中学受験|小学生の国語・算数読解力を伸ばす・上げるのにハリーポッターの本が選ばれベストな理由

中学受験|小学生の国語・算数読解力を伸ばすのにハリーポッターの本が選ばれベストな理由

『ハリー・ポッター』で伸ばす小学生の国語・算数読解力

『ハリー・ポッター』シリーズは世界中で愛されており、日本の小学生にも大人気のファンタジー小説です。子どもたちはホグワーツ魔法魔術学校での冒険に胸を躍らせに寝転びながら読書に没頭する姿も珍しくありません。実は、この夢中になって物語を読む経験こそが、国語(言語)の読解力はもちろん、算数の文章題を解く力にも良い影響を与えることが指摘されています。小学生が『ハリー・ポッター』を読むことで国語と算数の読解力向上につながる理由をあらゆる角度から徹底的に分析してみます。読者は大人の方を想定していますが中学生にも理解できる平易な言葉遣いでまとめましたので、ぜひお子さんの読書教育の参考になさってください

まずは「読解力」という言葉の意味を確認しましょう。読解力とは文章を読み取り理解する力のことです。国語科で文章を読んで要旨をつかんだり、登場人物の気持ちを汲み取ったりする力は典型的な「国語の読解力」です。また算数の文章題を正しく理解して解答を導く力も、一種の読解力と言えます。ただし後述するように、算数の文章題では国語の物語を読むのとは少し異なる読み取りスキルも求められます

読解力が育まれる読書体験とは

物語を読むことで広がる語彙力

読解力向上の土台としてまず挙げられるのが語彙力(ボキャブラリー)の増加です。物語を読めば当然ながら多くの言葉に触れますが、ファンタジーである『ハリー・ポッター』は特に新鮮な単語との出会いに富んでいます。例えば「組分け帽子」や「百味ビーンズ」といった魔法世界特有の用語から、普段の生活ではあまり使わないような言い回しまで、物語には豊かな言葉があふれています。子どもたちは文脈の中でこれらの新しい言葉の意味を想像し少しずつ自分の語彙として身につけていきます

実際、読書量が多い子どもほど語彙力が高まることは教育・心理学の研究でも繰り返し示されています。福井大学などの研究では小学生を対象に読書量・語彙力・文章理解力の関係を調べ、「読書量は語彙力にも文章理解力にも促進効果をもたらす」ことが明らかになりました。つまり、たくさん本を読む子は語彙と言語理解の力がしっかり育つのです。また、物語の文脈で出会った言葉は記憶に残りやすいとも言われます。心理学者の指摘によれば、子どもはファンタジーの物語や遊びを通じて学んだ情報のほうが現実的な話よりも高い率で記憶に残すという研究結果があります。たとえば架空の物語を通じて新出単語を学ぶ実験では、ファンタジー仕立ての話を聞いた子どものほうがノンフィクションの話を聞いた子どもよりも語彙の定着率が高かったそうです。このように、『ハリー・ポッター』のような魅力的な物語は楽しみながら語彙を増やす絶好の機会となります。

語彙力が増えれば文章の意味を正確に掴み取る力、すなわち読解力が底上げされるのは言うまでもありません。知らない単語だらけの文章では内容理解が難しくなってしまいますが、日頃からの読書で身につけた豊富な語彙があれば、教科書や試験の文章もスムーズに読み進められます。特に算数の文章問題では生活上の用語(例えばにあるような「おけ」や「ひしゃく」といった言葉)が理解の妨げになるケースも指摘されていますが、読書習慣のおかげで語彙力が高い子どもはこうした場面でも有利です。難しい言葉に戸惑って問題文の意味を取り違える心配が減るため、算数の問題にも落ち着いて取り組めるでしょう。

行間を読む力と推論力の向上

物語読解の醍醐味の一つに「行間を読む」楽しさがあります。文章には書かれていることだけでなく、書かれていない部分を推測する力が求められる場面が多々あります。登場人物の本当の気持ちを察したり、物語の先の展開を予想したりといった推論力は、まさに読解力の中核となる力です。『ハリー・ポッター』を読んでいると、読者は「このときハリーはどんな気持ちだったのだろう?」「なぜスネイプ先生はそんな言い方をしたのだろう?」といった疑問を自然に抱き、文章のヒントから答えを推理しようとします。こうした読書体験の繰り返しが、行間を読む力を鍛えていくのです。

研究者たちも、物語読解による推論力の発達に注目しています。例えばオランダの研究では、物語を読み聞かせた幼児に対し登場人物の気持ちを推測させる問いかけを行うことで、推論的な理解力が向上したという報告があります。また、児童期以降についても、物語読解が子どもの推論力と思考力を育てる有効な手段であることが多くの文献で指摘されています。物語の読み取りには、文章中の複数の手がかりを組み合わせて暗示されている事実を導き出す力が必要です。例えば「ハリーが部屋の片隅で拳を握りしめた」という描写から怒りや悔しさを感じ取るように、明示されていない感情や状況を推測する訓練になるのです。

特に『ハリー・ポッター』のような長編ファンタジーは、伏線や謎解きの要素も多く含まれています。読者は「この人物の発言の真意は何だろう?」と考えながら読み進め、時には何章も先で「あのときの伏線はこう繋がるのか!」と驚かされます。まさに推理小説的なワクワク感があり、子どもたちは自分なりに先を予想したり裏設定を推測したりしながら読みます。こうした推論的読解は読解力を深める上で非常に重要です。実際、読書好きな子どもはそうでない子に比べて文章から推測する力が高いという報告もあります。これは物語を読む中で「考えながら読む」習慣が自然と身についているためと言えるでしょう。

さらに興味深いのは、物語を読むことで他者の心情や意図を推し量る力(いわゆる「Theory of Mind」=心の理論)も育つという点です。ある研究では、「文学的なフィクションを読むと登場人物の信念や意図を推測する読者の推論過程が鍛えられる」という結論が示されています。小説を読む行為自体が読者に「この登場人物は本当は何を望んでいるのだろう?」と考えさせ、他者の心の動きを追う認知的システムを活性化させるというのです。子どもにとって物語を読むことは、相手の立場に立って想像する練習にもなります。これは国語の読解問題のみならず、日常生活で友達の気持ちを察するといった社会的なコミュニケーション能力の向上にも役立つでしょう。

ストーリー構造の理解と論理的思考の関係

長い物語を読み通す経験は、ストーリーの構造を把握する力を育てます。物語には起承転結があり、原因と結果の連鎖や時間の流れ、問題の発生と解決といった構造が存在します。『ハリー・ポッター』シリーズも、一巻ごとにひとつの謎や課題が提示され、ハリーたちが試行錯誤しながら解決へ向かうという明確な構成を持っています。子どもたちは物語を追う中で出来事の順序や因果関係を自然と意識するようになります。「なぜこの場面でこうなったのか?」を考えながら読むことで、**筋道立てて考える力(論理的思考力)**が鍛えられるのです。

物語読解と論理的思考、一見すると離れた領域のようですが、実際には深く関係しています。National Geographicの児童読書に関する記事でも、歴史小説など物語を読むことで出来事の順序と因果関係を理解する力が伸びると指摘されていました。過去から現在への流れを追うことで「どうして今こうなったのか」を考える訓練になるというのです。ファンタジーである『ハリー・ポッター』も、作品内の歴史や伏線が後の巻で重要な意味を持つため、シリーズ全体を通して読んだ子は長大な物語の構造を記憶し理解する力がつきます。「このキャラクターは第1巻で助けた人物だ」「前巻で出てきた呪文がここでまた登場した」というように、広範囲に散らばる情報を関連付けて整理する情報構造化能力が身につきます。

加えて、物語の展開を予想したり謎解きをする過程自体が論理的な推論の練習になります。『ハリー・ポッター』には毎巻ミステリー要素があり、「秘密の部屋」の正体は何か、「裏切り者は誰か」といった謎を読者自身が推理する楽しさがあります。子どもたちは与えられた手がかり(文章の中のヒント)をもとに仮説を立て、論理的に筋道を考えていきます。これは理科の実験で仮説検証する態度や、算数で証明問題に取り組む姿勢にも通じる論理的思考の基礎となるでしょう。「物語だから感覚的に読むだけで論理とは無関係」ということはなく、よく練られたストーリーほど因果関係が明確で論理的です。小説の登場人物の行動理由や事件の背景を考察することは、そのまま**「なぜ?」「どうして?」を突き詰める論理的探求**につながっています。

実際、ある図書館司書のコメントによれば「ミステリー小説は子どもの論理力・問題解決力を育ててくれる」とのことです。謎解き要素のある物語を読むことで、自分なりに考えて答えを導く推理力・批判的思考力が磨かれるというわけです。『ハリー・ポッター』はファンタジーでありながらミステリーの趣も併せ持つ作品ですから、読み進める中で子どもたちの論理的思考力が刺激され、結果として国語の読解問題でも論理的な文章を読み解く力が強化されると期待できます。

集中力と読み飛ばし防止の読書持久力

近年、注意力散漫になりがちな子どもたちにとって、本を集中して読み通す持久力を養うことは大きな課題です。ゲームや動画など刺激的なメディアがあふれる中、じっくり活字と向き合う時間が減っていると言われます。そんな中で『ハリー・ポッター』のように面白い物語に出会うと、子どもは驚くほどの集中力を発揮します。実際に「子どもがおもしろい本に出会うと、食事や睡眠も忘れて読みふけるものだ」という体験談は多くの保護者から聞かれます。厚い本でも「次はどうなるの?」「早く結末が知りたい!」という気持ちで夢中になれば、最後まで読み切る集中力と読書体力が自然と身につきます。読書に必要な**集中力や忍耐力(持続的に読む力)**は、こうした楽しい読書体験の積み重ねで培われていくのです。

『ハリー・ポッター』は全7巻・各巻数百ページに及ぶ長編シリーズです。一冊読み終えたときの達成感は子どもに大きな自信を与えます。「こんなに分厚い本を読み切れた!」という経験は、「自分はこれだけ集中できるんだ」という自己効力感につながります。実際、小学2年生で『ハリー・ポッター』を全巻読破したという女の子のお母さまは「長編読破の経験が娘の自信になった」と語っています。この自信は次の読書への意欲にもつながり、良いサイクルが生まれます。「これくらい長い本でも怖くない」と思えれば、その後教科書や課題図書を読む際の心理的抵抗も小さくなるでしょう。

一方で、長い物語を読む過程では注意散漫になって読み飛ばしてしまうリスクもあります。特にせっかちな子は「早く結末が知りたい!」あまりにページを飛ばしてしまうことも考えられます。実際、あるご家庭では小学1年生の男の子に『ハリー・ポッターと賢者の石』を与えたところ、あっという間に3日で読み終えたものの、聞いてみるとかなり読み流し・読み飛ばしをしていたというエピソードもあります。それでも本人は物語の大筋に興奮し、シリーズ全巻を勢いで読破したとのことですが、後から映画を見て「自分の想像と違う場面が沢山あった」と気づいたそうです。この経験から、その子はじっくり読むことの大切さを学び、次第に文章を飛ばさず読むようになっていきました。最初は飛ばし読みしてしまう子でも、物語の面白さゆえに繰り返し読むうち「細部まで味わいたい」と感じるようになり、結果的に集中して丁寧に読む習慣が身につく場合もあります。

読書の持久力は、一朝一夕で身につくものではありません。しかし、『ハリー・ポッター』のように子どもを惹きつけて離さない物語との出会いがあれば、子ども自身がすすんで長時間集中する体験が得られます。それを繰り返すことで、テストや宿題など「それほど面白くない文章」でも集中力を発揮できる下地ができます。保護者の方からも「うちの子はハリポタを読破してから集中力が続くようになった」「長い文章を苦にしなくなった」という声がよく聞かれます。好きこそ物の上手なれ――好きな本に没頭した経験がある子は、そうでない子に比べて読解テストでも粘り強く文章を読む傾向があるでしょう。読書を通じて養われる集中力と持久力は、国語だけでなく算数や他の教科の勉強にも良い影響を及ぼす貴重な力なのです。

会話文から意図を読み解く力の成長

小説には会話シーンが多く登場します。『ハリー・ポッター』でも、ハリーやロン、ハーマイオニーたちの掛け合いや、先生と生徒の対話など、生き生きとした会話文が物語を彩っています。これらの会話文を読み解くことは、単に文字通りの意味を理解するだけでなく、話し手の意図や感情を汲み取る力を育てます。例えば、同じ「大丈夫」と言うセリフでも、本当に安心してほしくて言ったのか、自分に言い聞かせるためなのか、あるいは強がっているだけなのか、背景によってニュアンスは変わります。物語の読者は登場人物の表情や状況を想像しながら、行間にある本当の気持ちを感じ取ろうとします。

『ハリー・ポッター』にはユーモアたっぷりの会話もあれば、怒りや悲しみを押し殺したセリフ、嘘や隠し事を含んだ駆け引きの場面もあります。子どもたちは登場人物同士のやり取りを追う中で、「今の発言の真意は何だろう?」と考える習慣が身につきます。これは国語の読解問題で登場人物の気持ちを選ぶ設問などに直結する力です。会話文から登場人物の性格や人間関係を推測するのはまさに高度な読解力の一部であり、物語をたくさん読んでいる子ほど得意とするところです。

さらに、会話文の読解は子どもの社会的スキルにも良い影響を与えます。フィクションの読書が共感能力や感情理解力を高めるという話を耳にされたことはないでしょうか。研究によれば、物語を読むことで他者の気持ちを理解しやすくなる、いわゆる心の知能指数(EQ)が向上するとのことです。特に対話形式の場面を読むとき、読者は発話の表現や語調から相手の感情を想像します。怒鳴り声で「出ていけ!」と言った人物の本心が実は心配から来るものだったり、穏やかな口調の裏に怒りが秘められていたりといった複雑な心情を、小説は私たちに教えてくれます。『ハリー・ポッター』シリーズにも、たとえばダンブルドア校長先生があえて厳しい口調で話すシーンや、ハーマイオニーが皮肉を込めて発言する場面などがありますが、そうした言葉の裏側にある意味を感じ取る読解は子どもにとって貴重な練習です。

また、会話文の多い物語を読むことは文章のリズムや口語表現に慣れるという利点もあります。国語の教科書にも会話文は出てきますし、算数の文章題でも会話形式で問題状況を説明する文章が見られることがあります(「○○さんは~~と言いました。△△さんは~~と答えました。」といった形式)。ふだん小説で対話文を読み慣れている子どもは、そうした文章にも抵抗がありません。頭の中で登場人物の声色を思い浮かべながら読むなど、音読するように情景をイメージして理解する力が養われています。これは読解速度や理解の深さにも影響します。まるでその場のやり取りを見ているように情景を思い描ける子は、文章内容を記憶に留めやすく、設問にも答えやすい傾向があります。

総じて、物語の会話文読解を通じて言葉の裏にある気持ちを読むセンスが磨かれます。これは国語の成績のみならず、友達との日常会話や人間関係にもプラスに働くでしょう。小説を読む子どもは空気を読む力がある、などと言われることもありますが、あながち間違いではありません。『ハリー・ポッター』でハリーやロンたちの友情・対立・和解の過程を追体験した子どもは、現実の友人関係でも相手の気持ちを考えたり、自分の気持ちを言葉で伝えるヒントを得たりしているはずです。会話文読解の力もまた、物語が子どもに与えてくれる大切な読解スキルだと言えるでしょう。

算数文章題にも生きる読解力と構造的思考

算数の文章題に求められる読解とは

ここまで国語の読解力全般について、物語読解がどのように役立つかを述べてきました。では、算数の文章題についてはどうでしょうか。算数の文章題(ストーリー仕立ての算数問題)を解くには、問題文を正確に理解する力が必要です。しばしば「算数の文章題が解けないのは国語力のせい」と言われることがありますが、実際にはもう少し細かい分析が必要です。ベネッセ教育総合研究所の報告によれば、国語の読解力が高い子どもが必ずしも算数文章題を解けるとは限らないことが指摘されています。算数の文章題には国語読解力とは異なる側面の読み取り力が要求されるというのです。

具体的に、算数文章題を読み解く力は二段階に分けられると言われます。第一に、文章を分析的に読む力です。算数の問題文は物語文と違い、余計な飾りや繰り返しを省いた簡潔な記述で書かれています。主語と述語、修飾語と被修飾語の関係、指示語(これ、それ等)が何を指すか、といったことを一文一文正確に読み取る必要があります。言い換えれば、事実関係をロジカルに読み取る力です。国語でいうと、説明文や論説文を読むスキルに近いかもしれません。物語をざっと読んで大意をつかむ読み方(いわゆる物語的読解)とは異なり、算数では一語一句見逃さず条件を把握する注意深さが求められます。

第二に、数学的・論理的に読む力です。これは文章に書かれた数量関係や図形の性質などを論理的に整理し、粘り強く解を導く力を指します。文章題では、「何が与えられ、何を求めるのか」をまず整理し、それから必要な式を立てていく必要があります。この過程では国語の文章理解力だけでなく、**数学的な考え方(論理的思考力)**が問われます。数の大小関係や比率、図形ならば形の特徴や定理の適用など、算数特有の抽象的な論理を文章から読み取って適用しなければなりません。したがって、算数文章題を解くには国語の読解力+αの力が必要であり、単に「本をたくさん読んでいれば算数もできるようになる」という単純なものではないことがわかります。

しかしだからと言って、国語の読解力が無関係というわけではありません。むしろ基礎として極めて重要です。文章題でつまずく要因の一つに、文章中の言葉の意味がわからないために状況をイメージできないことが挙げられます。例えば先ほども触れたように、問題文に「おけ(桶)」や「ひしゃく(柄杓)」といった単語が出てきてそれが何かわからないと、そこで思考が止まってしまいます。これは算数以前に国語の語彙の問題です。実際、小学生の算数文章題でも生活に根ざした言葉が使われるため、語彙力の差が理解度の差につながることがあります。そう考えると、前述したように読書で語彙力を蓄えておくことは算数文章題攻略の土台になります。

また、物語読解で養った想像力や推論力も、算数文章題に活かせる場面があります。文章題はしばしば日常生活の一場面を切り取った形で出題されます(「花子さんはリンゴを〇個持っていて…」等)。こうした状況を頭の中で思い描き、イメージを作る力は物語を読み慣れている子のほうが得意です。特に低学年では、絵本や物語で培ったイメージング力がそのまま簡単な足し算引き算の文章問題の理解に役立つでしょう。「○○さんと△△さんがいて…」という問題文を読んだとき、登場人物のやりとりを頭の中で再現する感覚で理解できれば、問題に親しみが持てます。読書好きな子は文章から情景を思い浮かべるのが上手なので、算数問題でも場面を取り違えるミスが減るでしょう。

物語読解が算数的思考を支えるポイント

物語読解そのものが直接に算数の解法を教えてくれるわけではありませんが、物語読解で培った能力が算数的思考の土台を支えていることは明らかです。例えば前述の論理的思考力。物語を読みながら因果関係を追う習慣は、算数の問題でも「何をすれば何が求められるか」を筋道立てて考える助けになります。「これとこれを比べているから引き算だな」「増減の話だから足し算かな」など、文章を読んで状況を分析する際に、物語で鍛えられた筋道を立てる力が活きてきます。

また、辛抱強く考える姿勢も共通点です。難しい文章題に直面すると、慣れない子は「習ってないからわからない!」と投げ出してしまいがちだという指摘があります。実際、中学生の学習現場でも「ちょっと複雑な問題文になると読むのを面倒くさがってしまう」という傾向が増えているそうです。この点、幼少期から長い物語を読む習慣がある子は、多少長い文章でも最後まで読まないと気が済まないという粘り強さがあります。「わからない」と途中で諦める前に、「とりあえず最後まで読もう」「もう一度最初から読み返してみよう」とする忍耐力は、読書経験の多い子ほど備えているように思います。読書で身についた集中力・忍耐力が、算数の難問にぶつかったときにも発揮されるなら心強いですね。

先行研究でも、読解力と数学力には共通の基盤があることが示唆されています。OECDの国際学力調査PISAでは、各国の15歳の読解力と数学力には非常に強い相関があると報告されています。もちろん、だからといって「読解力が高い=数学も得意」と単純には言えませんが、背景にはワーキングメモリ(作業記憶)などの共通する認知能力があるとも考えられています。要は、文章を理解し情報を整理する力が高い子は、数学的情報の処理も上手である可能性が高いということです。実際イギリスの大規模調査では、子どもの頃に読書習慣があると10代での数学の成績にも良い影響が現れたという結果が出ています。読書が直接数学の力を伸ばすというより、「読書好きになるような子どもは学び全般に前向きで、結果として数学の学習にもプラスに働く」という解釈もできますが、少なくとも読書習慣がマイナスに働くことは考えにくいでしょう。

ここで一つ、物語読解と算数読解の橋渡しとなる具体的な事例をご紹介します。ある小学校では、読書に困難を感じていた児童Dくんがいました。彼は長い文章を読むのが苦手で、本を開くのも拒否しがちだったのですが、タブレットのオーディオブック(音声読み上げ)で『ハリー・ポッター』を聴きながら読む方法を試したところ、「これならしんどくない」と積極的に読み進めるようになりました。そして、なんと全500ページ近い第1巻を1か月かけて読破(聴破)し、今では続巻も読み進めているとのことです。彼は「ハリー・ポッターは無理?」と最初尻込みしていたものの、音声の助けを借りて物語の世界に入り込んだ結果、自力で読み切る達成感を得ました。読み終えた後に実際の本の厚さを見て「これ全部読んだんだよね。すごくおもしろかった」と笑顔で話す彼の姿は、まさに自信に満ちていたそうです。この児童は、国語の長文読解のみならず、算数の文章問題にも前向きに取り組めるようになったと報告されています。物語を理解できたという経験が、「文章で書かれた問題を理解するのも怖くない」という心境の変化をもたらしたのです。もちろん算数特有の訓練も必要ですが、読書によって得られた読解への自信と習慣が算数学習を下支えしている好例と言えるでしょう。

読書習慣が学力全般に及ぼす影響

読書習慣のある子とない子でこんなに違う?

「本を読む子は勉強ができる」と昔から言われますが、それは単なる印象論ではなく、データにも裏付けられています。文部科学省の調査では「家庭での読書習慣がある子どもは、保護者の学歴や収入に関わらず学力が高い傾向がある」という結果が報告されています。もっとも、この種の調査では因果関係(読書が学力を高めるのか、学力が高い子が読書好きなのか)ははっきりしない場合もあります。しかし近年、読書の因果効果を検証しようという研究も行われています。

興味深い例として、フィリピンの小学校で行われた大規模実験があります。100校をランダムに2グループに分け、一方では4年生の児童約2900人に31日間の読書マラソン(毎日1時間の読書時間を設ける)を実施し、他方の約2600人には実施しませんでした。1か月後、読書マラソンをした学校の子ども達は平均して7冊多く本を読み、マラソン終了後も以前より読書量が多い状態が続いていました。つまり、読書習慣の介入によって子ども達の読書量が飛躍的に増えたのです。

では肝心の学力はどうなったでしょうか。その追跡調査によれば、読書マラソンをした子ども達はしなかった子ども達に比べ、国語の標準テスト得点(偏差値)が有意に平均0.13高くなっていました。4か月後のフォローアップでも差は0.06に縮小したものの依然有意差が残り、読書の効果は持続したことが示されています。特にテスト内容の細目分析では、語彙力と読解力の向上が大きく寄与していたとのことです。一方で、算数や理科の得点には当初明確な差が見られなかったとも報告されています。これは考えようによっては当然で、算数・理科の内容理解そのものは読書だけでは伸びにくいでしょう。しかし、先に述べたように長期的には読解力の向上が算数等にも影響し得ることや、読書習慣が学習意欲全般に良い影響を及ぼす可能性を考えると、この実験結果は**「読書が国語力を上げる」という因果関係を実証した**点で非常に意義深いです。

日本でも同様に、学校単位で読書活動を奨励した例があります。例えば「朝の読書運動」です。2000年代以降、多くの小中学校で朝の始業前に10分程度の読書時間を設ける試みが行われました。ベネッセの報告によれば、朝の読書を導入した学校からは「子どもたちに落ち着きが出た」「授業への集中力が上がった」「いじめや学級崩壊の改善につながった」など様々な報告が寄せられたそうです。中には「読解力が向上した」という声もあり、読書が子どもたちの成長に有益な効果をもたらすことが共有されています。統計的な分析では、必ずしも「本を月に何冊も読む子ほどテストの成績が高い」という直線的な相関にはならない場合もあります。日本の小学生では「月に4〜5冊読めば読解力は頭打ちになる」というデータもあり、単に量を競えばよいわけではないようです。しかし、まったく本を読まない子と定期的に読む子との差は明確に存在します。本を全く読まない小5生は約1割いましたが、その子たちの読解テスト平均正答率は読書習慣のある子に比べて低めであったとの分析もあります。結局のところ、読書習慣がプラスに働くことはあってもマイナスに作用することは考えにくく、やはり読書好きな子は総じて学力が高いという傾向は否定できません。

読書が好きになる心理的背景 – ファンタジーの魅力

では、子どもが進んで本を読むようになるには何が鍵なのでしょうか。ここで『ハリー・ポッター』という作品自体の魅力に目を向けてみましょう。子どもたちが読書習慣を身につけるには、「本って面白い!もっと読みたい!」と思える出会いが必要です。その点、ファンタジー小説の魅力は子どもの心を強く惹きつけます。ファンタジーは現実ではありえない魔法や冒険が描かれており、子どもはまるで遊びを楽しむようにその世界に浸ります。心理学者によれば、ファンタジーは子どもの想像力を刺激し、創造的な思考を育む効果があるそうです。「現実にはない世界を頭の中で描く」という行為自体が子どもの脳にとってはワクワクする遊びであり、同時に柔軟な発想力を養う練習でもあります。ファンタジーに夢中になる子は、自分で物事を想像する楽しさを知っていると言えるでしょう。

実際、『ハリー・ポッター』に夢中になった子どもが、自分でも似たような魔法学校の物語をノートに書き始めたという微笑ましい例もあります。小学2年生でハリポタを読破した女の子は、影響を受けて「○○番地に住むアリーが魔法学校に行く物語」を書き始めたそうです。これはまさにファンタジーが創作意欲を掻き立てた例でしょう。ファンタジー小説は単に読み手として楽しむだけでなく、子どもの「自分も物語を作ってみたい!」というクリエイティブな欲求を刺激することがあります。創作という能動的な活動に結びつくほど読書体験が深まれば、本好きになるのは時間の問題です。自分で物語を書けば書くほど、より多くの作品を読みたくなり、良い循環が生まれます。

また、ファンタジーの持つシリーズ性も読書継続にとってプラスです。『ハリー・ポッター』は全7巻のシリーズですから、1巻にハマれば「次はどうなるの?」と続きを読みたくなります。実際、「ハリポタをきっかけに長編シリーズを読む楽しさに目覚めた」という子はたくさんいます。ある小学2年生の男の子は、テーマパーク(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のハリーポッターエリア開業ニュースをきっかけに第1巻を渡されたところ3日で読破し、その勢いで2年生のうちにシリーズ全巻を読み終えてしまいました。そして約束通り春休みに家族でテーマパークに行き、大好きなホグワーツの世界を実際に体験して大感激したそうです。このように、物語の世界観が他の体験(映画やテーマパークなど)ともリンクすると、子どもの興奮と喜びは一層高まり、「もっとこの世界を知りたい!」という動機で読書が続きます。ファンタジーは関連グッズや映像作品も多く展開されることがあり、そうしたマルチメディア展開も子どもの読書意欲を後押しする場合があります。

さらに、ファンタジー小説は友情・勇気・成長など子どもが共感しやすい普遍的テーマを扱っていることが多く、感情移入しやすい点も魅力です。『ハリー・ポッター』ではハリー達の強い友情や、困難に立ち向かう勇気、家族愛と自己犠牲といったテーマが描かれています。子ども読者は登場人物と一緒に泣いたり笑ったりしながら、物語を自分ごとのように受け止めます。感情移入して読む体験は子どもにとって非常に楽しく、心地よいものです。心理学的にも、物語への没入(**「トランスポーテーション」**と呼ばれる現象)は読書の快感を高め、読書習慣の形成に重要だとされています。感情を揺さぶられる読書体験をした子は、「もっと本の世界を味わいたい」と感じ、積極的に次の本へ手を伸ばすでしょう。

このように、ファンタジーには子どもの読書を促進する様々な心理的魅力があります。ただ注意したいのは、特定のジャンルばかり読むより多様なジャンルに触れたほうが効果的という点です。先のベネッセの研究では、子どもの読解力をより高めるには「文学(物語)に偏りがちな読書傾向から、科学や歴史など多様な分野の本にも目を向けさせること」が大切だと指摘されています。ファンタジーで読書開眼した子には、他のジャンルもぜひ勧めてみましょう。たとえば魔法や冒険が好きなら科学の不思議や歴史上の冒険者の伝記など、興味を繋げられる本があります。実際、ハリポタで読書好きになった男の子がその後親の本棚から自己啓発書を読むようになり、高学年では驚くほど幅広い分野の本を読むようになった例もあります。大事なのは、まず読書そのものを好きになることです。ファンタジーの魅力はその取っ掛かりとして非常に強力です。あとは子どもの興味に応じていろいろな本に出会わせてあげれば、知的世界がさらに広がり、国語でも算数でも深みのある学びにつながっていくでしょう。

教育現場での活用例とまとめ

学校や家庭でできる工夫

ここまで見てきたように、『ハリー・ポッター』をはじめとする物語読書には、小学生の読解力を高める多くのメリットがあります。では、実際に学校や家庭で子どもに読ませたい場合、どのような工夫が有効でしょうか。

教育現場での活用例としては、図書の時間や朝の読書などで人気シリーズを取り入れることが考えられます。学校図書館には『ハリー・ポッター』シリーズを置いているところも多く、貸し出しランキング上位の常連です。先生が「この本おもしろいよ」とおすすめしたり、読んだ子に感想を発表させたりすることで、クラス内に読書ブームが起きることもあります。「友達が読んでるから自分も読む」という同調効果は子どもには大きいので、学級単位で盛り上げる工夫は有効です。実際に、あるクラスで数人の子がハリポタに夢中になっているのを見た先生が読書タイムを設けたところ、クラスの半数以上がシリーズを読み進め、読書感想文の発表会を開いたという例もあります(先生方の交流サイト等で報告)。みんなで本の話題を共有できると読書が楽しい共同体験になります。国語の授業でも扱いやすい題材なので、学期末の自由課題に関連問題を作ってみるなどカリキュラムに絡めることも可能でしょう。

家庭でできる工夫としては、親御さんが子どもの興味を引き出す演出が鍵です。たとえば前述のケースのようにテーマパークや映画と絡めて「この本を読んだら行ってみようか」と動機付けするのも一案です。実際、小学1年生でハリポタを読み始めた男の子の親御さんはUSJ行きをインセンティブに使っています。他にも、「1冊読み終わったら映画版を家族で観ようね」と約束すると子どもは張り切ります。あるご家庭では、ハリポタ全巻読破のご褒美に2023年オープンの東京のスタジオツアー(ハリーポッターの展示施設)に連れて行く約束をし、子どもが楽しみに読んでいたそうです。このように楽しいご褒美やイベントと結びつけると、読書がより魅力的に感じられます。もちろん本来は本そのものの面白さで読んでほしいですが、最初の取っ掛かりとしては効果的でしょう。

また、先のNoteの記事にあったように、まだ自分で読むには難しい年齢の場合は読み聞かせも非常に有効です。5歳・7歳・9歳のきょうだいに母親がハリポタを読み聞かせた例では、5歳児は途中で寝てしまい好きにならなかったものの、7歳の娘さん(筆者)と9歳のお兄さんはすっかり物語世界にハマり、その後自分で続きを読むようになったといいます。読み聞かせには、漢字や難しい語句でつまずかず物語の面白さを純粋に味わえる利点があります。耳で物語を聞いて自由に想像力を膨らませることで、子どもは「読書って楽しい!」と感じるのです。この方の場合、読み聞かせのおかげで「想像する楽しさ」を知り、後に自分で再読したとき物語の奥深さに気づけたと振り返っています。親子で物語を共有する時間は情緒的な絆も深めますし、読書習慣のスタートとして最高の方法でしょう。小学校低学年くらいまでは、難しそうな本はぜひ親御さんが読み聞かせたり、一緒に交代で音読したりしてみてください。子どもが物語への興味を持ち、自力で読みたい!と思ったらしめたものです。

最後に、子どもの自主性を尊重することも忘れてはなりません。親が良かれと思って無理に読ませようとしても、子どもが興味を持たなければ読書は苦行になってしまいます。本記事では『ハリー・ポッター』を例に語ってきましたが、もちろん子どもが好きになる本は他にも沢山あります。大事なのは子ども自身が「この本面白そう!」「読みたい!」と思える出会いです。それがマンガであっても最初は構いません。実はマンガでも語彙や読解力向上に役立つという報告もあります。例えば歴史漫画や科学漫画から活字本に興味を広げる子もいます。『ハリー・ポッター』は非常に多くの子どもの心を掴んできた作品なのでおすすめですが、もしお子さんがファンタジーに興味を示さなければ、ミステリーでもスポーツ小説でも構いません。何か「好きな物語」に出会うことが読解力向上への第一歩です。

おわりに

長文の読破、お疲れさまでした。ここまで、小学生が『ハリー・ポッター』シリーズの読書を通して国語および算数の読解力を向上させる様々な角度について詳しく見てきました。簡単にポイントを振り返ってみましょう。

  • 語彙力アップ: 楽しい物語を読むうちに語彙が豊かになり、知らない言葉に戸惑わず文章を理解できるようになります。語彙力は読解力の基礎体力です。
  • 行間を読む力: 物語の先を予想したり登場人物の気持ちを推測することで推論力が鍛えられ、文章の深い意味まで理解できるようになります。
  • 論理的思考力: 複雑なストーリーを追う経験が因果関係の把握や情報整理の力を育み、筋道立てて考える力が身につきます。これは算数の問題を解く論理力の土台にもなります。
  • 集中力・持久力: 夢中で読書する体験を重ねることで長文を読むスタミナがつき、文章を最後まで読み抜く力と忍耐強さが養われます。
  • 会話文の読解力: 登場人物の会話から微妙な感情や意図を読み取る練習ができ、言葉の裏側を理解する力や共感力が高まります。
  • 算数文章題への応用: 読書で培った語彙力・集中力・論理力が、算数の文章題を正確に読み解く助けとなります。文章を怖がらず分析し、粘り強く考える姿勢が身につきます。

このように、読書は国語力だけでなく学び全般の底力を育てることがお分かりいただけたかと思います。特に『ハリー・ポッター』のような魅力的な物語は、子どもに読書の楽しさを教えてくれる格好の入口です。「勉強のために読書しなさい」ではなく、「読書ってこんなに面白いんだ!」と感じることが結果的に学力向上につながるのです。実際、読書好きな子どもは読書嫌いの子に比べて国語のみならず数学でも良い成績を収める傾向があるとする研究もあります。本を読むことで得られる知識や語彙、思考力や想像力が、教科学習の土台を支えているのでしょう。

読解力は一朝一夕には伸びませんが、日々の読書習慣という積み重ねが確実に子どもを成長させます。そして読解力がつけば勉強全般がぐっと楽になります。本を読む子は自学自習でも理解を深めやすく、授業でも先生の説明を飲み込みやすくなるでしょう。さらに、読書で培った豊かな感性や創造力はテストの点数には現れにくい部分でも、人生を豊かにしてくれる大切な財産になります。

ぜひ、これをお読みの皆様もお子さんや生徒さんに物語の楽しさを届けてみてください。まずは図書館や本屋で『ハリー・ポッター』の本を手に取って、一緒に1章読んでみるのも良いかもしれません。そこからすべてが始まるかもしれません。子どもが本の世界に入り込んでキラキラと目を輝かせる瞬間は、大人にとっても幸せなものです。

最後に、読書が好きな子に育つ5つのポイントを簡単にまとめます。

  • 興味のある本との出会い: 子どもの好奇心をくすぐる本(ファンタジーでも科学漫画でも)を見つけてあげましょう。
  • 楽しい読書体験: 読み聞かせや一緒に映画鑑賞など、本の世界を共有して「面白い!」という気持ちを引き出します。
  • 無理強いしない: 子ども自身が読みたいタイミングとペースを尊重し、読書を義務ではなく娯楽にします。
  • 環境づくり: 本棚にいつも色々な本を用意したり、図書館に連れて行ったり、読書しやすい環境を整えます。
  • 継続をほめる: 読み終えたら存分に褒め、自信と達成感を持たせます。「次も読んでみよう」という意欲につながります。

参考文献・情報源: 本記事ではベネッセ教育総研の報告書や各種教育研究、保護者の体験談、海外の関連研究(Psychology Todayなど)からデータや見解を引用・参照しました。読書と学力の関係について更に詳しく知りたい方は、文末の引用番号から元の資料もぜひご覧ください。読書習慣の効果についての理解が深まり、皆様の教育実践のお役に立てれば幸いです。