なぜ「毒親の子ども」は毒親になりやすいの?遺伝するの?

なぜ「毒親の子ども」は毒親になりやすいの?遺伝するの?

毒親って聞いたことある?

最近、SNSやテレビ、雑誌などでも「毒親」という言葉を目にすることが増えました。この「毒親」という言葉は親の言動や態度によって子どもが心や体に大きな苦しみを感じてしまう状態をさします。たとえば暴力的に子どもを怒鳴ったり、子どもの気持ちを全然考えずに自分の思いどおりにコントロールしようとしたり…。そうした行動が積み重なると子どもはとてもつらくなり、深い傷(きず)を負うことがあります

どうして「毒」なの?

ふつう「親」って、子どもを愛してくれる存在ですよね。だからこそ「毒」なんて言葉といっしょにされると、びっくりする人もいるでしょう。でも、「毒親」と呼ばれる親の行動は、子どもにとって有害なもの、つまり“毒”のように心や成長に悪影響を与えてしまいます。小さなころからそういう状態が続くと、子どもは「自分に自信が持てない」「いつもビクビクしてしまう」「自分の意見を言えない」といった悩みを抱えやすくなるのです

毒親とはどんな親?:具体的なパターン

言葉や態度で子どもを追いつめる

  • 暴言・暴力
    「バカ」「お前なんか生まれてこなければよかった」など、ひどい言葉を何度も言われると、子どもは自分のことを“価値のない存在”だと思い込みがちです。暴力をふるわれれば心だけでなく体も傷つきます。どちらも深刻な問題です
  • 子どもの気持ちをまったく無視
    たとえば、子どもが「こうしたい」「これはいやだ」と言っても一切聞き入れてもらえず、親が一方的に決めたことに従わされるケースです。進路や部活動、人間関係など、子ども自身が決めたいことがあっても「ダメ!」「そんなのムダ!」と押しつぶされると、子どもの自己肯定感(じここうていかん)はどんどん低くなっていきます
  • 過干渉(かかんしょう)
    一見「子どものことをちゃんと気にしている」「面倒見がいい」ように見えても度が過ぎると子どものプライバシーや自主性を奪います。毎日スマホを勝手にチェックされる、友だちとのやりとりをこっそり覗(のぞ)かれるなど、子どもが「自分だけの世界」を持てず常に監視(かんし)されている状態を強いられる場合があります

親の期待を押し付けすぎる

  • “いい子”でいることを強要
    親が高い期待を子どもに押し付け、「テストは全部100点をとりなさい」「こんな学校へ行かないと恥ずかしい」などと無理やり言い続けるケースです。子どもがどんなに努力しても、うまくいかないことはありますよね。でも親から「もっとできるはずなのに、何やってるの?」と言われ続けると、「自分は価値のない人間だ」と思い込みやすくなります
  • 子どもの幸せを親が決める
    進学、習い事、将来の夢などを親が勝手に決めて「あなたはこれが合ってるから!」と言い放つこともあります。子どもは自分のやりたいことを声に出しづらくなり、「親の決めた道を進むしかないんだ」と感じてしまいます。すると主体的に行動する機会を失い、自分で判断する力が育ちにくくなってしまうでしょう

子どもを道具のように扱う

  • 親のストレス発散の対象にする
    「学校や会社でイライラしたから、家で子どもを怒鳴る」「気にくわないことがあると子どもを罵倒(ばとう)する」など子どもに怒りや不満をぶつけ続ける場合です。子どもは理不尽(りふじん)な怒りにさらされ、「お父さん(お母さん)が怖い」と自分の殻に閉じこもることもあります
  • 親が子どもをコントロールして自己満足する
    「あれしろ、これしろ」と子どもを思い通りに動かすことで、親が「自分の力を感じて安心する」ということがあります。しかし、その裏では子どもが強いストレスや不安を感じているかもしれません。子どもはロボットではないので、自分の考えや感情を尊重(そんちょう)されないまま育つと、自分を責めたり無気力になったりしやすいです

毒親の子どもが抱えがちな気持ちや影響

自己肯定感(じここうていかん)の低下

親から否定的な言葉をかけられ続けると自分に対して「どうせ自分はダメだ」「何をしても失敗するんだ」という思い込みが強くなります。自己肯定感が低いと新しいことに挑戦する意欲もわきにくくなり、「自分の意見は言わないほうがいい」と他人に合わせてばかりになってしまうことも

親への依存(いそん)や反発

  • 親を嫌いなのに離れられない
    不思議に思うかもしれませんが、「ひどい親だ」と感じているのに親の言うことを無視できない、どうしても親に認めてもらいたいと思ってしまうというケースがあります。これは、“毒親”の子どもにとって、ごく自然な心理です。子どもは小さいころから親を必要とするし親の愛情を求めるものですから
  • 強い反発心(はんぱつしん)
    一方で親からの支配があまりにもきついと、「もうこんな親の言うことは絶対に聞きたくない」といって家出をしたり、必要以上に攻撃的になる子どももいます。反抗期(はんこうき)が特に激しくなりやすいのも、毒親の子どもに多い特徴のひとつです

心や体にあらわれる変化

  • 不安や落ち込みが続く
    親の態度が原因で、子どもがずっとストレス状態にあると不安感やうつ状態のような気分(気力がわかない、何をやっても楽しくないなど)が続くことがあります
  • 体の不調(ふちょう)
    頭痛やお腹の痛み、めまいなど、精神的なストレスが体の不調となってあらわれることも。病院で検査をしても異常が見つからないことが多いため、周囲には理解してもらいにくいのがつらいところです

なぜ「毒親の子ども」が自分も毒親になりやすいの?

ここからは、いちばん大事なテーマである、「毒親に育てられた子どもが、どうして大人になったときに“同じこと”をしてしまうのか」という部分を深く掘り下げていきます。

親のやり方しか“知らない”まま大人になる

子どものころから親がどんなふうに話し合って、どんなふうにしつけをして、どんなふうに怒っているのかを毎日見てきたわけですよね。それしか見ていないと「親のやり方=普通」と頭の中に刻み込まれてしまいます。
たとえば人が怒るときには「怒鳴り声をあげる」「手をあげる」のが当たり前だと思ってしまうと大人になったとき、自分の子どもに同じように対応してしまう可能性が高くなります

自己肯定感の低さが引き金になる

毒親に育てられた子どもは自分のことを大切に思えなくなることが多いです。すると大人になって子どもに向き合うとき、何かトラブル(子どもが言うことを聞かない・失敗してしまうなど)があったときに、「自分がちゃんとしていないからだ」「ちゃんと叱(しか)らなきゃ、また自分が責められるんじゃないか」と過度に不安になったりパニックになったりしてしまいます
そうすると「ちゃんとさせなくちゃ!」と必死になり、ついつい厳しく怒る方向へ進んでしまうことがあるのです。まさに、昔の親の態度をなぞるように、負の連鎖が続いてしまうのです

トラウマ(心の傷)による反応

暴言や暴力を受けていた子どもは心に深い傷を負っていることがあります。こうしたトラウマは意識していなくても大人になるまで残っていることが多いです。ちょっとしたきっかけ(子どもが反抗したときなど)で、そのとき感じた恐怖や怒りがフラッシュバックするかのように出てきてしまい「同じやり方で制圧しないと落ち着けない」と思いこんでしまうかもしれません
これは脳が強いストレス状態に慣れてしまっているために起こるといわれています。根が深い問題なので専門家に相談して長い時間をかけて向き合う必要があるでしょう

社会や文化のプレッシャー

日本の社会や文化の中には「子どもは親に従うべき」「親のいうことを聞くのが当たり前」といった考え方が昔からあります。これ自体が悪いわけではありませんが、“毒親”的なやり方に正当性を与えてしまうこともあるのです
「うちは昔から親が言うことは絶対だったから」「子どもを殴ってでも正しい方向に導くのが愛情だ」という価値観を持つ家庭では子どもも「そんなものか」と受け入れてしまい大人になってからも同じスタイルを踏襲(とうしゅう)しがちです

どんな気持ちで子どもは苦しむ?

ここでは、より身近に感じてもらうために、いくつか例をあげてみます。

Aくんのケース:テストで100点じゃないと怒られる

Aくんはいつもテストで100点をとらないと、お母さんから「何やってるの?あなたにはガッカリ!」と怒鳴られます。90点をとっても「まだ足りない」、98点でも「あと2点なんで落としたの?」と責められます。Aくんは「僕は全部完璧(かんぺき)じゃないとだめなんだ」と思いこむようになり、自分に対する評価がどんどん下がっていきます。
大人になったAくんは、自分の子どもが少しでもテストの点を落とすと、「なんでこんな点数とるの!」と厳しく責めてしまうようになりました。まさに、母親と同じやり方です。Aくんは苦しみながらも、「自分が育ったときもこうだったから」としか思えなくなっているのです。

Bさんのケース:何でも親の言いなり

Bさんは中学生のときから、友だちや部活、服の選び方まですべて親が決めてきました。「あなたは○○部に入りなさい」「服はこれを着なさい」「××ちゃんと遊んだらダメ」と言われ続け、Bさんは「自分で決める」という経験がほとんどありませんでした。
大人になったBさんは、一見親とは反対のタイプに見えますが、実は自分の子どもに対して「なんであなたは私の言うとおりにできないの?」とイライラをぶつけてしまいます。自分が何も決められなかった分、「子どもをしっかり導かなきゃ」という気持ちが強くなりすぎているのです。

Cさんのケース:過去の暴力がトラウマ

Cさんは小学生のころ、父親がいつも酔っぱらって帰ってきて暴言をはいたり、物にあたって壊したりする姿を見ていました。こわくて毎日泣いていたCさんですが、母親は何もしてくれませんでした。その体験が強いトラウマとなり、Cさん自身が大人になってストレスを感じると、子どもに手をあげてしまうことが増えてきました。「こうしたくないのに、気づいたら手が出てしまう」というのがCさんの苦しみです。

負の連鎖を止める方法

「負の連鎖(れんさ)」というのは、よくないことが次のよくないことを生み出し、それがまた次の代(だい)へと繰り返されることです。しかし、気づいたときに正しい行動をとれば、この連鎖を断ち切ることができます。どうすればいいのか、いくつかのポイントを紹介します

まずは「気づく」ことが第一歩

「自分の親が毒親だったかもしれない」と気づくのは、とても勇気のいることです。親を責めるのは悪いことのように感じるかもしれません。でも、もし親が原因で自分が苦しんでいたり、自分が子どもに同じやり方をしてしまうかもしれないと思うなら、そのことをまず正直に認めることが大切です
「親だから、どんな言動も正しい」わけではありません。自分が感じてきた苦しみを、なかったことにしないでください

 “言葉にして表す”習慣をつける

  • 日記やメモを書いてみる
    自分の気持ちや、親にされたことを書いてみると、「いままで当たり前だと思っていたけど、やっぱりこれって変だよね」と再確認できるかもしれません。頭の中だけで考えていると、情報がぐちゃぐちゃになってしまいがちなので、書き出して整理(せいり)するのが大事です。
  • 信頼できる大人や友だちに相談する
    学校の先生、スクールカウンセラー、身近にいる親戚(しんせき)など、「この人なら話しても大丈夫かも」と思える相手がいたら、思いきって話してみるといいでしょう。人に話すことで、自分の中で固まっていた感情がほぐれることがあります。

新しいロールモデルを見つける

「親のやり方=すべて」ではありません。たとえば友だちの家族がどんな接し方をしているのかを観察(かんさつ)してみたり、ネットや本、マンガなどを通じて「いろんな家族の形」を学ぶことも有効(ゆうこう)です
なかには優しくて厳しいところもあるけれど、子どもの気持ちをとても大事にしてくれる親子関係がありますよね。そういうロールモデル(手本)をたくさん知ることで、「親になったらこんなふうに接したい」「子どもが意見を言いやすいようにしたい」というイメージを作っておくと、自分が実際に親になったとき、毒親のやり方に固執(こしつ)せずにすむかもしれません

感情をコントロールする方法を身につける

毒親に育てられた子どもは、とくにストレスに弱く、ちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んだりしがちです。それは親の行動をずっと見てきたからかもしれません

  • 深呼吸やカウントダウン
    イラッとしたとき、すぐに相手に怒りをぶつけるのではなく、まずは「5秒だけ深呼吸をする」「10秒数える」という習慣をつけましょう。短い時間でも、“冷静になるための休憩”を挟むことが大切です。
  • 気持ちを言葉で表す練習
    子どもに「あなたが悪い!」と直接言うのではなく、「お母さん(お父さん)はいまイライラしているんだ」と“自分の気持ち”を冷静に伝えるように心がけてみてください。これはすぐにできることではありませんが、練習を続けるうちに少しずつできるようになっていきます。

専門家の力を借りる

  • カウンセリングや支援機関
    心の問題は、自分だけでは解決が難しいことも多いです。スクールカウンセラーや地域の子育て支援センター、児童相談所など、相談できる場所はたくさんあります。もし「親から暴力を受けている」「もう限界だ」という状況なら、早めに専門家につなぐのがいいでしょう。
  • 公的なサービスの利用
    経済的な問題や、家族のトラブルで住む場所が不安定なケースなどは、行政(ぎょうせい)が用意しているシェルターや一時保護などを利用できる場合があります。とても勇気がいることですが、ひとりで悩んで無理をするより、安全を優先(ゆうせん)することが大切です。

Q&A:よくある疑問や悩みに答えます

Q1. 親を「毒親」って呼ぶのは悪いことじゃないの?

A. 「毒親」という言葉は、親を悪者扱いするためだけにあるわけではありません。子どもにとって有害(ゆうがい)な言動をとり続ける親を客観的に表すための言葉です。もし自分の親がそういうふうに感じられるなら、「自分がそう思うのはおかしくない」ということを知ってほしいです

Q2. 親のことを嫌いになったり、恨んだりする自分がイヤです。

A. 親に対して嫌だと思う気持ちは、あなたが「傷ついた」ということの証拠(しょうこ)です。まず、「傷ついた自分がいるんだな」と受け止めてあげてください。すぐに親を許そうとしなくても大丈夫です。時間をかけて、自分の気持ちを整理していくことが必要な場合が多いです

Q3. 自分はまだ中学生だけど、もし将来、子どもを持ったら同じことをしそうでこわい。

A. その「怖い」という気持ちこそが、あなたが“負の連鎖を断ち切りたい”と思っている証拠です。そう思ったときこそ、自分の親のやり方が当たり前ではないと気づいている状態なので、ぜひいまからいろんな“子どもとの向き合い方”を知っておくといいでしょう。友だちや先生、カウンセラーに話してみるのも大切です。将来のあなたは、いまの不安をバネにして、きっと変わることができます

Q4. 他人に「うちって毒親かも」と言うのが怖い…。

A. 「親の悪口を言うのは、子どもとしてダメなこと」だと思う気持ちがあるかもしれません。でも、家族というのは本来、お互いを大事にし合う関係です。それができていないのなら、一度誰かに話して、「こんな家って普通なのかな?」「どうしたらいいんだろう」と意見をもらうことが、あなた自身の心を守る大切なステップになるかもしれません


気づいたときがチャンス

ここまで読んで、「毒親って意外と身近な問題なんだな」と感じた人もいるかもしれません。あるいは、「自分の家がまさにそうだ…」とショックを受けた人もいるかもしれません。でも、大丈夫。
気づいたときこそが、変われるチャンスでもあるのです。「自分はこうなりたくない」「こんなに苦しんだのに、同じことを繰り返したくない」という強い思いがあれば、時間はかかっても、負の連鎖を断ち切ることは可能です。

いまこの瞬間からできる行動

  1. 自分の気持ちを言葉にする(書き出す)
  2. 誰か一人でもいいから信頼できる人に相談する
  3. 本やネット、周りの人たちを見て新しい価値観を学ぶ
  4. 小さなことでいいから好きなことや得意なことを見つけて自分をほめる

 

おわりに

毒親に育てられた子どもは、自分だけが苦しい思いをしているように感じがちです。だけど実は似た悩みを抱えている人はたくさんいます。自分だけが“おかしい”わけじゃありません。もしそう感じるときは、ぜひ周囲や専門家の力を借りて、一歩ずつでも前に進んでみてください

  • 「話せる人がいない…」と思っても学校にはスクールカウンセラーという専門家がいるかもしれません
  • 児童相談所や子どもホットラインなども、あなたを助けるために存在しています

大人になったら必ず親のようになってしまう、というわけではありません。気づいて努力することで自分がされてイヤだったことをしない親になることも十分に可能です。なによりもまず自分自身を責めすぎずに、「自分は大切にされるべき存在だ」という気持ちを忘れないでいてくださいね

もし、この記事を読んで「もしかして自分の親は毒親かも…」と思ったなら、どうかあなたの苦しい気持ちを否定しないであげてください。そして必要があれば周りの助けを借りたり情報を探したりして、少しずつでも安全な方向へ進めるように行動してみてください。

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