ロンの劣等感とは?、あんまり描かれてないよね?

ロンの劣等感とは?、あんまり描かれてないよね?

ロンの劣等感とは?あんまり描かれてないよね?

それでも彼の心はずっとザワザワしていた:シリーズ全体から見るロンの影の気持ち

ロン・ウィーズリーは、ハリー・ポッターシリーズの中で、いつも“いる”のに“目立たない”存在でした。ハリーの親友で、ハーマイオニーとも強い絆があり、どんな冒険にも一緒にいる。でも、そんな彼の心の中は、思っている以上にずっと静かに、でも深く傷ついていたように感じられます。

小説でも映画でも、「ロンの劣等感」というテーマは、表面にはあまりはっきり出てこないです。むしろ、彼は笑わせ役だったり、ツッコミ役だったり、どこか軽やかに扱われていることが多い。でも、シリーズ全体を読み返してみると、あちこちに「これはきっと、ロンの“自分なんて”って思いから来てるんじゃないかな」と感じさせる場面が散らばっているんです。

たとえば『賢者の石』では、ロンはハリーに「君はすごいよ」っていう気持ちをストレートに出していますし、自分の家族が貧しくて古着ばかりだってことに対して恥ずかしさも見せています。そこからもうすでに「比べられる自分」っていうのを、彼自身が感じ取っていたのかもしれません。

『秘密の部屋』では、ロンの父が魔法省で働いているのに給料が低いってことがわざわざ語られていたり、ロックハートのような“人気者”に対して素直に憧れたり嫌がったりしているのも、「自分はそんなふうにはなれない」っていう気持ちの裏返しだったのではと思えます。

この「自分は主役じゃない」という意識は、実はずっと物語の中で消えずに残り続けます。

みんなの“すごさ”に囲まれて:ロンが置いていかれたように感じた理由

ロンの周りにいる人たちは、あまりにも“すごい人”ばかりでした。
ハリーは「選ばれし子」。小さい頃から有名で、魔法界の救世主みたいな存在。
ハーマイオニーは、知識も実力もずば抜けている、いわば“完璧な魔女”。

そして、ロンの兄たちも皆それぞれに目立っていました。チャーリーはドラゴンを扱う勇敢な男、ビルは呪文を解くプロフェッショナル、フレッドとジョージは天才的な発明家で商才にも優れている。パーシーでさえ、魔法省に出世していく。

そんな中にいたロンは、自分だけが“特に何かがない”ように感じていたのではないでしょうか。

『炎のゴブレット』で、ロンは一度ハリーとの関係がギクシャクします。トライウィザード・トーナメントの選手にハリーが選ばれたとき、ロンは「また君だけが注目されるのか」と嫉妬心を抑えられませんでした。この場面は、ロンの心にずっとあった「自分は脇役なんだ」という気持ちが、とうとう表に出てきた瞬間だと思います。

彼はハリーの親友であると同時に、ずっと「主役のそばにいるだけの存在」として自分を見ていたのです。

呪いの子で描かれた“その後のロン”:軽さの裏にある重み

『ハリー・ポッターと呪いの子』では、ロンはお菓子屋を経営していて、どこかのんびりした“明るいおじさん”として描かれています。物語的には“和み”の担当でもあり、深刻な空気の中での癒しポジション。でもそれって、少し違和感もあるのではないでしょうか。

ロンは、あれだけ激しい戦いを経験してきたはずです。そして、仲間との関係にも何度も苦しみました。戦いの最中、一度はホークラックスの呪いの影響でハリーと離れたりもしています。あのとき、彼が口にした言葉、「お前はいつも、僕よりすごい」は、まさに彼の心の叫びでした。

でも、『呪いの子』ではその部分はあまり掘り下げられていません。だからこそ、読者は「ロンって結局そんなに苦しんでなかったんじゃないの?」と思ってしまうかもしれません。

でもきっと、本当は苦しんでいたんです。だけどそれを“笑い”に変えて、自分の中で処理してきた。だからこそ、ああやって明るくしていないと、壊れてしまうような不安を、どこかでずっと持ち続けていたのかもしれません。


なんでロンはいつも二番目みたいだったの?

兄弟の中で一番“普通”に見えた苦しさ:生まれた順と能力の呪い

ウィーズリー家は、七人きょうだいというにぎやかな大家族です。でも、その中でロンは“六番目”。上に兄が五人いて、みんなそれぞれ個性が強くて、得意なことがありました。

・ビルは優秀でカッコいい、学校でも人気者
・チャーリーはドラゴン使いで冒険者、強くて自由な存在
・パーシーは真面目で出世頭
・フレッドとジョージは言わずと知れたお笑い担当&商才の天才

その中にいるロンは、どうしても「比べられる存在」になってしまいます。家の中ではいつも「誰かの弟」。服も本もお下がりばかりで、「ロンだけのもの」はほとんどない。誕生日だって、あまり特別扱いされなかったかもしれない。

特に印象的なのは、『賢者の石』でロンが「これはビルの、これはチャーリーの……」と、お下がりのアイテムを紹介する場面。まるで自分の存在が“兄のおまけ”みたいに感じてしまっていたのではないでしょうか。

自分はまだ“何者でもない”という感覚。それは、ホグワーツに入ってからも消えることはありませんでした。

ホグワーツでも“すごい”が目立つ世界:ロンだけが取り残される感じ

ホグワーツでは、ハリーは“有名人”、ハーマイオニーは“天才”。それぞれの才能がどんどん開花していくなか、ロンはなかなか「ロンだけの強み」を見つけられずにいました。

もちろん彼にも得意なことはあります。チェスが上手い、場を和ませる力がある、勇気だってある。だけど、魔法の世界ではそれはあまり“評価”されない分野だったんです。

『賢者の石』で、ロンがチェスの達人として重要な役割を果たしたことは、彼にとって数少ない“自分だけの輝き”でした。でも、その後シリーズが進むにつれて、その部分はあまり深く描かれなくなり、再び“ハリーの親友”としての立場に戻ってしまったように見えます。

『アズカバンの囚人』では、足をケガしながらもシリウス・ブラックに立ち向かおうとした勇気。『炎のゴブレット』では、セドリックやハリーに嫉妬しつつも、やがて自分の未熟さを認める姿。そういった細かな描写には、ロンの「がんばっても、やっぱり置いていかれる」という気持ちがにじんでいました。

みんなが「ロンって、ちょっと頼りないけど面白いよね」と言って笑う場面の裏で、彼は「自分はそれだけなの?」って、自問していたんじゃないでしょうか。

ホークラックスに見せられた“もう一人のロン”:あれはただの幻じゃなかった

ロンの心の闇がはっきり描かれるのは、『死の秘宝』の中でホークラックスに出会ったときです。この場面は、ロンというキャラクターの“心の中身”がついに言葉になって出てきた、重要な瞬間です。

ハリーと一緒に旅をしていた中で、ホークラックスの呪いがジワジワとロンの心を侵していきます。寒さ、飢え、疲れ、孤独。それがすべて、彼の中の「劣等感」を強くしていきました。

そして、ロンはある日ついに「お前は僕なんか必要としてない」と言って旅から離れます。

これは、単に呪いのせいではなく、彼の中にずっとあった「僕は替えがきく人間なんじゃないか」という思いの噴出だったといえます。

その後、彼はハリーとハーマイオニーのキスという“幻”を見せられます。あの幻の中のセリフはすべて、彼の心の奥に隠していた「恐れ」と「怒り」でした。

・「君はいつもハリーばっかり」
・「どうせ自分は選ばれない」
・「ハーマイオニーだって、ハリーの方が好きなんだろ」

この“悪夢”は、ロンがこれまで口に出さずに飲み込んできた、心の毒のような言葉の数々でした。でも、だからこそ、彼がホークラックスを壊す瞬間、それは「自分の弱さに打ち勝った」という意味もあったのだと思います。