魔法省って、いつどうやってできたの?

魔法省って、いつどうやってできたの?

魔法使いたちの「国」じゃなくて「役所」

魔法省(Ministry of Magic)は、魔法使いの世界における「政府」みたいな場所。でも、それは王様がいるような“国”じゃなくて、あくまで“役所”です。魔法使いたちはひとつの国にまとまってるわけじゃなくて、イギリスならイギリス、フランスならフランス、アメリカならアメリカの中に、それぞれ「魔法社会」が隠れるように存在しています。

だからイギリスの魔法使いたちは、マグル(非魔法族)に見つからないように気をつけながら、その中で魔法使いだけのルールを作って生活している。そのルールをまとめたり、守らせたり、いざこざが起きたときに裁いたりするのが「魔法省」の仕事。つまり、魔法使いの中だけの「お役所」なのです。


映画や小説の中で描かれた魔法省の姿

混乱と権力と恐怖の場所

シリーズで魔法省が本格的に登場するのは『炎のゴブレット』以降。ハリーが名前を勝手に三大魔法学校対抗試合に登録されてしまった時、魔法省の人たちは彼を信じようとしませんでした。特にパーシバル・クラウチ・シニアの態度や、コーネリウス・ファッジの思い込みには「大人って、ちゃんと見てないんだな…」と感じさせられます。

その後、『不死鳥の騎士団』ではもっと露骨に描かれます。魔法省は、ヴォルデモート復活の事実を信じず、ハリーやダンブルドアを“嘘つき”と決めつけて攻撃します。教育にも口出ししてきて、アンブリッジをホグワーツに送り込んだのも魔法省。思い通りにしたい気持ちで、学校まで支配しようとしていたのです。

『謎のプリンス』や『死の秘宝』では、魔法省はついに完全に食い荒らされます。死喰い人たちに乗っ取られ、スクリムジョールやその他の職員は排除され、魔法族以外への差別をむき出しにした「恐怖の場所」へ変わります。血統で人を分け、マグル生まれは“登録”され、拘束され、処刑される。この時の魔法省は、もはや「正義」の場所ではありませんでした。


『呪いの子』での魔法省

ハーマイオニーが魔法大臣!?でも本当に変わったの?

『ハリー・ポッターと呪いの子』では、ハーマイオニー・グレンジャーがついに魔法大臣になって登場します。小説や映画で見せたあの正義感と頭の良さが、ついに権力を手にしたわけですが、じゃあ魔法省自体が完全に良くなったか?と言われると…答えは「うーん、微妙」です。

劇中で描かれる魔法省は、やっぱりまだ「息苦しさ」や「規則だらけ感」が残っていて、誰もが自由に暮らせる場所というよりは、なんだかちょっと冷たい感じがあります。タイムターナー(時間を巻き戻す道具)の存在がまた問題を引き起こしたり、アルバス(ハリーの息子)やスコーピウス(ドラコの息子)が感じている居心地の悪さも、それがまだ根本的には変わっていない証拠かもしれません。


じゃあ、魔法省っていつからあるの?

実は「イギリス魔法省」は1707年にできたってはっきり書いてある

ここが今回のテーマの核心ですね。J.K.ローリングが公式に語った設定によれば、イギリスの魔法省は1707年に設立されたとされています。それまでの間、魔法社会にはいくつかの前身の組織や取り決めがありましたが、「魔法省」という形になったのはこの時からです。

この1707年という年は実はとても意味深です。この年、現実世界のイギリスでは「イングランド王国」と「スコットランド王国」が合併し、グレートブリテン王国が誕生しました。つまり「統一」と「中央集権」が始まった時代。ローリングはそれに重ねて、魔法界でも「バラバラだった力をまとめるために政府をつくった」というストーリーを作ったのではないかと推測できます。

そして初代の魔法大臣は「ユリシーズ・クラブ」。その後はコーネリウス・ファッジ、ピウス・シックネス、ルーファス・スクリムジョール、キングズリー・シャックルボルト…と続いていきます。


なぜ魔法省ができたの?

昔の魔法使いたちは、どうやって決めごとをしてたの?

実は、魔法省ができる前の魔法界には「正式な政府」なんて存在していませんでした。いまでは考えられないことだけど、魔法使いたちはそれぞれが“自分たちで勝手にルールを決めて”生きていたのです。もちろん、それじゃあうまくいかない。

中世の頃(11〜15世紀)は、「魔女狩り」がマグルの間で広まりました。魔法使いが見つかると、火あぶりにされたり処刑されたり。もちろん、本物の魔法使いなら魔法で逃げられることも多かったけど、それでも人間社会との対立はどんどん深まっていきました。

そんな中で、「魔法評議会(Wizards’ Council)」という組織がつくられます。これは、いまでいう国会のようなもの。いくつかの部族的な長老たちや偉い魔法使いたちが集まって、法律っぽいものを作ったりしていたのです。代表的な人物は、バートランド・ド・ボーン(Bertrand de Born)やブリジット・ウェンクロス(Bridget Wenlock)など。といっても、この頃はまだすごく“ゆるい”体制で、守らない人もたくさんいました。


マグルとの争いが限界に達して、「隠れなきゃ」ってなった

その後、世界は大きく変わっていきます。1600年代、マグルの科学が発達していき、「魔法」がただの迷信じゃなく“捕まえて研究すべきもの”だと考えるようになっていきました。魔法使いたちは完全に危険な存在になってしまったのです。

この時代に登場するのが「国際機密保持法(Statute of Secrecy)」です。1692年、国際魔法使い連盟がこれを制定し、「魔法使いたちは、マグルの前で絶対に魔法を使ってはいけない」と決められました。魔法族全体が、“姿を消して隠れること”を選んだわけです。

でも、この法律を守るには、誰かが全体を監視して、ルールを徹底させないといけない。その役目を果たすために、1707年に「魔法省(Ministry of Magic)」が生まれました。


魔法省は「管理」と「隠蔽」のために生まれた

だから、魔法省っていうのは「魔法使いが自分たちの世界をマグルから守るため」に作られたんです。自由や正義のためではなく、「隠れる」ために。そのためには規則が必要で、監視も必要。たとえば…

  • ホグワーツに魔法省の試験官が来る
  • 魔法の品物を販売するには省の許可がいる
  • 魔法生物を飼うには登録が必要
  • 未成年が魔法を使うと通知がいく

などなど、自由を守るための規則というより、“隠すための管理”が強いのです。魔法使いたちの社会は、実はずっと「秘密を守ること」を一番にしてきた。それはたぶん、ローリングが魔法社会を“夢の国”として描いていない証拠でもあります。


作者は何を伝えたかったのか?

「魔法使いたちも、完璧じゃない」ってこと

J.K.ローリングがこの魔法省を描いたとき、私たちに伝えたかったのは、「魔法使いだからといって、素晴らしい社会を作っているわけではない」ということだと思います。魔法を使えても、人の心には傲慢さや差別意識、権力欲がある。そのことを、魔法省という存在を通して痛烈に伝えてきた。

シリーズ中、ハリーは魔法省に何度も失望します。『不死鳥の騎士団』では敵のように見えたし、『死の秘宝』では完全に乗っ取られてしまいました。『呪いの子』でも、その体制はまだどこかで堅苦しさを引きずっていた。

魔法省とは、ローリングにとっての「現実世界の縮図」です。理想ではなく現実、夢ではなく苦しさ。魔法があっても、人間の社会は同じように問題だらけ。それを中高生の読者にもわかるように描いたのが、ハリポタのすごさの一つだと思います。


魔法省の中ってどうなってるの?

いくつもある部署、でも本当に機能してるの?

魔法省って聞くと、魔法大臣がいて、あとは偉い人たちが会議してるようなイメージがあるかもしれません。でも実際には、魔法省の中には“めちゃくちゃたくさんの部署”があります。そしてそれぞれの部署が、それぞれ違う問題を抱えていて…正直いうと、まともに機能してないところも多いです。

ここからは、その中でも特に有名な部署や、物語の中で大きな影響を与えた場所を一つ一つ取り上げながら見ていきます。見れば見るほど、「あ、この組織ほんとにヤバいかも」って思えてくるかもしれません。


魔法法執行部:ハリーが目の敵にされたあの場所

この部署は、魔法省の中でも最も重要だとされていて、いわゆる「警察+検察+裁判所」が合体したような機能を持っています。でもそれが裏目に出ることも多くて、たとえば『不死鳥の騎士団』で、ハリーがディメンターに襲われて“自己防衛の魔法”を使ったとき、本来なら未成年魔法のルール違反で済むはずのところを、いきなり「尋問」です。しかも、ダンブルドアがいなければ追放されかけてました。

このことからわかるのは、「魔法省は正義じゃなく、都合で人を裁くことがある」ということ。魔法法執行部は、現場の判断よりも“政治的圧力”で動いてしまう。実際にハリーの事件の背景には、魔法大臣コーネリウス・ファッジのダンブルドアへの恐れと不信がありました。


闇祓い局:華やかそうで、めちゃくちゃブラック

闇祓い(オーロー)は、魔法使いの世界でいう“エリートの戦士”です。主に闇の魔法使いを追い詰め、捕まえたり戦ったりするのが仕事。でもその実態はというと、とにかく過酷です。

まず訓練期間は3年以上。ホグワーツ卒業後も、ものすごく厳しい試験と面接を受けなければなれません。スネイプが教えていた「闇の魔術に対する防衛術」だけでなく、薬草学、呪文学、変身術、魔法薬学など、ありとあらゆる魔法を熟知してないといけない。

それなのに、彼らの働く環境はというと、常に危険と隣り合わせ。ヴォルデモートが復活した後は死喰い人の追跡が任され、仲間を失うことも。キングズリー・シャックルボルトのような優秀な闇祓いもいたけれど、あまりにも消耗が激しくて、長くは続けられない仕事なんです。


神秘部:あの「謎の部屋」には何があるの?

神秘部(Department of Mysteries)は、名前からして怪しいけど、本当に怪しいです。ここは“研究部門”として扱われていて、「人間の根源」に関わるもの――たとえば、愛、死、記憶、時間、予言など――を研究しているところ。

でも、この神秘部があることで、魔法省が“何をどこまで知ってるか”が全然わからなくなる。『不死鳥の騎士団』でハリーたちが潜入したとき、そこで見たものは、巨大な時間の回転装置、脳みその入った水槽、記憶を保管する部屋、そして「死のヴェール」。

この「死のヴェール」は、シリウス・ブラックが命を落とした場所です。彼は殺されたのではなく、“あのヴェールの向こうに消えた”のです。誰も戻ってこないその場所に、なぜ魔法省が出入りできるのか、何の目的でそこを管理しているのか――それは物語の中でも明かされません。

つまり神秘部は、「魔法省の持つ最大の闇」。ここを見てしまうと、「魔法省って、本当は何を知ってるの? 何を隠してるの?」という疑問がどんどん膨らんでしまいます。


「監視と抑圧」が当たり前の組織になってしまった

魔法省の中の構造を見ていくと、ある共通点が見えてきます。それは「人を守るため」じゃなく、「人を支配し、監視するため」に作られた部署が多すぎるということ。

  • 未登録のアニメーガスを処罰する部門
  • 魔法動物の使用を監視する部門
  • マグルの記憶を消す部門(忘却部)
  • 血統や出自を調査する部門(『死の秘宝』時代に悪用)

その結果、魔法省というのは「正義の機関」ではなく、「都合のいいように使われる巨大な道具」に変わってしまったように見えます。ハリーたちが戦ったのは、ヴォルデモートだけじゃなく、「そんなふうに歪んだ魔法省そのもの」でもあったのかもしれません。