの知識ではありません。
子どもたちの毎日には、図形があふれています。建物、道具、デザイン、地図、遊び、工作、アート――すべてが形で成り立っています。

図形を学ぶとは、形を見抜く目・形を生かす知恵・形をつくる力を育てることです。今回はその応用・発展を解説します。


図形と算数全体のつながり

面積・体積・比・割合・合同・相似へと発展する

図形を学ぶことは、次のような広がりにつながります。

・正方形→面積
・立方体→体積
・三角形→底辺×高さ/図形の分割
・円→円周・半径・円の面積
・相似・拡大図→比例・縮尺
・回転・対称→座標や変換の基礎

→ 小学低学年で「形に親しむ」経験が、中高学年の抽象的な図形計算や幾何の理解の土台になります。


図形と生活のつながり

見る・選ぶ・使う――日常にある「図形的判断」

身の回りには図形的判断があふれています。

・家具の配置(長さ・角度・面の大きさ)
・荷物の詰め方(立体の空間利用)
・地図の読み方(位置・向き・縮尺)
・交通標識(形による分類・注意の伝達)
・道具の選び方(円柱か角柱か、持ちやすさ、転がりやすさ)

図形の感覚がある子どもは、「どう置く?どう見る?どう使う?」という生活判断力も高まります。


図形と創造力のつながり

形をつくる・組み合わせる・変える――創造活動の基礎

図形を使った創作は、思考と表現の両方を鍛える絶好の機会です。

活動例:

・折り紙:対称性・折りの順序・展開構造
・工作:立体の組み合わせ・面の接着・強度と形状
・お絵かき:丸・三角・四角を組み合わせて物や景色を描く
・パズル:形の分解と合成・回転・合わせ方を考える

→ 図形は「完成された知識」ではなく、「動かして試す道具」として使うことで、創造力や試行錯誤力が高まります。


図形は“思考と言語の橋渡し”になる

図形を見て、触って、考えて、言葉にする――このプロセスが、
・語彙の増加(角・辺・左右・対称・回転・広がり など)
・説明力の育成(相手に伝える順序、特徴を抽出する力)
・推論の芽生え(だからこの形だ、という理屈)
など、思考と言葉の架け橋をつくります。

→ 図形の理解が深い子ほど、「言葉で考え、図で伝える」力が豊かになります。


保護者にできること ― “図形のある暮らし”を楽しむ

図形を「教える」必要はありません。
家庭では、形に気づく・語る・触る・動かすことを、一緒に楽しむだけで十分です。

具体的な関わり方:

・「この道のかたち、面白いね」
・「このお皿って、まる?それともなにかに似てる?」
・「この箱って、上から見るとどう見えるかな?」
・「この積み木、どうやったら立つと思う?」
・「この形、折ったらどうなると思う?」

図形は問いを生む素材です。大人が正解を与えるよりも、一緒に考える時間こそが、思考と感性を伸ばします。


おわりに ― 図形を学ぶことは、「世界の見え方」を学ぶこと

図形の学びを通じて、子どもは目に見える世界を「意味のある構造」としてとらえるようになります。
まるい、しかくい、三角、細長い、曲がっている、広がっている――すべてが言葉になり、理由になり、表現になります。

図形は、算数であり、生活であり、思考であり、そして“ことばの前の理解”でもあります。

どうぞ、日々の中で図形を「使い、語り、遊ぶ」場面を重ねていただければ、それが必ずお子さまの“考える力”につながっていきます。

「どうしてできないの?」の前に ― 大人と子どもの“考え方”のギャップに気づくこと

大人は、たとえば「7+5」や「10-4」といった計算を、ほとんど反射的に答えることができます。これは、長年の経験や反復練習によって頭の中に定着している「結果の記憶(暗記)」によるものです。つまり、「どう考えたか」ではなく、「もう知っているから言える」状態です。

ところが、子どもはまったく違います。彼らにとって「7+5」は、まだ頭の中で具体物や指、ブロックなどをイメージしながら、「7に何を足すと10になる?」「残りはいくつ?」と数を動かして構成している途中なのです。

それにもかかわらず、大人が「どうしてこんな簡単なことができないの?」と問い詰めてしまうと、子どもは「考えること」をやめ、「当てずっぽうで答える」「とりあえず暗記しようとする」という行動に出ることがあります。これは、子どもの思考を途中で止めてしまう大きな障害になります。


親が無意識にしている「暗記の前提」に気づくこと

多くの保護者は、自分がすでにできる計算を「自然にできた」と思い込んでいますが、それは小さいころに誰かから教わったり、何度も経験した結果、記憶に定着した「知っている答え」に過ぎません。つまり、考えているのではなく、思い出しているのです。

しかし、子どもはその「考える体験」そのものを、まさに今積み上げている最中です。「7と何で10になるか?」「5をどう分ければ使いやすいか?」という問いに、自分の力で気づいていくことで、数に対する見通しや構造の理解が育ちます。


考えさせることの価値 ―「正解」よりも「理解」が大切

大人が答えをすぐに与えてしまうと、子どもは「そういうものなんだ」と覚えるだけになります。その結果、「応用がきかない」「文章題になるとわからない」「順番が変わると混乱する」といった現象が起こります。

反対に、「どうしてそう思ったの?」「他にも考え方あるかな?」と問いかけ、考える時間を与えることで、子どもは数の意味や関係性を少しずつつかんでいきます。これが、計算力ではなく数学的な思考力を育てる鍵です。

たとえば、「9+4は?」「えーと……9と1で10、あと3……で13!」と、少し時間がかかっても、自分の頭で考えて出せた答えには「理解」が伴っています。これこそが、学力の土台であり、暗記ではたどりつけない本当の力です。


まとめ

「できないのは当たり前」と受け止めることが、実は最初の一歩です。大人が無意識に使っている「暗記された答え」と、子どもが今まさに組み立てようとしている「考える過程」には、大きな違いがあります。

答えの正しさだけを見ず、考えている途中の姿を認めてあげること。それが、子どもが「考えることを楽しい」と思える力を育て、「数を理解する力」として一生残っていきます。

子どもが何度も同じことを聞いてきたり、間違えたりするたびに、「今この子は、頭の中で数を動かそうとしているんだな」と、ひと呼吸おいて見守っていただけたら、それが何よりの学びの支えになります。