小学校1年の算数、計算の意味・順序・方法(式の立て方・文章題)算数を好きになる
式が読める大人、式がわからない子ども
大人にとって「5+3=8」という式は、自動的に読み取り、すぐに答えが出せる“見慣れた形”です。しかし子どもは、「この数字はどんな意味を持っているのか」「なぜ足すのか」「どれが先なのか」を、ひとつひとつ頭の中で解釈しなければなりません。
子どもは「式を読む」こと自体が、まだ発達の途中にあるのです。「記号としての+や-は見えても、関係としての意味がわかっていない」ということが非常によくあります
たし算・ひき算の意味は「動き」をイメージできるかどうか
文章題に出てくるたし算やひき算の式は、実際には物の増減や集合の変化を表しています。
たとえば「8人のところへ3人来たら11人になる」――これは、「人数が増えた」という場面のイメージが頭の中にあるからこそ「8+3=11」と式が立てられます。
けれども、もし「3人来たってどういうこと?その3人は誰?どこから来たの?何人と何人を比べてるの?」という状況の把握ができていなければ、ただの数字の並びにしか見えません。
子どもが計算の意味を理解するには、「増えた」「減った」「もとに戻した」など、数の動きをイメージできるように支えることが大切です。
「順序」がわからない子の頭の中で起きていること
「どっちが先?」「どっちを引く?」と迷っている子どもは、「順序がわからない」のではなく、「その状況を頭の中で再現できていない」のです。
たとえば「りんごが10個あって、3個食べました。残りはいくつ?」という文章題。これを「10-3」と解くには、
・最初にあった数(10)
・減らした数(3)
・残りを求める(?)
という出来事の流れを理解している必要があります。
子どもはこれを頭の中で順番に再現し、「この順ならこう計算する」と理解していくのです。だから式の順序を間違えてしまうのは、経験不足ではなく、「場面の再現が不完全」なサインです。
なぜ式の順番にこだわる必要があるのか?
たし算は順序を入れ替えても答えは同じ(交換法則)が成り立ちますが、ひき算はそうではありません。ここに「式の順番の重要性」があります。
「10-3=7」でも「3-10=-7」でも、見た目は式です。しかし小学生にとっての式は、「現実に起きたことを数字で表す」ものなので、**順番の間違いは「意味の間違い」**です。
式の順序に気を配ることは、「その出来事をどう理解したか」「どんな関係があると思ったか」を確認することでもあります。
式が立てられないのはなぜ? ― 子どもの“つまずき”の中にある思考の芽
よくある誤答には理由がある
たとえば次のような問題があります。
「お菓子が8個あります。3個食べました。残りは何個ですか?」
大人なら「8-3=5」と迷いなく立式できますが、子どもが「3-8」や「8+3」と答えてしまうことがあります。こうした間違いは、単に「覚えていない」からではありません。状況の解釈のしかたがまだ不十分なのです。
たとえば、
・「3個食べた」の「3」が目についた
・「食べる=もらう」と思って増えたと勘違いした
・「減った数」と「もともとの数」の関係が曖昧だった
というように、子どもなりに考えた結果の間違いであることがほとんどです。ここに「考える力の芽」があります。
子どもは「見えるもの」から式を作る
子どもは文章問題の中で、数字と動詞に目を奪われがちです。「8と3が出てくるから、どっちかを使って計算するんだな」と思うまでは自然な流れですが、そのあと「どう関係しているか」まで思いが至るには、十分な対話や体験が必要です。
たとえば、「りんごが6個ありました。4個買い足しました。」
という問題で、「6-4」と立てる子がいた場合、頭の中で「りんごが減っているイメージ」をしている可能性があります。
このときは、正解を教えるより先に、
「最初にあったのはいくつだった?」
「買ったってことはどうなる?」
「今、りんごは増えた?減った?」
という問いかけをしながら、「数字が何を表しているか」「出来事として何が起きているか」を一緒に整理してあげることが大切です。
子どもは「順番が大事」という感覚を持ちにくい
たとえば「10-3」は「10から3を引く」ことで、「3-10」にはなりません。けれども、日常で「どっちが先か」を明確に区別する経験は少ないため、順番の大切さに気づくのは難しいのです。
また、子どもは「引き算=小さい数から大きい数を引くとおかしい」とだけ教えられてしまうと、「3-10」のような式を自信を持って書いたときに、怒られる・否定されるという体験に変わってしまいます。これは思考の芽を摘む危険があります。
大切なのは、「その式をなぜそう考えたのか?」を聞き出し、正誤ではなく**“考え方の過程”を育てる姿勢**です。
保護者のかかわり方で思考は伸びる
間違った式を見て、すぐに「ちがうよ」「正しくはこう」と言ってしまいがちですが、ぜひ次のような関わり方を試してください。
・「どうしてその式にしたの?」(理由を聞く)
・「何が増えたと思ったのかな?」(状況の想像をうながす)
・「もし実際にお菓子があったらどうなるかな?」(具体化させる)
・「別の考え方もあるかな?」(思考の広がりを促す)
こうした声かけは、答えよりも“意味を見つけようとする力”を重視する姿勢のあらわれです。これは文章題だけでなく、すべての学びの基礎になります。
式の立て方を育てる ― 文章題で「考える力」をつける家庭の工夫
たし算とひき算をどう見分ける?
子どもが文章題に取り組むとき、最初につまずくのが「たすのか、ひくのか」の判断です。これは計算方法の問題ではなく、場面の理解の問題です。
たとえば、
「おはじきが7個あります。そこへ3個もらいました。今は何個ですか?」
この問題では「7+3」となりますが、もし子どもが「減った」と感じて「7-3」としてしまう場合、それは「もらった=手放した」と誤解しているか、「今」と「前」の時間の関係がうまく整理できていないことを意味します。
ここで大事なのは、「何が起きたのか?」「それは増えた?減った?」という変化の方向を明確にイメージできるようにしてあげることです。
数量関係を図で考える力を育てる
計算が苦手な子の多くは、数の関係を「図や線」で考える練習が不足しています。図といっても難しいものではなく、「□+3=7」のような式に対して、
・7個の丸を描いて、その中の3個に丸をつける
・棒線で「長い全体」と「部分の長さ」を表す
・箱やブロックで、目に見えるまとまりを描いてみる
こうした作業を通して、「数は見えないが、動かすことができる」「関係がある」という感覚を育てることができます。
たとえば、「8個のお菓子を3人に同じ数ずつ配るとき、1人何個?」というような問題では、式の立て方以前に、絵を描いたり、実物で配ったりすることで考えが整理されます。
式を立てるには「状況を文から数に変換する力」が必要
文章題は、「言葉で書かれた状況」を「数の関係」に置き換える練習です。そのためには以下のステップが必要です。
- 何が出てきたか(人物・物・数)を把握する
- どんな動きがあったか(増える・減る・比べる)を理解する
- 求めるもの(最初・あと・差・合計)を明確にする
- その関係を式に表す(たし算・ひき算・かけ算など)
この4段階のうち、どこでつまずいているかを保護者が見抜くことが支援の第一歩です。
たとえば、「3個減っているのに、たし算にしてしまう」なら、ステップ2(動きの理解)が曖昧。
「どれを聞かれているかわからない」なら、ステップ3(問いの把握)でつまずいています。
保護者ができる関わりの工夫
文章題のとき、子どもが黙ってしまったり、「わからない」と投げ出すのは、決して怠けているのではありません。情報が整理できない状態なのです。
このときは、「じゃあ一緒に場面を思い浮かべてみよう」と声をかけてください。
・「誰が出てきた?」
・「何をしたの?」
・「最初は何個だった?」
・「今はどうなった?」
こうしたやりとりを重ねることで、子どもの頭の中で数が「動き」として結びついていきます。
また、式を立てる段階では「この式は、どの出来事を表しているの?」と逆に問い返すことで、子ども自身が自分の考えを言葉にする練習にもなります。
複雑な文章題と逆思考 ―「考え方の順序」を自分で組み立てられる子へ
2段階の文章題にひそむ難しさ
たとえば、次のような文章題があります。
「おまんじゅうが10個あります。3個食べて、あとから5個買い足しました。今はいくつですか?」
この問題は「10-3+5」と考えますが、これは単純に2つの式を並べるだけでは解けません。起きた出来事の順番を頭の中で整理し、それぞれの操作が何を意味しているかを理解する必要があります。
ここで大事なのは、「順に考えること」ではなく、「意味のまとまりを見抜くこと」です。
- もともと10個あった(基準)
- 食べた=減った → 10-3=7
- 買い足した=増えた → 7+5=12
このように、数量がどう変化していくかを「意味単位」で分けてとらえる力が、2段階の問題には求められます。
順序を逆から考える力=逆思考
さらに発展すると、「逆にたどる」力も必要になります。
たとえば、
「最初に何個かありました。3個食べて、5個買い足して、今は12個あります。最初は何個だったでしょう?」
これは、先ほどの問題の逆です。答えは「12-5+3=10」になります。子どもにとって、このように順序を逆転させて考えるのは非常に高度な力を要します。
しかし、この「逆思考」こそが、本当の意味での数量感覚を育てる鍵です。
子どもがこれを自然にできるようになるためには、「足すと戻る」「引くと減る」「順を戻すと元に近づく」といった感覚を、経験として積み重ねていく必要があります。
逆思考を育てる家庭のかかわり方
逆思考を日常で育てるには、次のような声かけや遊びが効果的です。
・「5を足したら12になったよ。もとはいくつだった?」
・「7個もらって、今は10個。じゃあ、前はいくつだったのかな?」
・「3人増えて8人になった。最初は?」
こうした問いかけは、「答えを当てる練習」ではなく、「数を逆にたどる経験」になります。正解をすぐに教えず、「どうやってわかった?」と尋ねることで、自分の中で数の動きをたどる力が養われます。
式は「自分の考えを見える形にするもの」
子どもにとって、計算式とは答えを出すための手順ではなく、頭の中の考えを外に出す手段です。だから、式を正しく立てるには、「考え方そのもの」が整理されていなければなりません。
式の順番が間違っていたら、「出来事の順番をどう理解していたのか?」を、
式の演算が違っていたら、「その行動は増えた?減った?」を、
それぞれていねいにたずね、確認し、修正していくことで、子ども自身の思考を育てるサポートができます。
最後に ― 正解よりも「わかる」経験を積み重ねて
子どもは、最初から正しく式を立てられるわけではありません。ですが、「自分で考えてたどりついた」「言葉にして説明できた」という体験を重ねることで、自分の思考を信じられる子に育っていきます。
保護者の方にとって、もどかしく見えるやりとりも、子どもにとっては「考える力を育てる時間」です。正解を急がず、「どう思った?」「どうやって考えた?」と問いかけてあげてください。
それが、文章題だけでなく、将来あらゆる問題に向き合うときの自分の考えを組み立てる力の土台になります。
2段階の式の練習問題例(初級~中級)
※式の立て方を問うだけでなく、「どんな順番で考える?」というやりとりを通じて理解を深めてください。
例題1:変化と追加の組合せ(初級)
問題:おまんじゅうが10個あります。3個食べて、あとから5個買い足しました。今は何個ですか?
式:(10-3)+5=12
例題2:増減と比較(初級)
問題:本を8冊持っていて、3冊借りて、5冊返しました。今は何冊手元にありますか?
式:(8+3)-5=6
例題3:前と後の比較(中級)
問題:ある学校には、午前に12人、午後に15人の子が登校しました。そのうち4人が早退しました。残っているのは何人ですか?
式:(12+15)-4=23
例題4:条件つきの合計(中級)
問題:りんごを3個ずつ2人に配りました。その後、自分用に4個とりました。全部で何個使ったでしょうか?
式:(3×2)+4=10
例題5:逆算に移行しやすい出題(中級)
問題:おもちゃが何個かあります。そこから4個出して遊び、あとから7個しまいました。今は13個あります。最初は何個あったでしょう?
式:(13-7)+4=10(※逆思考含む)
逆思考トレーニング用:家庭で使える会話集
※日常会話に自然に取り入れることで、数の操作を逆にたどる力を養います。問いの形や語尾を調整し、子どもの年齢に合わせてください。
■ 基本パターンの逆思考
- 「3を足して10になったよ。もとはいくつだったと思う?」
- 「7を引いたら12になったんだって。じゃあ最初はいくつあったのかな?」
■ 比較から逆を考える
- 「弟のほうが3個多いって言ってたよ。2人で合わせて11個だったら、お兄ちゃんはいくつかな?」
- 「8個だったのが今は5個になってる。いくつ減ったのかな?」
■ 動作の逆をイメージさせる
- 「5人帰って、今は11人いるよ。帰る前は何人いた?」
- 「10円もらって、今は40円持ってる。もらう前は?」
■ 2段階逆思考(応用)
- 「途中で3個なくして、そのあと5個買ったら10個になったって。最初はいくつだったんだろう?」
- 「4人が帰って、2人が来たら今は10人。最初は何人いたかな?」
「どうしてできないの?」の前に ― 大人と子どもの“考え方”のギャップに気づくこと
大人は、たとえば「7+5」や「10-4」といった計算を、ほとんど反射的に答えることができます。これは、長年の経験や反復練習によって頭の中に定着している「結果の記憶(暗記)」によるものです。つまり、「どう考えたか」ではなく、「もう知っているから言える」状態です。
ところが、子どもはまったく違います。彼らにとって「7+5」は、まだ頭の中で具体物や指、ブロックなどをイメージしながら、「7に何を足すと10になる?」「残りはいくつ?」と数を動かして構成している途中なのです。
それにもかかわらず、大人が「どうしてこんな簡単なことができないの?」と問い詰めてしまうと、子どもは「考えること」をやめ、「当てずっぽうで答える」「とりあえず暗記しようとする」という行動に出ることがあります。これは、子どもの思考を途中で止めてしまう大きな障害になります。
親が無意識にしている「暗記の前提」に気づくこと
多くの保護者は、自分がすでにできる計算を「自然にできた」と思い込んでいますが、それは小さいころに誰かから教わったり、何度も経験した結果、記憶に定着した「知っている答え」に過ぎません。つまり、考えているのではなく、思い出しているのです。
しかし、子どもはその「考える体験」そのものを、まさに今積み上げている最中です。「7と何で10になるか?」「5をどう分ければ使いやすいか?」という問いに、自分の力で気づいていくことで、数に対する見通しや構造の理解が育ちます。
考えさせることの価値 ―「正解」よりも「理解」が大切
大人が答えをすぐに与えてしまうと、子どもは「そういうものなんだ」と覚えるだけになります。その結果、「応用がきかない」「文章題になるとわからない」「順番が変わると混乱する」といった現象が起こります。
反対に、「どうしてそう思ったの?」「他にも考え方あるかな?」と問いかけ、考える時間を与えることで、子どもは数の意味や関係性を少しずつつかんでいきます。これが、計算力ではなく数学的な思考力を育てる鍵です。
たとえば、「9+4は?」「えーと……9と1で10、あと3……で13!」と、少し時間がかかっても、自分の頭で考えて出せた答えには「理解」が伴っています。これこそが、学力の土台であり、暗記ではたどりつけない本当の力です。
まとめ
「できないのは当たり前」と受け止めることが、実は最初の一歩です。大人が無意識に使っている「暗記された答え」と、子どもが今まさに組み立てようとしている「考える過程」には、大きな違いがあります。
答えの正しさだけを見ず、考えている途中の姿を認めてあげること。それが、子どもが「考えることを楽しい」と思える力を育て、「数を理解する力」として一生残っていきます。
子どもが何度も同じことを聞いてきたり、間違えたりするたびに、「今この子は、頭の中で数を動かそうとしているんだな」と、ひと呼吸おいて見守っていただけたら、それが何よりの学びの支えになります。

