小学校1年の算数、絵や文章から「式をつくる」

小学校1年の算数、絵や文章から「式をつくる」

 

小学校1年の算数、絵や文章から「式をつくる」

式は「見えるもの」を数で表すことから始まる

子どもにとって、数の式はまだ“記号の列”にすぎません。大人が「当たり前」と思う「3+4=7」という式も、子どもには「なぜそうなるのか」「何を足しているのか」が見えていないことが多いのです。

そこで大切なのが、実際の絵や具体物を見ながら、「数の意味」を言葉にして考える練習です。


練習の基本構成:絵 → 言葉 → 式

式をいきなり書かせるのではなく、まずは目に見える絵から「何が起きているのか」を話し合い、それを言葉にしてから式に変換する流れを丁寧にたどります。

基本的な手順

  1. 絵を見る(丸、動物、果物など簡単なイラスト)
  2. 何があるかを話す(「りんごが5個ある」「3個もらった」など)
  3. 状況を言葉で整理する(「最初に5個あって、あとから3個きた」など)
  4. 数の動きをとらえて式にする(「5+3=8」)

実践例1:数をたす式をつくる(たし算)

絵の内容:

左に丸が3つ、右に丸が4つ描かれている(合わせて7個になる)

【声かけ例】
・「丸がいくつあるかな?左と右でわけてみようか」
・「どっちが最初にあったと思う?あとからきたのは?」
・「全部で何個になったかな?」
・「じゃあ式にしてみよう。3+4=?」

※ポイント:「どこからきた数か」を意識させると、たし算の“関係”が自然に理解できます。


実践例2:数をひく式をつくる(ひき算)

絵の内容:

7個の丸が描かれていて、そのうち3個にバツがついている

【声かけ例】
・「丸はいくつある?バツのついてるのはいくつかな?」
・「これは何が起きてる絵だと思う?」(→食べた、なくなった、あげた、など)
・「残ってるのはいくつ?」
・「じゃあ式にするとどうなる?7-3=?」

※ポイント:「残る」「減る」など、動きの方向を意識できるように語りかけるのが大切です。


実践例3:まとまりを作ってから式を立てる

絵の内容:

バラバラに並んだ丸が6個、そのあと2個が離れて描かれている

【声かけ例】
・「丸がぜんぶでいくつあるかな?」
・「一緒のところにあるのはいくつ?ちょっとはなれてるのは?」
・「それぞれ数えてから合わせたら、どういう式がつくれるかな?」
・「6+2=8って、自分で気づけたね!」

※ポイント:絵が「整っていない」ことで、まとまりを見つけて数の関係を作る力が育ちます。

文章を絵にして考える ― 式の意味を自分で「見える化」する練習

子どもは「頭の中の絵」がまだぼんやりしている

文章題を読んだとき、大人はすぐに頭の中でイメージを作って、計算につなげることができます。
けれども、子どもにとっては「何が起きているのか」「どこが足されているのか」がまだぼんやりしています。

このときに、「絵を描いて整理する」という手段を持っていると、数の意味や変化を自分で理解できるようになり、式づくりがぐっと楽になります。


練習の流れ:文章 → 絵 → 式 の三段階

実践例1:たし算の文章

問題:

「おはじきが5こあります。あとから3こふえました。ぜんぶでなんこですか?」

【ステップ1:絵にする】
・おはじきを5個の丸で描く
・その隣に3個の丸を描き、「あとからふえた」と言葉でつける

【ステップ2:数える】
・「ここに5個、ここに3個。合わせると何個?」
→ 5+3=8

【保護者の声かけ例】
・「最初にあったのはどっちかな?」
・「ふえたのはどれ?」
・「合わせるってどういうことだったっけ?」
・「自分で見てわかるように描けたね!」


実践例2:ひき算の文章

問題:

「りんごが6こあります。3こをおともだちにあげました。のこりはいくつですか?」

【ステップ1:絵にする】
・りんご6個を丸で描く
・そのうち3個にバツ印をつける(→あげたことを示す)

【ステップ2:数える】
・残りの丸を数える → 3

【ステップ3:式にする】
6-3=3

【保護者の声かけ例】
・「バツがついてるのは何を表してるの?」
・「どこが『のこった』ものかな?」
・「りんごがどう変わったか、絵でわかるね」


実践例3:自分で絵を描いて、式までたどり着く自由問題

お題:

「おもちゃが何個かありました。3個ふえました。今は8個です。もとは何個だったでしょう?」

【ステップ1:子どもに絵を描かせる】
・まず「8個の丸」を描かせる(今の数)
・「ここに3個分があとからふえたものだよ」と考え、印をつける
・残りは「もとからあった数」になると気づく

【ステップ2:式にする】
□+3=8 → 8-3=5

【声かけ例】
・「8個のうち、あとからきた3個ってどれ?」
・「じゃあ、はじめにあったのはいくつ?」
・「それを数で考えると、どうやって求められる?」

逆思考の入口として非常に効果的な出題です。


子どもが途中で止まったときの支援法

子どもが「わからない」と手が止まるときは、次のような支援が有効です。

・「絵にすると何がわかるかな?」
・「一緒に描いてみようか。丸をいくつ描けばいい?」
・「これ、前にやったあの問題と似てない?」
・「どこまでわかってる?今の考えを教えてくれる?」

“考えを引き出す質問”が、思考の再スタートを助けます。


式から「絵と言葉」をつくる ― 考えを形にする力の応用編

子どもにとって式は「考えたことを見せるもの」

式を自分で立てられるようになってきたら、その式が「どんな出来事を表しているのか」を、自分の言葉や絵で説明できる力を育てていきましょう。

この力が育つと、
・式の誤りに自分で気づける
・文章題が理解しやすくなる
・算数が“記号”から“意味”に変わる
という大きな効果が得られます。


練習の方向:式 → 絵・お話

実践例1:簡単なたし算から

お題:4+2=6

【声かけ例】
・「この式は、どんなことが起きた場面だと思う?」
・「誰かが4個もってて、あとから2個きたかも?」
・「絵で描いてみるとどうなるかな?」
・「どんなお話にできる?」

【子どもがつくる例】
・「ねこが4ひきいました。あとから2ひききました。ぜんぶで6ひきになりました。」
・丸を6個描いて、「ここがはじめ、ここがあと」と色を分けて表現

※ポイント:言葉と数がつながる感覚を丁寧に育てること


実践例2:ひき算の式を逆から考える

お題:9-4=5

【声かけ例】
・「9個あったのに、4個なくなった。何が起きたんだろう?」
・「どうして減ったのかな?あげた?食べた?」
・「残った5個をどう絵にしたらわかりやすい?」

【子どもがつくる例】
・「ビスケットが9まいありました。4まいたべました。のこりは5まいです。」
・丸を9個描き、4個にバツをつけて、「残りはこれ!」と丸を囲む

※ポイント:「引く」動作の理由を子どもなりに考えさせると、式の意味が深くなります。


実践例3:自分で式をつくって、逆に絵と文をつくる自由練習

お題例(式のみ提示)

・5+3=□
・10-6=□
・□+2=7

【声かけ例】
・「この式を見て、どんなことが起きた場面か考えてみよう」
・「絵で描いてみよう。お話にもできる?」
・「『誰が』『なにを』『どうした』って、3つの言葉が入ると立派なお話になるよ」

【例】
□+2=7 → 「おにぎりが2こふえたら7こになったよ。さいしょは何こだったかな?」


親ができる大切なサポート:正しさよりも“伝えようとする姿勢”を認める

自分で絵やお話を考えると、式と少しずれていたり、現実にそぐわないことも出てきます。でも、そこで「ちがう」と言ってしまうと、子どもは自信を失います。

大切なのは、
・「その考え方、おもしろいね」
・「ここをちょっと変えると、もっとわかりやすくなるかも」
・「今の話、式で書くとどうなるかな?」

考えた内容を肯定しつつ、式との対応を一緒に考える姿勢です。


最後に:絵・言葉・式を往復する力が“考える子”をつくる

計算ができるだけでなく、「なぜそうなるのか」「どんな場面か」を説明できる子は、算数だけでなく国語・理科・社会、そして日常の思考力でも大きな力を発揮します。

絵を描き、言葉で話し、式に変える。また、式を読んで、絵やお話に戻す。この行き来を丁寧に練習することで、「式は考えを伝える道具」だと自然に理解できるようになります。

「どうしてできないの?」の前に ― 大人と子どもの“考え方”のギャップに気づくこと

大人は、たとえば「7+5」や「10-4」といった計算を、ほとんど反射的に答えることができます。これは、長年の経験や反復練習によって頭の中に定着している「結果の記憶(暗記)」によるものです。つまり、「どう考えたか」ではなく、「もう知っているから言える」状態です。

ところが、子どもはまったく違います。彼らにとって「7+5」は、まだ頭の中で具体物や指、ブロックなどをイメージしながら、「7に何を足すと10になる?」「残りはいくつ?」と数を動かして構成している途中なのです。

それにもかかわらず、大人が「どうしてこんな簡単なことができないの?」と問い詰めてしまうと、子どもは「考えること」をやめ、「当てずっぽうで答える」「とりあえず暗記しようとする」という行動に出ることがあります。これは、子どもの思考を途中で止めてしまう大きな障害になります。


親が無意識にしている「暗記の前提」に気づくこと

多くの保護者は、自分がすでにできる計算を「自然にできた」と思い込んでいますが、それは小さいころに誰かから教わったり、何度も経験した結果、記憶に定着した「知っている答え」に過ぎません。つまり、考えているのではなく、思い出しているのです。

しかし、子どもはその「考える体験」そのものを、まさに今積み上げている最中です。「7と何で10になるか?」「5をどう分ければ使いやすいか?」という問いに、自分の力で気づいていくことで、数に対する見通しや構造の理解が育ちます。


考えさせることの価値 ―「正解」よりも「理解」が大切

大人が答えをすぐに与えてしまうと、子どもは「そういうものなんだ」と覚えるだけになります。その結果、「応用がきかない」「文章題になるとわからない」「順番が変わると混乱する」といった現象が起こります。

反対に、「どうしてそう思ったの?」「他にも考え方あるかな?」と問いかけ、考える時間を与えることで、子どもは数の意味や関係性を少しずつつかんでいきます。これが、計算力ではなく数学的な思考力を育てる鍵です。

たとえば、「9+4は?」「えーと……9と1で10、あと3……で13!」と、少し時間がかかっても、自分の頭で考えて出せた答えには「理解」が伴っています。これこそが、学力の土台であり、暗記ではたどりつけない本当の力です。


まとめ

「できないのは当たり前」と受け止めることが、実は最初の一歩です。大人が無意識に使っている「暗記された答え」と、子どもが今まさに組み立てようとしている「考える過程」には、大きな違いがあります。

答えの正しさだけを見ず、考えている途中の姿を認めてあげること。それが、子どもが「考えることを楽しい」と思える力を育て、「数を理解する力」として一生残っていきます。

子どもが何度も同じことを聞いてきたり、間違えたりするたびに、「今この子は、頭の中で数を動かそうとしているんだな」と、ひと呼吸おいて見守っていただけたら、それが何よりの学びの支えになります。