どうして「一人でやりたがる」のが問題になるの?
小学校受験では「みんなで取り組む力」が見られています
小学校受験の試験内容の中には、「集団行動観察」や「グループ活動」があります。これは、ただ答えを出すだけのテストではありません。何かを話し合ったり、分担して作業をしたり、誰かの意見を聞き入れたり、そういった姿勢が重視される試験です。
ところが、「何でも一人でやりたい」「他の子に任せたくない」「話し合うよりも自分で決めたい」というお子さまは、この場面でつまずいてしまいやすいのです。
学校側が見ているのは、「協力しようとする気持ちがあるか」「相手の立場を考えて動けるか」「全体のために自分を調整できるか」というポイントです。受験というと、つい「一人で完璧にできる子が有利」と思われがちですが、集団の中でどう振る舞うかのほうが、もっと大切にされているのです。
家では「一人でやれるなんてすごいね!」と思ってしまいがちです
確かに、何でも自分でこなそうとする姿勢は、家庭の中では「しっかりしている」「自立心がある」と受け止められることが多いと思います。お友だちと遊んでいても、迷いなく行動し、指示も出せる。そんな様子を見ると、つい「リーダータイプだな」「頼もしいな」と思ってしまうこともあるかもしれません。
ですが、試験の場では少し見え方が変わります。「人の話を聞かない」「自分ばかりで進めようとする」と捉えられてしまうと、大きな減点になってしまうのです。
よくある「落ちる例」ってどんな子?
ひとりで突っ走ってしまって、周りと合わなくなってしまう
たとえば、集団工作の場面を思い浮かべてみてください。
先生が「お友だちと一緒に街を作ってみましょう」と言ったとします。全体で相談して「お花屋さんを作ろう」と決まったのに、1人だけ「私はケーキ屋さんが作りたい!」と強く主張し続けてしまう。しかも、他の子の意見に耳を貸さず、自分の案を押し通して作業を始めてしまう…。
このような姿が見られると、先生方は「この子は協調性に難しさがある」と判断します。
また、「自分の担当ではないところにも口を出してしまう」「役割分担を無視して全体を仕切ろうとしてしまう」という様子も、やはり減点の対象になります。
これは性格の良し悪しの問題ではなく、集団活動の中で「全体の輪に合わせる柔軟さ」が求められるからです。
自分の作業にこだわりすぎて、時間配分ができなくなる
もう一つよくあるのが、「完璧を求めすぎて時間オーバーしてしまう」パターンです。
たとえば、協同で「おうち」を作るときに、自分の担当部分を理想通りに仕上げたくて、細かいところまでずっと手直ししてしまい、全体の完成が間に合わない。
このとき、他の子たちが「そろそろ終わりにしよう」「先生がもうすぐ来るよ」と声をかけてくれても、まったく耳に入らないまま作業を続けてしまうと、やはり「一人で進めたがる子」として見られてしまいます。
試験では、「制限時間内に他者と一緒に完成させる」という達成度が大事です。「自分の部分だけ完璧」では評価されません。
合格した子たちは、どう振る舞っていたの?
「人の話をちゃんと聞こう」とする姿が見えた子
合格しているお子さまたちの特徴のひとつに、「話し合いを大切にしようとする態度」があります。
たとえ自分の意見があっても、まずは周囲の声に耳を傾け、「そっちもいいね」と受け入れようとする様子があると、先生方の目にとても好ましく映ります。「協同」というのは、意見を完全に合わせることではありません。「合わせようとする姿勢」が一番大切なのです。
ある合格者のお子さまは、「こうしたらいいかも」と思った案があっても、一度「どう思う?」と相手に確認していました。そして、相手が「それより、こっちのほうがいい」と言えば「うん、いいと思う!」とすぐに変えられていたそうです。自分の考えにこだわらず、周りと気持ちよく一緒に進める柔らかさが評価されたのでしょう。
自分だけの作業でも、他の子の進み具合を気にしていた子
また、協同工作などで「それぞれのパーツを分担して作る」といった課題でも、「自分のだけを集中して作る」のではなく、「あ、○○ちゃん手伝おうか?」「ここ一緒に貼る?」と声をかけているお子さまは、先生方からとても好意的に見られます。
これは、何かを完璧に作る技術ではなく、「集団全体を見て行動できる力」がある証拠です。「一人でできる力」よりも、「誰かと一緒に作れる力」があることが、小学校受験では何より大事にされるのです。
どうして「一人でやりたがる子」が増えているのか?
周囲に「競争」の空気があると、子どもは焦ってしまいます
小学校受験は、ご家庭にとっても「他の子より先にできるように」「しっかりやらせなきゃ」という気持ちが強くなりがちです。その思いはとても自然なことですし、何も間違ってはいません。
けれど、その雰囲気が強すぎると、お子さまは「自分がすぐにやらなきゃ」「一人でやった方が早い」「間違えたら恥ずかしい」と感じやすくなります。そうなると、だんだんと「人と一緒にやるより、自分でやる方が安心」と思ってしまうのです。
本来なら、お友だちと声をかけ合いながらやる活動を、「ミスしないように」「評価されるように」と考えてしまう。それが、協同活動に苦手意識をもつ原因のひとつです。
家庭で「手早く・正しく」やることばかりを求めていませんか?
おうちでの練習の中で、「やるなら最後までやってね」「きれいに揃えて」「間違えないように」などの声かけが多くなっているご家庭では、子どもが自然と「正確に・早く・一人で」という思考に偏っていくことがあります。
すると、遊びや工作でも「人と一緒に作るより、一人の方が早い」「自分でやったほうが正しくできる」と感じるようになり、協同作業の意味が見えにくくなってしまいます。
これはしつけや教育方針が悪いのではありません。むしろ、丁寧に育てていらっしゃる証拠です。ただ、受験で求められる「柔らかい人との関わり」とは少しずれてしまっているだけなのです。
ご家庭でできる「協同作業」への小さな慣らし方
家庭でも「誰かと一緒にやる」楽しさを体験させてあげることから
いきなり「お友だちと上手に協力してね」と言っても、苦手な子にはハードルが高すぎてしまいます。まずは、おうちの中で「誰かと一緒に何かをする経験」をたくさん増やしてあげることが大切です。
たとえば、こんなことから始めてみるとよいかもしれません:
- 一緒に料理を作る(材料を交代で入れる・盛り付けを分担する)
- おうち工作で、「この部分はママが作るから、こっちはお願いね」と作業を分ける
- 絵を描くときに「下絵はママが描くから色塗りしてくれる?」と頼んでみる
- おもちゃの片づけを「どっちが多く片づけられるか競争しよう」と楽しい協力に変える
「一緒にやるって楽しいな」「人と分け合って作るって気持ちいいな」と感じられたら、自然と集団の中でも協力できるようになります。
「ひとりでできる」はゴールじゃないと伝えてあげてください
多くのご家庭で、「ひとりでできるようになること」を目標にされていることがあると思います。もちろん、自立心を育てることはとても大切です。
ただし、受験の準備においては、「一人で全部やることが偉い」わけではないことを、やさしく伝えてあげる必要があります。たとえば、こんなふうに声をかけてみてください:
- 「自分でできるのも素敵だけど、○○ちゃんと一緒にやったらもっと楽しいかもね」
- 「お友だちの案も面白そうだったね。次はちょっと混ぜてみようか?」
- 「今日はママが手伝いたいな。一緒にやると嬉しいなぁ」
大人から「一緒にやって嬉しい」という気持ちをたくさん伝えていくと、子どもも「一人より誰かとやる方が楽しいかも」と思えるようになります。これは受験に向けた協同意識の大切な一歩です。
ご家庭でよくある「声かけの失敗」と、直し方
よくある失敗:「全部やってくれてありがとう、えらいね!」
この言葉、一見とてもいい言葉のように思えるかもしれません。でも、「全部ひとりでやった=褒められること」と刷り込まれてしまうと、協力することよりも「ひとりで仕上げること」が目標になってしまいます。
そうならないように、こんなふうに言い換えてみてください:
- 「○○ちゃんがやってくれて助かったよ。ありがとう」
- 「ママも一緒にやりたかったな。次は手伝ってくれる?」
- 「協力してくれたから、すごくうまくできたね」
「一人でやったからすごい」ではなく、「誰かと一緒にやれたからうまくいった」という方向に気持ちを持っていけるような声かけが理想です。
協同作業が不安なお子さまに、塾でできる練習って?
「誰かと一緒に取り組む」練習をあえて重ねることが大切です
小学校受験に特化した塾では、行動観察や集団活動に焦点を当てたカリキュラムが多く組まれています。ただ、協同作業が苦手なお子さまにとっては、こうした授業がプレッシャーになることもあります。
ここで大切なのは、「結果」を求めすぎないことです。たとえば、
・最初は一緒にいられただけでも合格
・指示が聞けたら大きな進歩
・相手の話にうなずいただけでも大事な一歩
…このように、「行動としての結果」ではなく「心の向き・姿勢」を評価してもらえる塾を選ぶことが、とても大切です。
また、塾での様子について、
- 「今日は自分で全部やってたけど、少し困ってる子を気にしてた」
- 「話し合いのとき、じっと黙っていたけど、終わったあとに“○○って言いたかった”と教えてくれた」
…このような気づきを丁寧にフィードバックしてくれる指導者に出会えるかが、成功のカギになります。
「協同作業に自信がない」ことを先生に共有しておくのも手です
塾の先生方も、保護者からの小さな情報をとても大切にされています。たとえば、
- 「集団の中で自分の意見を言うのが苦手です」
- 「自分でやらないと気がすまないところがあります」
- 「他の子のやり方が気になると、注意してしまいます」
…こうしたことをあらかじめ伝えておくと、先生方も丁寧にサポートしながら、段階を踏んで力を伸ばしてくださることが多いです。
本番で見られる「協同作業」の評価ポイントとは?
「仲間とのやり取り」に心を配れているかが見られます
小学校の試験官が見ているのは、以下のようなやり取りです。
- 声をかけるときに優しさがあるか
- 相手の話を遮らずに聞けているか
- 自分ばかり主張していないか
- 仲間をフォローしようという気持ちがにじんでいるか
たとえば、工作や絵画で「○○ちゃん、それ上手だね」「ここ一緒にやろうか?」などの会話が見られた場合、完成度以上にその姿勢が評価されることがあります。
一方で、作品はすばらしくても「他の子を無視して黙々と仕上げた」「何も話し合いに参加していない」「トラブルが起きても助け合おうとしない」というような様子は、減点の対象になってしまいます。
「リーダーシップ」も評価されるが、独走型には注意
自分で考えて率先して動く子は、「引っ張っていく力がある」として高く評価されることもあります。ただし、それはあくまで「全体を気にしながら動けている場合」に限ります。
リーダーとして、
- みんなに役割をふっている
- 話し合いをまとめている
- 困っている子に気づいて助けている
という様子があれば、高く評価されますが、
- 他の子の意見を無視している
- 作業を取り上げてしまう
- 一人で全て進めてしまう
といった姿は「協調性に欠ける」と判断されます。
合否をわけた“最後の一手”とは?
合格した子の多くが「場の空気を読んで動けていた」
実際に合格されたお子さまに多く見られるのが、「今、どう動いたら周りが助かるか」を自然に感じ取って行動できていたという点です。
たとえば、
- 片づけが苦手な子の隣に行って、一緒にしまってあげた
- 静かにする時間に、周りが騒がしかったら「静かにしよう」と小声で伝えていた
- 困っている子がいたら、目で合図して教えてあげた
こうした細やかな心配りが見られると、「この子は周囲と良い関係を作っていける」と、強く印象に残ります。
落ちてしまった子に多かった傾向とは?
一方で、不合格となってしまったケースで目立ったのは以下のような点です。
- 自分の役割にしか集中できていなかった
- 協力する時間に、ひとりで動いてしまっていた
- 他の子のアイデアや提案を受け入れられなかった
- 「早く終わらせる」「完璧に仕上げる」にこだわりすぎた
これは「性格が悪い」などでは決してありません。ただ、「協同」というテーマに関して、十分に準備されていなかっただけです。逆にいえば、ここにしっかり取り組めれば、大きな加点につながる部分なのです。
「一人で全部やれる子」よりも、「人と気持ちよく関われる子」が選ばれます
小学校受験では、「学力の高さ」や「完成度」よりも、「人として周囲とどう関わっていけるか」を重視される場面が本当に多いです。
お子さまが「一人でやった方がいい」と思ってしまう背景には、不安や緊張、または成功体験へのこだわりがあるのかもしれません。
その気持ちを否定せず、「一緒にやるって、いいことだよ」「協力するって気持ちいいね」と、毎日の中で少しずつ伝えていくことが、受験の大きな支えになります。
お子さまのやさしさや思いやりが、集団の中であたたかく広がっていく。そんな姿を目指して、焦らずゆっくり進めていっていただけたらと思います。