マルフォイって、なんでケイティを呪ったの?
ハリーポッターの中でも、6巻『謎のプリンス』でのケイティ・ベルの事件は、読んでいてかなりショックだった人も多いと思います。あんなに優しくて明るい子が突然空中に浮かびあがって、泣き叫ぶように呪われるシーン、忘れられませんよね。しかも、あれを仕組んだのがマルフォイだったって知ったとき、「なんでそんなことまでしたの…?」ってすごく疑問に感じました。
ここでは、小説と映画、そして『呪いの子』までをぜんぶ見直して、「マルフォイがなぜあそこまでやったのか」をゆっくり、しっかり、ひとつずつ考えていきます。
表面だけじゃわからない、マルフォイの気持ち
マルフォイは最初のころから、ちょっと意地悪で、上から目線で、嫌なことばかり言ってくるキャラでした。ハリーやロンに「血筋が大事だ」とか「マグル生まれはダメだ」とか、ひどい言葉を何回もぶつけてました。でも、それだけじゃないんです。
マルフォイは、家族の期待とか、純血主義のプレッシャーとか、いろんなものに縛られてたんです。お父さんのルシウスは、闇の魔法使いに近い考えの持ち主で、「強い魔法使いであるべき」「純血で誇りを持て」って考えを小さい頃から植えつけていた感じなんです。
ホグワーツの中でのマルフォイの居場所
スリザリン寮の中では、マルフォイはちょっとリーダーっぽい立場にいたけど、それって本当の友情じゃないんですよね。クラッブやゴイルは、ただマルフォイの言いなりで、自分の意思では動かない。だから、マルフォイ自身も本当は「自分が誰にも必要とされていない」って、心のどこかで感じていたのかもしれません。
【いよいよ本題】ケイティを呪った理由って、何だったの?
本当はマルフォイが直接呪ったんじゃない
ケイティ・ベルが呪われたとき、実際にその場にマルフォイはいませんでした。ケイティが持っていた“呪いのネックレス”は、マルフォイがこっそり準備して、ホグズミードの「ゾンコのいたずら専門店」近くでケイティの持ち物にすり替えたものでした。
でも、マルフォイの目的は、ケイティを傷つけることじゃなかったんです。
狙いはダンブルドアだった
実はこのネックレス、マルフォイはダンブルドアを殺すために使おうとしてたんです。ヴォルデモートから「ダンブルドアを殺せ」という命令を受けて、もしできなかったら、自分や家族が殺されるという立場に追いこまれていました。
だけど、マルフォイはまだ16歳。人を殺すなんて、普通は無理です。だから、自分の手を汚さずに済むよう、いろんな遠回りな方法を試していたんです。そのひとつが、ケイティにネックレスを運ばせるという計画でした。
なぜケイティだったのか?
じゃあ、なんでケイティが選ばれたのか?それは単純に「運悪くそこにいた」からなんです。
ケイティはホグズミードに買い物に来ていて、ネックレスを誰かに渡すためにマルフォイの指示で動かされたのですが、その途中でうっかりネックレスに触れてしまった。呪いが発動してしまったんです。
このときのケイティの苦しみ方はすさまじくて、本当にもう死にかけてました。でも、これは「マルフォイの残酷さ」というより、「恐怖からくる無理な行動」の結果なんです。
【作者の考えを探る】J.K.ローリングがここで描きたかったものって?
“悪い子”にも心がある、ってことかもしれない
この事件を通して、J.K.ローリングは「悪役に見える人にも、心の葛藤や弱さがある」ってことを見せたかったんじゃないかと思います。
マルフォイは、純粋に悪人として描かれているわけじゃありません。彼は恐怖と罪悪感の間でゆれて、自分の行動に悩み、最後には殺しを実行できませんでした。そのあと、スネイプがダンブルドアを代わりに殺すことになるけど、それもまたマルフォイを守るための行動でした。
マルフォイの“成長”というテーマ
『死の秘宝』では、マルフォイは明らかに変わっていきます。戦いの中で何が正しいのかを考え始め、自分の立場をあえて言わないことで家族を守ろうとします。
そして『呪いの子』では、マルフォイは立派な父親として登場します。息子スコーピウスへの愛情、そしてハリーたちとの協力関係を築く姿は、「あのマルフォイがこんなふうになるんだ」と、多くのファンを感動させました。
ケイティ・ベルってどんな子だったのか?
明るくて元気、でも目立たないタイプのグリフィンドール生
ケイティ・ベルは、グリフィンドール寮に所属していた女の子で、ハリーたちより1学年上です。初登場は『賢者の石』の時点ですでにクィディッチチームの一員として紹介されていて、スポーツが得意な印象が強い子でした。
でも、小説を通してみると、実はそんなにセリフが多いわけでもなく、物語の中心人物でもありません。だけど、クィディッチやホグワーツでの生活の中で、少しずつ「ケイティって、こんな子なんだな」とわかるシーンがいくつかあります。
クィディッチへの情熱は本物だった
ケイティは2年生のころから、グリフィンドールのクィディッチチームでチェイサー(得点を入れるポジション)として活躍していました。ハリー、フレッド、ジョージたちと一緒にプレイしていて、チームの中では信頼される存在です。
チェイサーとしてプレイし続けることは簡単ではありません。ホグワーツの試合はとても本格的で、空中でのぶつかり合いも激しい。でもケイティは何年もチームに残っていて、しかも交代させられることもなかった。つまりそれだけ、実力があって、信頼も厚かったということです。
試合中はいつも真剣で、勝つために全力を尽くすタイプ。でも、試合が終われば、仲間と笑い合うような、明るく元気な雰囲気を持っていた子だとわかります。
友達との関係も、しっかりしてた子
ケイティは、同じグリフィンドール寮のアリシア・スピネットやアンジェリーナ・ジョンソンとすごく仲が良くて、よく3人でクィディッチの話をしていました。彼女たちは同じチームの仲間であり、ルームメイトでもあります。
この3人は、いわば「女子版フレッド&ジョージ」みたいな、明るくてエネルギッシュなグループだったとも言われています。チーム内ではムードメーカー的な存在でもあって、男子に負けない勢いで活躍していたんです。
つまりケイティは、ただの“その他大勢”の生徒じゃなくて、仲間たちとの絆を大切にしながら、自分の居場所をちゃんと作っていた子だったんですね。
呪いのネックレス事件がもたらした大きな傷
でもそんなケイティに、あの呪いのネックレスの事件が襲いかかります。
6年生のホグズミード訪問の日、ケイティは友達のリーネンと一緒に買い物に出かけていました。そこで何者か(=マルフォイ)からこっそり呪われたネックレスを渡されてしまう。渡された理由は、「これを誰かに届けてほしい」と頼まれたから。ケイティは、悪意なんてこれっぽっちもなかったんです。ただ「お願いされたから届けよう」と思って受け取っただけ。
でも、ちょっとした手違いでそのネックレスに触ってしまった。すると、ものすごい叫び声を上げながら、空中に巻き上げられて、体中が苦しみにゆがんでしまいます。その描写は読んでいる側にも強い衝撃を与えるもので、「ケイティが死ぬかもしれない」と思わせるほどでした。
事件後のケイティはどうなった?
その後ケイティは、セント・マンゴ魔法疾患傷害病院で長期間の治療を受けます。最終的に命は助かりましたが、学校生活からはしばらく離れざるを得なくなりました。
この事件を通して、ケイティがどれだけ大切な存在だったかがわかるようになります。チームメイトたちは動揺し、ハリーは「マルフォイがやったに違いない」と直感で感じます。そして、誰もがケイティの回復を心から願っていました。
ケイティ自身は、この後物語の中心に戻ることはあまりないけれど、ホグワーツの戦いに最後まで参加していたことが『死の秘宝』で描かれています。つまり、彼女はただの被害者ではなく、自分の力で最後まで戦おうとした、強い心を持った子だったということです。
ふつうの女の子が、戦いに巻き込まれるということ
ケイティのエピソードは、「ふつうの魔法学校の生徒」がどれだけ簡単に闇の世界に巻き込まれてしまうか、ということをはっきりと示しています。彼女は闇の魔法使いでもなければ、ヴォルデモートのことを追いかけていたわけでもない。だけど、“ほんの少しの偶然”と“ちょっとした油断”で、命を落としかけたんです。
この出来事が、ハリーたちや読者に「戦争は一部の人だけのものじゃない。誰もが巻き込まれる危険がある」という現実を突きつけてきたのだと思います。
スネイプがなぜマルフォイを守ったのか?
ただの命令じゃない、もっと深い理由があった
スネイプがドラコ・マルフォイを守る姿は、6巻『謎のプリンス』から7巻『死の秘宝』、さらに舞台作品『呪いの子』まで通して、一貫して描かれています。でも、それはただダンブルドアに「守ってやってくれ」と頼まれたからだけじゃありません。もっと、スネイプ自身の過去や心の傷が関係していたんです。
マルフォイを守るという行動の裏には、「もし自分が過去に、あのときあの子を守れていたら」というスネイプ自身の後悔、そして「もう誰も失いたくない」という強い願いがあったと、私は思います。
ダンブルドアとの約束、それだけならここまでしない
命をかけての“誓い”が意味すること
スネイプがマルフォイを守ると本格的に決めたのは、ナルシッサ・マルフォイ(ドラコの母)から「破れぬ誓い」を求められたときでした。この誓いは魔法で強制されるもので、守らなければ死んでしまいます。
スネイプはそれを承知の上で、誓います。
- マルフォイを見守ること
- 彼が任務に失敗したら、代わりにそれを完了すること(つまり、ダンブルドアを殺すこと)
これは普通に考えても、すごく大きなリスクですよね。でもスネイプは一瞬もためらわずに引き受けた。そこには「任務だから」とか「ダンブルドアの命令だから」なんて軽い理由じゃなくて、もっと深い思いがあったと考える方が自然です。
スネイプがマルフォイに重ねた“ある人物”
それはリリーではなく、「昔の自分」
スネイプはマルフォイを見て、きっと「昔の自分」を思い出していたんじゃないかと思います。
彼もまた、若いころから闇の魔術にひかれ、間違った仲間(死喰い人)に入っていきました。大切な人(リリー)を失って、自分の過去を激しく悔やんだ。あの時の自分と同じように、マルフォイも間違った世界に足を踏み入れようとしている。でも、まだ間に合うかもしれない。だから、何としてでも助けたかったんです。
マルフォイが人を殺さないように、罪を背負わせないように、スネイプは影でこっそり支え続けていました。ときには叱るように、でもそれはむしろ「ちゃんと見てるからな」という合図だったのかもしれません。
「あの子に自分と同じ後悔をさせたくなかった」
闇の側にいながら、誰よりも優しかった人
スネイプは、ヴォルデモートの側でスパイとして動きながら、本当はダンブルドアと協力して善の側のために尽くしていました。でもその中で、心の底ではずっと「リリーを失った」という事実を引きずっていました。守りたかった命を守れなかった。その後悔が、彼の行動のすべてを動かしていたんです。
だからこそ、今度は守れる命を守るために動いた。たとえ誰にも理解されなくても、嫌われても、誤解されても、それでもいいから守りたかった。それがスネイプの愛の形だったんです。
『死の秘宝』でのスネイプとマルフォイの距離感
一緒にいないのに、守られていた時間
『死の秘宝』の中で、スネイプはホグワーツの校長になります。表向きは「ヴォルデモート側」の人間に見えるけど、実はホグワーツの生徒たちを守るために必死でした。
このときマルフォイはもう「何が正しくて、何が間違いなのか」がよくわからなくなっていて、かなり不安定でした。戦いの中で、自分の名前を言われても答えなかったり、ハリーたちを助けようとしたり、あきらかに心がゆれていました。
スネイプは直接的にマルフォイと話すことは少なかったけど、彼の身の安全や立場を守るよう、裏で細かく配慮していたと思われます。つまり「見えないけど、ずっとそばにいた」んです。
『呪いの子』での“スネイプの記憶”が教えてくれたこと
『呪いの子』の中では、別の時間軸でスネイプが生きている場面が描かれます。そこでは、彼が死喰い人たちと戦い、仲間のために命を投げ出す姿がしっかりと描かれています。
そしてそこでわかるのは、スネイプは「誰かのために犠牲になること」を迷わず選ぶ人だった、ということです。ダンブルドアのためだけじゃなく、リリーのため、ホグワーツのため、そして“未来を変えられるかもしれない子どもたち”のため。
マルフォイを守ることは、その延長線上にあったと思います。彼はもう二度と、自分のような後悔を誰かにさせたくなかった。マルフォイに“人殺し”という汚れをつけたくなかった。それが、心からの願いだったはずです。

