ITストラテジスト試験は独学でも合格できるのか?
「独学では無理」と言われるけど、本当にそう?
ITストラテジスト試験に挑戦しようとすると、よく耳にするのが「独学では無理」「論文で落ちるからスクールに行った方がいい」といった声です。情報処理技術者試験の中でも最上位に位置づけられている試験ですから、不安に思われるのはごく自然なことです。私も、過去にそうした声に戸惑った一人でした。
でも、今は胸を張ってこう言えます。「独学でも、しっかり合格できます」と。
なぜそう言い切れるのかというと、この試験は戦略的に学ぶことで、着実に実力を積み上げられる構成になっているからです。もちろん簡単とは言いません。でも、正しいルートを選べば、ゴールにたどり着くことは可能なのです。
ITストラテジスト試験って、どんな資格?
まず、試験そのものがどのようなものかを少しだけご説明させてください。
ITストラテジスト試験は、経済産業省が管轄する情報処理技術者試験のうちのひとつです。IT業界でキャリアを積んできた方が、次のステップとして「経営とITをつなぐ役割」へと進むための登竜門となる資格でもあります。
この試験では、たんにITの知識だけではなく、経営視点での戦略立案や課題解決力、そして論理的な表現力までが総合的に問われます。いわば「経営とITを橋渡しする人材」としての能力が評価される試験です。
つまり、「エンジニアとしての経験を経て、さらに上を目指したい」という方にとっては、非常に意義のある資格なのです。
合格者に共通する「学び方」とは?
では、独学で合格している方たちは、どのように学んでいるのでしょうか。
実は、彼ら・彼女らに共通しているのは、「学ぶ順序」と「重点の置き方」を正しく理解していること」なんです。
この試験は、午前I・午前II・午後I・午後IIと4つの区分に分かれており、それぞれで求められるスキルが異なります。
- 午前I:主にITの基礎的知識。応用情報技術者試験と共通で、過去に合格していれば2年間は免除されます。
- 午前II:経営や戦略に関する専門知識が問われます。
- 午後I:記述式で、IT戦略の事例についての考察力を試されます。
- 午後II:論文形式。ご自身の実務経験をもとに、戦略的に記述していく内容になります。
特に午後IIは、自分の体験や視点を活かして、論理的に説得力ある文章を構成する力が求められるため、苦手意識を持つ方が多いのですが、ここも工夫次第で乗り越えられます。
なぜ「独学」でも合格できるの?
独学と聞くと、「孤独そう」「情報が少なそう」といったイメージを持たれるかもしれません。でも実際には、ネットを活用すれば、無料で質の高い情報や過去問、体験談が豊富に手に入る時代です。
また、独学には「自分のペースで、深く学び直すことができる」という大きなメリットがあります。特に社会人の方にとっては、時間の自由度が何よりの武器になりますよね。
そしてもうひとつ大事なこと。それは、ITストラテジスト試験そのものが「知識の量」よりも「思考の質」を問う試験であるという点です。テキストを丸暗記するだけの学習では通用しませんが、それは言い換えれば、時間をかけて考えることのできる独学スタイルの人に向いている試験とも言えるのです。
独学を成功させるために意識しておきたいこと
では、独学で合格を目指すにあたって、どんな姿勢が大切なのでしょうか。
まず一番大切なのは、「継続できる環境を整えること」です。どんなに優れた教材があっても、続けられなければ意味がありません。通勤のすき間時間を活用したり、週末にまとめて復習したりと、自分のライフスタイルに合った学習サイクルを作ってみてください。
次に大切なのは、「過去問に触れることを恐れない」こと。過去問を見て、最初は「こんなに難しいの!?」と驚くかもしれません。でも、これは誰もが通る道。最初から理解できる人はいません。繰り返し挑戦しながら、少しずつ解けるようになることが大切です。
そして最後に、「試験を通じて成長する」という視点を持つこと。合格はもちろん嬉しいことですが、それ以上に、経営やIT戦略について深く考え、実務に活かせる力が身につくことこそが、この試験の真の価値だと私は感じています。
ITストラテジスト試験の全体像を知る
—「この試験、いったい何を見てるの?」をやさしく読み解く—
ITストラテジストって、どんな人を目指す資格なの?
まずは、「ITストラテジスト」という言葉から少しだけやさしくひも解いてみましょう。
「IT(Information Technology)」は、言わずと知れた情報技術のことですよね。そして「ストラテジスト(Strategist)」というのは、「戦略家」や「企画立案を得意とする人」のことを指します。
つまり、ITストラテジストとは、「ITを使って経営の未来を描く戦略家」という役割を担う人なんです。
この資格が求めているのは、たとえばこういう人です。
- 社内システムの導入にあたり、「その仕組みは何のために必要なのか?」を経営層と一緒に考えられる人
- 単なるIT導入ではなく、「事業がどう変わるか」を見すえたうえで、提案・実行ができる人
- 技術だけでなく、人・組織・お金の流れも理解して、全体最適を描ける人
ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「技術と経営の両方に目を向けられるバランス感覚のある人」なんですね。
現場で手を動かすことよりも、少し俯瞰して「経営に貢献するには何が必要か」を考える力が求められる試験だと思っていただくと、イメージしやすいかもしれません。
どんな試験構成なの?4つのステップに分かれています
ITストラテジスト試験は、大きくわけて4つの試験区分で構成されています。午前から午後まで、それぞれに特徴があるので、ひとつずつやさしく解説しますね。
午前I:基本知識の確認テスト(選択式)
まず最初の「午前I」は、IT全般の基礎知識を問うものです。これは、応用情報技術者試験と同じ内容で、もし過去に応用情報に合格していれば、2年間は免除されることになっています。
問われる範囲はとても広く、たとえば次のような分野が出てきます。
- コンピュータの仕組み
- ネットワークやセキュリティの知識
- プロジェクト管理やマネジメント
つまり、「基本ができているか」をチェックされる部分です。合格者の多くがここを免除で通過しているので、最初の壁にはなりにくいです。
午前II:経営とITのつながりを見る知識問題(選択式)
次の「午前II」は、ITストラテジスト特有の専門分野に踏み込んだ内容になります。ここが独学の方にとって、ちょっと取り組みづらく感じる部分かもしれません。
出題されるテーマは、たとえばこんな感じです。
- 経営戦略とIT戦略の関係
- 情報システムの企画・立案
- DX(デジタルトランスフォーメーション)や新技術の活用
- 情報化投資や業務改革(BPR)
用語がちょっと難しいですよね。たとえば「BPR」というのは、「Business Process Re-engineering」の略で、業務の流れそのものを根本から見直す改革のことを指します。
このように、ITだけでなく経営や組織のことまで広く学ぶ必要があるのが、午前IIの特徴です。
午後I:記述式で「考える力」が問われます
午後Iでは、実際の企業で起こりそうな事例が出題され、その課題に対してどう考えるかを記述式で答えていく形式です。
たとえばこんな問題があります。
「業務改善において、新しい情報システムを導入する際、現場からの反発がありました。あなたならどう対応しますか?」
ここでは、正解が一つに決まっているわけではありません。大切なのは、「その問題の背景をどう読み取ったか」「どんな視点で答えを出したか」なんですね。
求められるのは、読解力・思考力・表現力。独学の場合は、過去問を解く際に「自分の答えは設問の意図に合っているか?」をしっかり確認しながら練習していくことが大切です。
午後II:自分の実務経験を活かす論文試験
そして最後にやってくる最大の関門が、この午後II。テーマに沿って、自分の実務経験をもとに2000文字程度の論文を書くというものです。
一見、とてもハードルが高そうですよね。でも、ここでポイントになるのは、「実務経験の棚卸し」と「型にそった構成力」です。
論文ではたとえば、
- どんな課題に向き合ったか?
- どんな戦略を立てたか?
- ITの力でどう変革したか?
- その結果、何が変わったのか?
といった流れを、自分の言葉でしっかり書き上げることが求められます。
評価されるのは「実務経験の内容の良し悪し」よりも、その経験をどう論理的に構成し、相手に伝えるかなんです。
つまり、論文の書き方やフレーム(構成)を理解しておけば、独学でも十分に合格レベルに達することができるんですよ。
この試験を「どう受け止めるか」で、学び方が変わる
ITストラテジスト試験は、ただの資格取得を超えて、「自分のキャリアをもう一歩上に引き上げる」きっかけになるような存在です。
一見するととても難しそうな内容ですが、それぞれの試験区分で何が問われているのかを丁寧に理解することで、独学でも対応できる準備はしっかり整います。
次回からは、この試験に向けて「どう学んでいくか」という実践的なお話に入っていきます。とくに独学でがんばっている方がつまずきやすいポイントや、モチベーションの保ち方についても、やさしくご紹介していきますね。
ITストラテジスト試験を独学で突破するための3つの戦略
—ムリなく、でも着実に前へ進むために—
はじめに:がんばる方向を、間違えないことが大事です
ITストラテジスト試験に向けて、やる気はある。でも「何から始めたらいいのかわからない」「このやり方で本当に合っているのかな」と、不安になってしまう方も多いと思います。
独学だからこそ、周囲に相談できる人がいなかったり、自分のやり方が正しいかを確認する機会がなかなか得られなかったりしますよね。私もそうした声をたくさん見聞きしてきました。
だからこそ、今どの方向に進めば良いのかをしっかり見極める「戦略」が大切なんです。ただがむしゃらに勉強するのではなく、試験の特徴に合わせたやり方で取り組めば、学習の効率はぐっと上がります。
ここでは、独学で合格した方々が実践していた、再現性の高い3つの学習戦略をご紹介します。
戦略1:ゴールから逆算して、学習計画を立てよう
まずはじめに意識したいのが、「試験日から逆算して、計画的に準備を進める」ことです。
この試験は、出題範囲がとても広く、理解力・表現力・応用力など、さまざまな力が求められます。だからこそ、無理のないスケジュールで少しずつ取り組むことが、本当に大切になってきます。
6ヶ月の学習スケジュール例(社会人向け)
たとえば、試験まで半年あると仮定した場合、こんなふうに分けて考えてみましょう。
| 期間 | 学習内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 1ヶ月目 | 午前Iの復習+午前IIの基礎 | 知識の整理と再確認 |
| 2〜3ヶ月目 | 午前II+午後Iの過去問演習 | 出題傾向に慣れる |
| 4〜5ヶ月目 | 論文構成の学習+実際に書いてみる | 論理構成と表現力を鍛える |
| 6ヶ月目 | 総復習+弱点補強 | 最後の仕上げ |
このように、「今はどこに力を入れるべき時期か」を把握することが、独学では特に大切なんですね。
戦略2:教材は「少なく、深く」。選びすぎは逆効果
次に大切なのが、「どんな教材を使うか」という選択です。書店に行くと、試験対策の参考書や問題集がずらりと並んでいて、どれを選べばいいのか迷ってしまいますよね。
でも、ここで強くお伝えしたいのは、教材は多ければ多いほど良い、というものではないということ。むしろ、「自分に合った一冊を繰り返し使い込むこと」の方が、ずっと大きな力になります。
教材選びのポイント
- 基本書は1冊だけに絞る
全体像を体系的に解説している本が1冊あれば十分です。難しすぎず、わかりやすい言葉で書かれているものを選びましょう。 - 過去問題集は最新5年分をカバーしたものを
特に午後Iと午後IIは、過去問に触れておくことで出題の傾向や設問のクセが見えてきます。 - 論文対策は「構成テンプレート」が載っているものを
いきなり文章を書き始めるのは難しいので、論文の“型”が紹介されている参考書が安心です。 - 無料のWeb資料も上手に活用
IPA公式サイトでは過去問と模範解答が公開されていますし、有志のブログや解説動画もとても参考になります。
教材をたくさん買い込むよりも、1冊を3周以上やり込むくらいのつもりで取り組んだ方が、確かな力になりますよ。
戦略3:読んで覚えるだけじゃダメ。「書いて、話して、使ってみる」
最後の戦略は、インプットに偏らないこと。つまり、「読むだけ」「見るだけ」の勉強から抜け出して、自分の言葉で説明したり、書いたりするアウトプット学習を取り入れることです。
この試験では、ただ知識を知っているだけでは不十分なんですね。その知識をどう使うか、どう伝えるか、という“実践力”が問われる試験なんです。
アウトプット学習の取り入れ方
- 午前II・午後I対策:
解いた過去問を「なぜそう考えたか」をノートに書いたり、声に出して説明したりすると、理解が深まります。 - 午後II対策:
まずは「書く前に話す」練習から始めてみましょう。「こんな課題があって、こう解決したよ」と、人に説明するように声に出してみると、自然と論理のつながりに気づくことができます。 - 解いた問題は“放置”しない:
間違えた問題こそが宝物。なぜ間違えたのかを丁寧に見直すことで、知識が自分の中に根づいていきます。
少しずつでもアウトプットを積み重ねると、自信がつき、午後の記述式試験への不安も減っていきますよ。
独学には「自由」があります。でも「迷い」もつきもの
独学の良さは、自分のペースで勉強ができること。でもその反面、「このやり方でいいのかな?」という不安もつきまといますよね。
そんなときに、この3つの戦略——
- 合格日から逆算したスケジュール作り
- 教材は少なく深く
- アウトプット学習で知識を使う練習
を思い出していただけたら、きっと今やるべきことがはっきり見えてくるはずです。
独学だからこそ、自分で決める力と続ける力が身につきます。それは、まさにITストラテジストに必要な素養そのもの。
次回は、実際の試験対策にさらに踏み込んで、「午前I・II、午後I・IIそれぞれの攻略法」について、丁寧にご紹介していきますね。
あなたの努力が実を結ぶよう、心から願っています。
試験区分別!ITストラテジスト独学完全攻略
—どの区分も「怖がらず」「丁寧に」向き合えば、必ず突破口は見つかります—
はじめに:4つの試験区分、それぞれの「求められる力」を知ることから
ITストラテジスト試験では、午前I・午前II・午後I・午後IIという4つの試験区分が設定されています。
それぞれに求められているものが少しずつ違っていて、学び方にも工夫が必要です。たとえば午前は知識確認、午後は思考力・表現力の試験、というように性質がまったく異なります。
この章では、それぞれの区分に対して独学で合格を目指す人にとって効果的な学び方を、やさしい言葉で丁寧にご紹介していきますね。
午前I・午前II対策:過去問こそ最強の味方
午前Iは「ITの基礎力」チェック
午前Iは、応用情報技術者試験と同じ出題範囲から、4択形式で30問ほど出題されます。
過去に応用情報を取っていれば2年間の免除が可能ですので、免除できる方はぜひ活用しましょう。
そうでない場合も、過去問中心に3年分程度を繰り返すことで、十分に合格点を取る力がつきます。
ポイントは、「正解した問題も、なぜ正解だったのかを説明できるか?」を意識して学ぶこと。ただなんとなく覚えるのではなく、背景の仕組みや原理まで理解できると、他の問題にも応用がきくようになります。
午前IIは「経営×IT」の融合問題
午前IIは、ITストラテジストらしい経営的な視点とIT戦略を絡めた問題が出題されます。こちらも4択形式ですが、内容はやや抽象的・概念的です。
たとえば、次のようなジャンルがよく出てきます。
- 経営戦略と情報戦略の関係性
- システム化構想やIT投資の意思決定
- 企業の業務改革(BPR)やSCM(サプライチェーン)
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
これらは日常的な業務ではなかなか意識しづらい分野かもしれませんが、「なぜこの考え方が必要なのか?」を理解することが一番の近道です。
過去問の使い方:こんなふうに取り組んでみてください
- 5年分を3周以上
繰り返し解くことで、よく出るテーマや選択肢のパターンが見えてきます。 - 選択肢は「正解」だけでなく「なぜ他は違うのか」まで確認
不正解の選択肢にも、学びのヒントがたくさん詰まっています。 - IPA公式の解説に頼りすぎず、自分なりに説明する練習を
問題を見ながら、「この選択肢って、どういう考え方から来てるのかな?」と自問自答してみてください。
午後I対策:「読んで、整理して、まとめる力」を鍛える
午後Iは記述式で、2問を90分以内に解く形式です。実際の事例に基づいて、「このとき何を考えるべきか?」と問われる問題が中心です。
内容としては、たとえば次のようなものがあります。
- 情報システム導入の企画段階における課題
- 経営とITの橋渡し役としての視点
- 組織改革や新規サービス開発における情報戦略
独学での取り組みポイント
- 「設問の要求」をまず正しく読み取る
記述式では、問題の文章に書いてあるキーワード(「○○を考慮して」「具体的に」「業務部門の立場から」など)を読み落とさないことが何より大切です。 - いきなり書き始めない
最初はノートに「問いに答える要素」だけを書き出してから、文章にまとめる練習をしてみましょう。時間は気にせず、じっくり構成を練ることに集中してください。 - 文字数制限を意識した訓練
設問ごとに「○○字以内で述べよ」と指定があります。この制限を守りながら、言いたいことをまとめる練習をすると、表現力がぐんと上がります。
午後II対策:最大の山は「論文」ではなく「準備」
午後II、つまり論文試験は、ITストラテジスト試験最大の壁として多くの方が挫折を感じやすいところです。
でも、実際に多くの合格者が口を揃えて言うのは、「論文は準備が9割」ということ。
「本番でうまく書けるか」よりも、「どれだけ事前にネタを整理していたか」が勝負を分けます。
論文対策の基本ステップ
- 自分の経験を棚卸しする
論文では、自分が関わった実務経験を書く必要があります。「どんな組織で、どんな課題に直面し、どう解決したか」をあらかじめメモにまとめておくと、とても書きやすくなります。 - 論文構成の「型」を覚える
一般的な構成は「背景 → 課題 → 解決策 → 効果と展望」。これを文章に落とし込む練習を何度かしておくと、本番で焦らずに済みます。 - 誰が読んでもわかる表現を意識する
難しい専門用語は避けて、シンプルな日本語で伝える力が求められます。「詳しく書こうとして複雑になってしまう」より、「伝えるべき軸をはっきりさせる」ことを大切にしてください。
区分ごとの特性をつかめば、合格はぐっと近づく
それぞれの区分には、「問われていること」や「使うべき力」が違います。
- 午前I・IIは、知識を「理解して説明できる力」
- 午後Iは、情報を「読み取り、整理して、まとめる力」
- 午後IIは、経験を「構成し、説得力のある言葉で表現する力」
独学だと、すべての対策を自分で考えなければならないので、大変な部分もあります。でも、こうして試験の中身を丁寧に知っていくと、「あ、自分でもできそう」と感じられる瞬間がきっと増えてきます。
午後II対策|ITストラテジスト試験 最大の難関を突破する論文術
—経験が浅くても、ロジックと思考で書けるようになる—
論文試験は「文章力」より「構成力」
ITストラテジスト試験の午後II(論文)は、多くの受験者にとって最も高いハードルです。
「論文なんて書いたことない」
「自分には高度な経験がない」
「時間内に書ききれる気がしない」
こういった不安をお持ちの方は非常に多いですが、論文試験は“文才”を競う試験ではありません。構造的に筋の通った文章が書ければ十分に合格可能です。
この回では、合格者が実際に実践していた「論文突破のための5ステップ」を軸に、初心者でも取り組める具体的な方法をご紹介してまいります。
ステップ1:出題テーマの「型」を知る
午後IIの問題は毎年2問出題され、そのどちらか1問を選択して論述します。
出題傾向は、実はある程度パターン化されています。
出題パターン(代表例)
| 出題タイプ | 内容例 | 書きやすさ |
|---|---|---|
| テーマ型 | DX導入、クラウド活用、新規事業支援など | ◎ 書きやすい |
| 課題解決型 | 業務改善、ガバナンス、セキュリティ対策など | ◯ 書きやすい |
| 難易度高 | 海外展開支援、M&A、IT人材育成など | △ 難しいことが多い |
多くの合格者は「テーマ型」か「課題解決型」の問題を選び、事前に想定シナリオを用意しておくことで本番の安定した得点を狙っています。
ステップ2:自分の業務経験を「題材」として再構成する
「でも、自分には論文に書けるような経験がない…」
そんなふうに感じる方も安心してください。
実際のところ、論文に書く「体験談」は“再構成”された仮想的なものでも構いません。
ただし「自分が主語」で「一貫した物語性がある」ことが大切です。
使える経験の例
- 新システム導入の企画提案をサポートした
- 業務部門とのすり合わせや要件定義に関わった
- 失敗したプロジェクトから学んだことがある
- 業務改善のためのツール選定・導入を行った
どんなに小さな経験でも構いません。「背景・課題・対応・効果」の4要素で構成できるかどうかを軸にエピソードを整理してみましょう。
ステップ3:論文の「型」を覚える(テンプレート)
以下のような「5段構成の型」で書くのが一般的です。
論文構成テンプレート
- 序論(導入)
業務の背景、テーマの重要性、自身の役割など - 課題提示
その中でどんな問題・制約・期待があったか - 対応策・戦略
課題に対して、どんな工夫・提案・施策を実行したか - 成果・効果
対応の結果、どのような効果が得られたか - まとめ・今後の展望
振り返り、再発防止、将来への応用など
これを骨格として、文字数制限を意識しながら、論理的な筋道を立てて記述していくことで、読み手に伝わりやすい論文になります。
ステップ4:時間を気にせず「まず1本書いてみる」
午後IIは2時間で約2,000字を記述する必要があります。ですが、最初から「制限時間内で」などと考える必要はありません。
まずは、時間を気にせず1本書き上げてみること。
ここで大切なのは以下の3点です:
- 論理のつながりが自然になっているか
- 主語(自分)と行動(対応内容)が明確か
- 読み手に伝えたいことが一貫しているか
最初の原稿は誰でも拙いものです。ですが、そこから推敲・リライトを重ねることで確実に洗練されていきます。
ステップ5:模範解答を「読む」より「分解して盗む」
IPAの過去問・模範解答が公式サイトで公開されています。
ただし、「読むだけ」で終わらせてしまうのは非常にもったいないです。
模範解答をこう使う:
- 段落ごとに「何を言っているか」をメモする
- 語尾や表現に注目して自分の表現に取り入れる
- 構成パターンを自分のエピソードに当てはめてみる
これを繰り返すことで、「合格論文に必要な言い回し」や「論理展開の型」が自然に身についてきます。
よくある不安への答え
- Q:字が下手でも大丈夫?
→ 読める字であればOK。評価は内容と構成です。 - Q:一人で書いて、合ってるか不安です
→ 無料添削サービスやSNS上の有志添削を活用してみましょう。 - Q:文字数が足りないです
→ 枠組みを作った上で「なぜそう考えたか」を丁寧に書けば、自然と分量は増えます。
論文は“自分の論理”を伝える訓練
午後IIは、単なる作文試験ではなく「戦略的に構築された意見を、読み手に筋道立てて伝える能力」が問われる試験です。
それはまさに、ITストラテジストに求められる最も重要な資質です。
- 経験が浅くても、構成でカバーできる
- 美文でなくても、筋が通っていれば合格できる
- 書く力は、書いてみることでしか伸びない
この3つを忘れずに、少しずつでも取り組んでみてください。

